「親の顔が見たい」朝日新聞出版“編集責任者”がパワハラメール…被害訴える女性が控訴審後に会見 「今もフラッシュバック」一審判決否定の治療費等求める
朝日新聞出版(朝日新聞100%子会社)の社員から「親の顔が見たいですね」などと非難するメールが送られるなど、パワーハラスメント被害に遭ったとして、フリーランス編集者の女性、依田さん(仮名)が同社と社員に対し約1950万円の損害賠償を求めていた訴訟の控訴審で17日、第1回口頭弁論が開かれた。
一審判決(2025年4月7日)で東京地裁は同社側に対し、約60万円の損害賠償を命令。しかし、依田さん側が訴えていた休業損害や治療費は認められなかったことなどから控訴していた。
17日午後に都内で会見を開いた依田さんは次のようにコメント。改めて会社側に対して謝罪と損害賠償を求めた。
「一審判決後、この事件がニュースになるとSNS等では『いまだにこのようなことをしている会社があるのか』と会社側に批判的な声が集まったのにはホッとしました。
他方で、会社側からは、メール文面について『仕事が遅れる中で、やむを得ず出た表現の問題』があったと認め、その点については“おわび”のようなものを受けましたが、私へのパワハラ被害自体に対しては、謝りもしていません。
報酬についても、最初に会社側から提示された条件と異なる業務を任されたのに、大幅に減らされてしまったことはどうしても納得できないため、少しでも多くの報酬金額を獲得したいです」
協業者をCCに入れたメールで「親の顔が見たい」などと送信
2018年11月、原告の依田さんは朝日新聞出版から医学部関連書籍の編集業務を受託。当初は51ページ・25万円の契約で、2人体制での作業と説明されていた。
しかし、実際は編集者の追加配置がなく、そもそも企画のスタートが例年より遅れていたことなどもあり、作業指示も不十分なまま進行が遅延。
こうしたなか、2019年1月、編集責任者のX氏がデザイン事務所など、協業者をCCに入れたメールで「無礼」「失礼」「非常識」「親の顔が見たい」といった依田さんの人格を攻撃するような文面が送られたという。
さらに、依田さんはこれらのハラスメントが原因で、精神的・身体的症状が現れ、不眠や震えといった苦痛の中で仕事を継続できなくなり、休業せざるを得なくなったと主張している。
一審判決では、依田さん側が訴えていた11点の行為のうち、人格攻撃メールなど7点の行為をパワハラと認定し、約60万円の賠償を命令。
一方、休業損害については「受診までの期間が長い」ことなどを理由に「因果関係が認められない」と判断していた。
「11点すべてを一連の行為と認定すべき」
こうした一審判決の内容について、代理人の木下徹郎弁護士は「一審判決は全体像を見落としている」と批判。
「たとえば、ハラスメントとしてこちらが訴えている11点中、7点が不法行為と認定されましたが、残る4点は『ハラスメントに当たらない』と判断されています。
しかし実際は11点すべてが、一連の流れとして依田さんに対し強い心理的圧迫を与えており、点ではなく線で見るべきです」(木下弁護士)
「愛読していた時代小説も読めなくなった」
また、依田さんは現在も「適応障害と診断され、精神科でカウンセリングを受けて治療している」として、休業損害や治療費を認めるよう訴えた。
「今でも、当該社員の名字を目にするだけで体がガタガタ震え、寒気がします。
しかも、その名字は、日本人の名字ランキングでも50位以内に入るほど一般的で、愛読していた時代小説も、主人公が同じ名字のため読めなくなってしまいました。
また、朝日新聞本社の社屋や深夜の消灯したオフィス風景、駅名などもフラッシュバックの引き金になり、精神的ダメージを受けます」(依田さん)
朝日新聞出版「今後も、引き続き真摯に対応」
この日の第1回期日では弁論終結が宣言され、判決期日は11月10日午後1時10分に指定された。
依田さん側は「控訴審によって救済が得られなければ、最高裁への上告も辞さない」との姿勢を示しており「裁判費用はクラウドファンディングで支援を募り、パワハラの抑止を目指し社会と共に闘う」としている。
また、依田さんによれば、朝日新聞のOB有志が啓発ビラを配るなど、朝日新聞グループ関係者からも「会社で何が起きていたのかを、社員全員が知っておくべき」との声が上がっているという。
なお、裁判所からは和解の勧試(かんし)が告げられており、木下弁護士によると、今後和解に至る可能性もあるという。
一方、弁護士JPニュース編集部の取材に対し、朝日新聞出版は「まだ裁判中であり、今後も、引き続き真摯(しんし)に対応をしてまいります」とコメントした。
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