オンラインカジノ規制の検討も「通信の秘密侵害」の壁「児童ポルノ」コンテンツ規制との明確な違いとは
著名人のオンラインカジノ摘発が相次ぐ中、規制の方向性を取りまとめる総務省の検討会が4月下旬にスタートした。その手軽さを問題視し、サイトへのアクセスを遮断する「ブロッキング」が対策の軸になるとみられる。
一方で、同対策では、「通信の秘密」が壁になるとの見方もある。検討会は年内に8回予定されている。現状や課題を有識者らで議論し、論点を整理する。(ITジャーナリスト・井上トシユキ)
社会問題化するオンカジに規制の動き
芸能人からスポーツ選手、はては高校生まで巻き込んで社会問題となっているオンラインカジノ(オンライン賭博)。政府もその対策に乗り出したと報じられるなど、社会問題化している。 報道によれば、対策のメインとなるのは、オンラインカジノを提供するサイトに対する「ブロッキング」だという。
ネット利用の際のブロッキングとは、そのサイトへのアクセスを強制的に禁じることを指す(アクセスブロッキング)。日本でも、これまでに児童ポルノサイト、マンガやアニメ・映像コンテンツの違法アップロードサイトに対して行われてきた。
ブロッキングが導入されるとどうなるのか
アクセスブロッキングが導入されると、どうなるのか。
児童ポルノや違法アップロードの場合でみると、インターネットコンテンツセーフティ協会が、対象となるサイトのリストを作成して管理し、ISP(インターネット接続業者)はそのリストにもとづき、ユーザーからの接続リクエストを拒否して閲覧をできなくする。
また、検索サイトで調べても結果の表示がされなくなるため、たとえオンラインカジノがネット上で活動していたとしても、日本国内からは探す手段がなくなってしまう。
つまりは、閲覧できず、検索もできず、実質的には存在していないのと同じ状態となる。シンプルに日本からは利用できなくなるというわけだ。
海外では支払いもセットデブロッキングし、‟兵糧攻め”に
先行する海外の事例をみると、オンラインカジノ規制にはアクセスブロッキングに加えて「支払いブロッキング」も併用されていることが多い。
支払いブロッキングは、ライセンスを持たない違法オンラインカジノとユーザーとの金銭授受を禁止するもの。政府の金融当局や金融機関の業界団体がリストを管理し、オンラインカジノ事業者とひもづいている銀行や暗号資産の口座との送入金ができないようにしている。
オンラインカジノへのブロッキングの導入は、「アクセス手段」と「支払い手段」それぞれを遮断することでユーザーのオンラインカジノ利用を不能にし、同時に事業者を干上がらせ、違法賭博を根絶する狙いがあるものだといえる。
ブロッキングの前に立ちはだかる「通信の秘密」の壁
ただ、これまでの諸外国のケースをみても、導入するにあたって超えなければならないハードルがある。そのひとつが、「通信の秘密を侵害するのではないか」という懸念だ。
ブロッキングの核心部分である「どこのサイトにアクセスしようとしているか」、つまり通信の中身(本文)ではなく通信の宛先までもが「秘密=保護されるべきプライバシー」にあたるのかどうかについて、日本ではまだ賛否両論がある。
反対意見のなかには、オンラインカジノを事実上、この社会に無いものとしてしまうことが「知る権利」(憲法21条1項)に対する侵害だという声や、通信の宛先をリストにもとづいてチェックすることは「検閲」(同1項)にあたるといった指摘もある。
そうした中で、わが国では唯一、「児童ポルノ」のコンテンツについて2011年以降ブロッキングが行われてきている。その法的根拠とされたのは、刑法37条の「緊急避難」に相当する要件をみたすこと(※)。児童ポルノのネット掲載などが通信の秘密の侵害を上回る重大な権利侵害となり、違法性が阻却され、ブロッキングが可能になるというロジックだ。
自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、または免除することができる。
被害者がいないという‟不都合”
しかし、オンラインカジノについては、盗撮や著作権侵害などの明確な‟被害者”が見当たらないのに加え、児童ポルノほど社会的弊害が甚大とはいえないのではないかとの指摘もある。
そこで、オンラインカジノへのブロッキングを正当化するためには根拠となる新しい法律の制定が必要になる、との識者の意見もある。実際、先行する国のなかにも、ブロッキングを行うための条文や新法を追加した例があるという。
だが、新法制定となると時間がかかってしまい、逃げ道を用意される懸念もあり、「現状に即した対策ができなくなるのでは」と実効性を案ずる声があるのも事実だ。
ブロッキングに抜け穴はないのか
さらに、サイト名(〇〇公式サイト等)やURLで規制をかけても、IPアドレスを直接入力されてしまうとアクセスができてしまう。IPアドレス検索サイトでは検索履歴が保存されるため、時間をかければ誰がオンラインカジノのIPアドレスを入手したかはわかるようになっている。
とはいえ、その場合、即時に警察等へ通報する仕組みがあるわけではない。
単に「知りたくて」「調査のために」検索しただけなのか、違法な賭博を楽しむために検索したのか、意図がわからない以上、十把ひとからげともいかない。
無料でサービスを提供しているIPアドレス検索サイトへ、通報などの新たな負荷をかけることがどこまでできるのか、許されるのか…。このハードルも高く、一筋縄ではいかないだろう。
実は、オンラインカジノへのアクセス規制は、2013年ごろからわが国でも検討がされてきた歴史がある。長らくの検討を経て、いよいよ本格的な議論が行われることになるのだが、今回はどこまで踏み込むことができるか。その成り行きに注目したい。
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
関連記事
お金の新着記事
お金の新着記事一覧へ
「成人式帰り」「エジプト型の足の女性を」パパ活あっせん“交際クラブ”スタッフもドン引き…男性会員の“とんで...
「パパ活アプリは疲れた」年収2000万円超の“ハイスペ男性”が「交際クラブ」で探す“素人の癒し”
「風俗へ戻る」女性が“後を絶たない”事情とは? ソーシャルワーカーが明かす、支援制度の“盲点”
“風俗店向け決済代行会社”が「未払い」で被害総額10億円も?…店舗経営者ら「えぐい事件」「裏切られた」集団...
「悪意のない不正受給」のケースも…“生活保護”受給者が「遺産相続」した場合に発生する“問題点”とは【行政書...