「てめぇ…」元社長“恫喝”で大炎上 「交通事故後」相手に“絶対”言ってはいけない捨てゼリフ

弁護士JP編集部

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「てめぇ…」元社長“恫喝”で大炎上 「交通事故後」相手に“絶対”言ってはいけない捨てゼリフ
船橋屋ホームページより(https://www.funabashiya.co.jp/)

老舗和菓子店「船橋屋」の渡辺雅司社長(当時)が交通事故後に相手を”恫喝”した動画が拡散し、辞任に追い込まれた。

8月24日、東京都千代田区の路上で、渡辺氏は自身が運転する高級外車ベントレーで、被害者の運転する車に衝突。その後、車から降りた渡辺氏は被害者の車に近寄り、開口一番「どこからお前出てきてんだ、この野郎」と‟逆ギレ”。

思わず「え?」と聞き返した、”衝突された”被害者男性に対し、「え?じゃねえだろうが」「てめぇ何曲がってきてんだよ」と”キレ”続け、挙句に車体を蹴り上げたらしい音までドライブレコーダーには残されていた。

拡散された動画にはモザイク処理がされていたものの、車などから渡辺氏が特定され、「船橋屋」に非難が殺到。渡辺氏は社長の職を退くことになった。

渡辺氏の一方的で威圧するような言動は擁護できるものではないが、交通事故後は誰であっても気が動転し、つい声を荒らげてしまうなど、冷静に対処するのは難しいのではないだろうか。

交通事故の対応に注力する鈴木淳志弁護士は、事故後の対応を誤ると”社長”でなくとも「こじれてしまう」と話す。

トラブルを最小限に抑えるため、交通事故後にやってはいけない行動や、言ってはいけない捨て台詞などはあるのだろうか。

事故後の言ってはいけない”暴言”とは

交通事故の後、相手に対して暴言を吐く、車体を蹴るなどの行為によって、脅迫罪や強要罪等の刑事罰に問われる可能性はありますか? また、精神的な苦痛を理由として慰謝料を請求されたり、賠償額が増えたりする可能性もあれば教えてください。

鈴木弁護士:脅迫罪、強要罪、暴行罪、器物損壊罪など別の事件が成立する可能性はありますが、事故に対する損害賠償額が増える事由にはならないと考えられます。ただし、被害者が感情的になり、示談交渉が難航する可能性は高まるかもしれません。実際に相談者の方からも、事故後の相手の対応に納得していないという理由で、甘い交渉をしないでくれと頼まれることはあります。

船橋屋元社長のケースでは、「どこからお前出てきたんだ、この野郎」「てめぇ、なに曲がってきたんだよ」などと恫喝、相手の車を蹴り上げたとされています。これらの振る舞いは、「脅迫罪」などの刑事事件に発展する可能性はあったのでしょうか?

鈴木弁護士:詳しい状況がわからないので正確なことは言えませんが、出回っているドライブレコーダーの音声だけで判断するのであれば、脅迫罪などは成立しないと思います。車体を蹴った際に、変形したり傷がついたりした場合には、器物損壊罪にあたる可能性があります。

脅迫罪の成立には、「害悪の告知」が必要です。たとえば「ケガさせるぞ」とか、「金銭的な不利益を与えるぞ」というように、相手の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加えることを告知するということです。ただ単に怒っている、キレているというだけでは、脅迫には当たらないことが多いです。

人身事故の場合、交通事故として事件化し刑事罰に問われることもあると思いますが、さらに脅迫を行って脅迫罪が認められた場合、どのように裁かれるのでしょうか?

鈴木弁護士:そもそも人身事故として裁判にかかるような事件は、かなり悪質なケースや被害が大きいケースに限られると思いますが、どちらも刑事事件化するのであれば、それぞれが独立した事件として扱われます。そのため、両方とも罪に問われる可能性があります。

交通事故直後に「謝ってはいけない」はホント?

「脅迫」や「器物損壊」など以外に、行ってしまう可能性のある事故後の誤った対応はありますか?

鈴木弁護士:「警察に通報(報告)しない」と「相手を負傷させているのに救護しない」です。警察への報告義務も、救護義務も、道路交通法72条1項に記載された「義務」であり、違反すると処罰されます。これらは、事故の相手が不要だと言った場合でも違反になるので注意が必要です。

「昔は事故後に安易に謝ってはいけなかった(自分の責任を認めることになるから)」と聞いたことがありますが、現在も同様の対応が適切なのでしょうか?

鈴木弁護士:謝らなかったことについて感情的になる方がいる反面、謝罪すると、非を認めたと言って全額賠償を求める方もいて、相手のキャラクターによりけりですね。場合によっては、かなり”こじれる”ときもあります。注意が必要ですが、個人的には”賠償の話には踏み込まず”謝るのが良いと思います。

賠償の話に踏み込んでしまうと、全額賠償を求められる可能性があるからですか?

鈴木弁護士:そうです。もちろん口約束で「直します」などと言ったからといって、賠償額が増えることは普通ありませんし、謝罪した=非を認めたとして全額賠償になることはありません。

ただ、「直します」「弁償します」と口頭で言ってしまったことで、交渉がこじれてしまい、結果的に長引くということはあります。謝罪した上で「賠償に関しては、保険会社のほうから連絡します」としておくのが無難かなと思います。

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