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「何度注意しても指示を守らない」“問題社員”をクビにしてもいい? 裁判所が「解雇有効」と認める“判断基準”とは

「何度注意しても指示を守らない」“問題社員”をクビにしてもいい? 裁判所が「解雇有効」と認める“判断基準”とは
会社はAさんの業務改善を試みていた(den-sen / PIXTA)

「何度注意しても、指示を守らない」――。

職場でこんな悩みを抱えたことはないだろうか。ミスは誰にでもあるが、それが繰り返され、改善の兆しが見えない場合、企業はどこまで厳しい対応ができるのか。

本件は、ビル管理会社で勤務していた設備員Aさんの解雇について、その有効性が争われた事件である。

裁判所は「能力および適性は著しく欠如しており今後の改善も期待できない」などとして「解雇は有効」と判断した。

以下、事件の詳細について、実際の裁判例をもとに紹介する。(弁護士・林 孝匡)

事件の経緯

会社は、不動産施設の技術管理、清掃業務、警備業務などを行っており、Aさんはホテルの防災センターに配属されて設備管理の業務などに従事していた。

解雇に至るまでの経緯は以下のとおりだ。

■ 2021年11月26日
厳重注意

■ 同年12月9日
厳重注意の内容について順守すべきとする「11月26日厳重注意」と題する書面を交付

■ 2022年10月5日
けん責処分

■ 同年11月7日
解雇。会社がAさんに交付した退職証明書には以下の記載があった(判決文を一部修正)。あくまで会社側の主張であるが、Aさんは上司の指導を聞かなかったり、作業中に寝ていたりしたようだ。

「配属先である●設備管理所において、●年●月に点検のルールを守らずに漏水を発生させたことをはじめとして、その後も繰り返し不誠実な行為を行ったことに対し、担当取締役より11月26日付で厳重注意を行った。以降も、通常の点検業務を履行できないため、●清掃等を行うよう業務指導を行ったが、12月、翌年5月および7月に指導内容を履行することができずに、管理者からの都度指導を受けることとなった。また、4月に行ったエレベーター工事の立会いにおいては、作業中に寝ていたことが確認されており、他にも数十件に及ぶ指導記録が作成されている等、勤務態度に問題があることから、10月5日付でけん責の懲戒処分を行った。その後も10月15日から同月24日にかけて9件の指導記録があり、勤務態度に改善が見られないことから、解雇とした」

裁判所の判断

裁判所は「解雇は有効」と判断した。

■ 解雇に客観的合理的理由があるか
裁判所が認定した事実は以下のとおりだ。

  • 故障対応を命じられながら何もせず、会社にはあたかも対応済みであるかのような報告をした
  • とある確認を横着して実施せず、これに起因して施設に漏水事故を生じさせた
  • 機器に一見して確認できる異常表示が生じていたにもかかわらず、異常なしとの報告
  • 施設の蛍光灯のソケット部を損壊し、しかもその事実を会社に報告しなかった

上記の点につき裁判所は、次のように述べている。

「ミスにとどまらない業務の不実施、報告の不実施または虚偽報告を繰り返しており、いずれも委託者である施設に損害を生じさせる、または被告(※会社)に対する信用を低下させる行為である。こうした事情は、指示に従って設備を正確に点検するという、設備員としての基本的な役割を果たす能力および適性の著しい欠如を推認させる」

さらに、施設で勤務する他社の従業員からは、Aさんの対応や応答に問題があるとの指摘がされ、業務から外すことの要請も受けていた。この点について裁判所は「他の職員との間で的確に意思疎通をする能力の不足を推認させる」と言及。

その他、下記の事実も認定した。

  • 作業日誌を責任者に提出して了解を得るよう指示を受けながら、了解を得ずに退勤
  • 整理整頓作業に際し明確な作業内容の指示を受けながら、合理的理由なく指示と異なる整理
  • 2021年11月に厳重注意を受けた後も、エレベーターで待機しての案内業務に際し待機中に眠り込んで案内業務ができず
  • 使用禁止とされている施設の設備を使用
  • 排水先を図面で確認するよう指示を受けながら図面での確認をせず

これらに関する裁判所の指摘は以下のとおり。

「単なる注意力不足に起因するのかは不明であるが、本件監督所(※Aさんが配属されていた施設)での勤務期間を通じて、会社の指示に従った行動をとることができていない。これらの事情は、重大とまではいえない事情も含むものの、総合的に観察すれば、今後の指導や注意によっても、問題点の改善が困難であることを推認させる」

そして裁判所は「設備員としての能力および適性は著しく欠如しており、今後の改善も期待できない。よって本件解雇には客観的合理的理由がある」と判断した。

■ Aさんの反論
Aさんは「会社が他の異動可能な業務への配属について検討しておらず、解雇回避努力を尽くしたとはいえない」と主張したが、裁判所は「Aさんを他の業務に配置転換することで、Aさんの能動能率や勤務成績の改善が合理的に期待できるとは認められない」と厳しい判断を下している。

■ 解雇が社会通念上相当といえるか
裁判所は下記の事実を認定した。

  • Aさんは、業務の不実施、報告の不実施または虚偽報告を繰り返しており、これに対し会社は、Aさんの主な業務を軽作業とする一方で、日々の業務日誌の作成および責任者への報告を通じてAさんの業務改善を試みていた
  • にもかかわらず、Aさんは、会社の指示に従った行動をとることができておらず、自己の行為について真摯(しんし)に反省していたと認めることはできない

上記に照らし裁判所は「解雇が社会通念上の相当性を欠くものとは認められない」として「解雇は有効」と結論付けた。

最後に

本判決は、業務指示違反が繰り返され、改善が見込めない場合には、最終手段としての解雇が許容され得ることを示している。

一方で、会社側は解雇前に十分な指導や改善の機会を与えており、その記録を残していた。このようなステップを踏み記録を残しているかどうかが、解雇の有効性に大きく影響する。

取材協力弁護士

林 孝匡 弁護士
林 孝匡 弁護士

情報発信が専門の弁護士です。専門分野は労働関係。 YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO

所属: PLeX法律事務所

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