「あんたは座っていればいいの!」“経験豊富な部下”から逆パワハラ…被害に遭った“上司”の打開策は?
経験豊富な部下にプレッシャーをかけられる――。上司であっても、立場の強い部下からの圧力によって精神的に追い詰められる“逆パワハラ”の被害に遭うことがある。
実際に公務員の現場で起きたケースをもとに、被害者となった上司が取るべき対応や、部下に上手に「NO」を伝える方法を解説する。
※この記事は公認心理師の宮本剛志氏による著作『「ハラスメント」の解剖図鑑』(誠文堂新光社、2024年)より一部抜粋・再構成しています。
ベテラン職員が集まる職場で起きる新任上司への反発
A課長(40代前半・男性)は、地方公務員です。公務員は定期的に異動するため、Aさんも畑違いの課に異動してきました。
新しい課は、施設を管理したり現場に行ったりするところで、ベテラン職員がたくさん集まっていました。
その中でも課長代理のBさん(50代後半・男性)は、職人気質で、周囲からやや取っ付きにくい人物と思われていました。Bさんから厳しく叱られて、やる気をなくした若手が複数いたそうです。
その課の課題は、誰がどこで何をやっているのかわからない状態にあることでした。そこでAさんは、フォーマットを作り、毎朝定例ミーティングで発表してもらおうと思いました。
ところがBさんは、「うちの業務のことをわかっていないやつがいちいち口を出さなくていいんだよ。あんたは座っていればいいの!」と反対してきました。
Aさんはビックリして怖くなってしまいました。
被害者上司から加害者部下へ一度は指導をしよう!
それ以降も、会議で指示してもBさんは「頓珍漢な指示をするなら黙っていろ」「どうせ自分の出世のために言っているだけだろ」と言ってきました。そのたびに、Aさんは立場がなく立ち往生しています。
これは部下によるパワハラだと思い、Aさんは上司の次長に相談しました。このケースはいわゆる「逆ハラスメント」に当たる可能性があります。
Bさんはベテランで、この課ではAさんよりも経験値が高く影響力もあるので、パワーのある人でもあります。そのため、今回のケースはパワハラともいえます。
Aさんがハラスメントの相談をするのは、一般的なハラスメント被害としては正しいのです。
しかし、部下から上司への逆ハラスメントの場合は、被害者である上司はただ相談するのではなく、一度は部下を指導しましょう。なぜなら、上司には部下の指導責任があるからです。
もちろん、体調不良が著しい場合は別です。その場合は、人事や産業医、カウンセラーの力を借りてください。療養を優先してから対応することを視野に入れましょう。
管理職こそセルフケア(自分で自分の健康を守ること)が大切です。心も身体も健康でなければ良いマネジメントはできません。特に、中間管理職は下(部下)からも上(幹部)からも突き上げられて本当にストレスが溜まると思います。
誰もが加害者になり得ることを忘れずに
Aさんは自分の上司である次長に相談しました。その上で勇気を出して、「Bさん、あなたのやっていることによって、私を含めた周囲が萎縮してしまいます。声を荒らげずに、今後どうするのか話し合いましょう」と伝えてみました。そう伝えると、Bさんはビックリして意外にも大人しくなったそうです。
攻撃的な人は、実は反撃に弱い人が多いのです。弱いから虚勢を張ることがあります。それでも改善しないときは、人事を含めた担当部門にも相談して職場全体で取り組みましょう。
パワハラは、上司から部下へするものだと思っている人がまだまだ多くいます。しかし、パワー(優越的関係)は上司と部下以外でも成立します。
「NO」と言うための上手な伝え方
パワハラに「NO」を言う際に役立つのが、DESC法です。行動療法のアサーティブコミュニケーション(自分も他人も尊重した上手な伝え方)の1つです。
コミュニケーションの中でも、「NO(断る)」は難しく、よく相談されます。NOと言った後に、「申し訳ないな」「生意気なやつだと思われないかな」と悩むケースがあります。悩み続けて、我慢して突然キレる、もしくはメンタルヘルス不調になることも少なくありません。
特にハラスメントの被害を受けているときが危険です。
無理はしないでほしいのですが、できれば我慢せず上手に「NO」を言えるようになるといいですね。そのために、DESC法は活用できると思います。
例えば、 年上部下から、あなたの性的な経験について繰り返し聞かれたとします。コミュニケーションのつもりで聞いている感じが伝わってきます。日頃Aさんは親しみやすく、仕事も協力的な人です。「NO」を伝えるとすれば、何と言いますか?
上の図を参考にして考えてみましょう。「NO(断る)」が言いづらい場面で、D・E・S・Cそれぞれに言葉をあてはめてから、相手に伝えてみることをおすすめします。
- この記事は、書籍発刊時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

「ハラスメント」の解剖図鑑
2022年4月に中小企業でもパワハラ防止対策を実施することが義務付けられました(大企業は2020年から)。
職場でも、ハラスメントはパワハラだけでなく、マタハラ、セクハラ、モラハラ、アルコールハラスメントなど、多岐に渡ることが周知されてきています。
それにも関わらず、労働局などに寄せられる労働相談のトップはいまだに「いじめ、嫌がらせ」で、大企業では法律施行後も年間1万8千件以上のパワハラ相談が寄せられています。
研修などで社員教育を進める企業も多くありますが、担当者でさえ、「何がハラスメントにあたるのか」「どうしたら防げるのか」を理解していない場合が多いのが実情です。
本書は、企業や官公庁、学校にて年間150回程度のセミナーを行い、年間300人以上から個別の相談を受け、さまざまなハラスメントを解決に導いてきた著者が、職場で起きやすい全48種のハラスメントを解説します。
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