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北海道スキー場「管理区域外からの“救助要請”」8割が外国人の現状…雪上の“衝突事故”発生時も「当事者同士」連絡先の交換必須な理由【弁護士解説】

北海道スキー場「管理区域外からの“救助要請”」8割が外国人の現状…雪上の“衝突事故”発生時も「当事者同士」連絡先の交換必須な理由【弁護士解説】
場外の滑走を禁止しているスキー場も(Birdseye / PIXTA)
日常生活と法律

各地で例年より積雪量が多くなった今シーズン、スキーなどのスノースポーツが盛り上がりを見せている。

近年、日本の「パウダースノー」を求め海外からの観光客も増加。国土交通省の「令和6年版 観光白書」によれば2023年には旅行客のうち54.6万人がスキー・スノーボードを行い、経済効果は簡易的な計算でも643億円に上るという。

一方で、海外からの観光客が、知識のないまま管理区域外などに出て「バックカントリー」に挑み、救助要請を行うケースが増加しているようだ。

スキー場コース外からの救助要請8割が外国人

スノースポーツの普及と安全性向上を目的とした「全国スキー安全対策協議会」の担当者は、前年との正式な比較調査はこれからとしつつ、今シーズン発生している救助要請についてこう語る。

「たとえば北海道では、スキー場のコース外に出てしまった人からの救助要請が増えていますが、このうち8割程度が外国の方からのものです」

今月8日、北海道のスキー場の管理区域外で「バックカントリー」をしていたスロベニア国籍の20代男性がけがをして救助された。

また2月には、岩手県のスキー場でアメリカ人男性が死亡。雪崩に巻き込まれた可能性があると報道されたが、現場はコース外で、スキー場は管理区域外に出ないよう看板・放送で周知、ロープも張って規制していたという。

「故意的にスキー場の管理区域外に出て楽しむ『バックカントリー』の最中に動けなくなり、戻れなくなって救助要請をするケースが多いと思います。知識不足・認識不足・準備不足という要因が大きいですね」(全国スキー安全対策協議会・担当者)

全国スキー安全対策協議会では、バックカントリーをする際の注意点をまとめたリーフレットや「スキー場の管理区域外の救助費用は自己負担になる場合がある」ことを示したポスターを英語などでも作成。各スキー場が自由に使用できるようインターネット上で配布している。

衝突事故の3件に1件が「当て逃げ」

しかし、もちろんスキー場等での事故は外国人だけが起こしているわけではなく、日本人も注意が必要だ。

全国スキー安全対策協議会が全国46スキー場からの報告をもとにまとめた「2023/2024シーズンスキー場傷害報告書」によれば、2024年2月の1か月間に発生した事故による受傷者は3316人に上った。

また、396人は「人との衝突」が原因で受傷。さらに、このうち約3件に1件の割合で衝突相手を確認できない、いわゆる「当て逃げ」が発生していたという。

協議会の担当者は「人と衝突した際は、相手が外国人でも、当事者同士で必ず連絡先を交換するようにしてください」と注意を促す。

自身もスノーボードを趣味とする河合淳志弁護士も「絶対にその場から逃げてはいけません」と語調を強める。河合弁護士によれば、スキー場で衝突事故が発生した場合「交通事故と同じ対応が必要」だという。

「人と衝突した場合、まず相手が怪我を負っていたら救護するのは当然です。警察への報告義務こそありませんが、スキー場の運営者には報告が必要でしょう。また、相手に対し治療費用などを含めた損害賠償金を支払わなければならないケースもあります」

この際、相手の怪我の重大さ、悪質性の高さによっては「刑事事件化することも考えられる」と河合弁護士は続ける。

「誠意をもって対応しても、相手の怪我が重い場合には過失致傷や重過失致傷といった罪に問われるケースもあり得ます。『当て逃げ』のように悪質性が高い場合には、傷害事件として捜査される可能性も十分に考えられます。

車の運転と同様に考え、モラルに従い、スノースポーツを楽しんでほしいと思います」

気温上昇でなだれ、アイスバーンにも注意

春の陽気が近づくこの時期は人身事故だけでなく、なだれなど自然現象にも注意が必要だ。

協議会の担当者は「たとえば斜面が割れている場合や、スノーボールと呼ばれる雪のかたまりが転がっている場合はなだれの前兆なので、しっかりと周りを見ていただきたい」と呼び掛ける。

また気温が上がり、日中に溶けた雪が夜間に凍るというサイクルを繰り返すことで、ゲレンデの雪質も「ざらめ」と呼ばれる水を含む重たい雪に変化していくという。これだけでも足が取られて転倒するリスクが高まるが、朝一番はゲレンデが凍り『アイスバーン』と呼ばれる状態になることもあるそうだ。

「滑って止まれなくなったり、転倒時の衝撃が大きかったりして、怪我を負いやすくなります。春先はこうしたことにも注意をしながら遊んでいただきたいと思います」(協議会担当者)

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