「どうしてうちの子だけ」公的支援行き届かず…コロナ後遺症患者と家族ら法律制定など国に求める
新型コロナウイルス感染症の後遺症に苦しむ患者とその家族らでつくる「全国コロナ後遺症患者と家族の会」は3月10日、東京・霞が関の厚生労働省を訪れ、支援する法律の制定などを求めた要望書を仁木博文厚労副大臣に手渡した。それに先立って都内で会見を開き、コロナ後遺症の実情などを語った。
感染者のおよそ1割が後遺症を訴える
中国・武漢市で、2019年12月に確認された原因不明の肺炎の集団発生に端を発する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック。
日本でも、感染が確認され始めた2020年6月から、インフルエンザと同類の「5類」の感染症に位置付けられた23年5月までの3年間で、およそ3380万人(国内感染者数累計、厚労省集計)もの罹患者を出した。
「全国コロナ後遺症患者と家族の会」(以下、患者と家族の会)の伊藤みか代表(仮名)によると、感染者のおよそ1割が何らかの後遺症を訴えている(訴えた)という。
なお、後遺症を訴えている人にはワクチンを打った人(1回以上)もそうでない人もいるといい、ワクチンと後遺症の因果関係はわかっていない。
身体障害者手帳の申請が却下される
会見には伊藤代表や医師、弁護士のほか、コロナ後遺症の症状に苦しむ子どもを持つ親など8人が出席。社会的に後遺症の症状に対する理解が乏しいことや、支援体制の不備等が患者をさらに苦しませている実情を訴えた。
後遺症の具体的な症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、記憶障害、睡眠障害、筋力低下、さらには筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群など。難病を含む多岐にわたる症状が現場の医師らにも十分に理解されず、後遺症患者に対し、各種社会保障制度を受けるための身体障害者手帳が十分に交付されずにいるという。
会見に出席した身体障害者福祉法第15条(※)指定医でもある澤田石順医師は、「(患者への対応は)制度の谷間にある。本来は社会保障制度でカバーできるはずだが、医師が診断書を書いてくれない。(後遺症診断の)経験がないとして8~9割の医師は断ると思う。書き方が分からない医師も多いのではないか」と述べ、身体障害者手帳交付の基準となる診断書・意見書の記載体制、様式整備を求めた。
※身体障害者福祉法第15条「身体に障害のある者は、都道府県知事の定める医師の診断書を添えて、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地)の都道府県知事に身体障害者手帳の交付を申請することができる」
特別児童扶養手当を申請も「非該当」の通知
コロナ後遺症等を診療できる医療機関がそもそも少ないことや、子どもが後遺症を患って寝たきりになっていても「特別児童扶養手当」や「障害児福祉手当」の対象とみなされない実態もある。公的支援を受けられず家計の圧迫を訴える声も上がった。
中学2年生の息子を一人で育てるAさんは、約2年前、中学受験を控えていた息子がコロナに罹患した。中学には入学したが、体調不良が再開し、高熱を出して寝たきりに。
「地元の中学生が制服を着て登校しているのを見るのがつらくてたまらない。どうしてうちの子だけ部屋で一人ぼっちで寝たきりになっているのか。普通の中学生の生活を送らせてあげたい」と、涙ながらに語った。
預貯金が底をつく中、自治体に「特別児童扶養手当」を申請したが、診断された慢性疲労症候群が「日常生活に著しい制限を加えることを必要とする状態とまではいえない」などの理由から、「非該当」との通知を受けた。
医療従事者として働いていた際に2度コロナに感染し、筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群を発症した伊藤代表は、「全国には医療や福祉の社会保障サービスにたどり着けず苦しんでいる患者さんがたくさんいる。どうか、後遺症を社会全体の問題として関心を持っていただきたい」と訴えた。
「患者支援の法律が制定されることを望みます」
患者と家族の会は医療・衛生、福祉サービス、経済的支援を後押しするための法律の制定を求めている。
立法化に向けて、会見に出席した石田弘太郎弁護士は、「(要望書提出は)まだまだ第一歩にもなっていないと思う。(コロナ後遺症のことを)多くの議員の皆様にも知っていただきたい」と語った。
前出の、中学2年生の息子を持つAさんも、声を絞り出すように語った。
「がんにがん対策基本法ができたように、認知症に認知症基本法ができたように、コロナ後遺症等につきましても、子どもも含めて、患者支援のための新しい法律が制定されることを望みます」
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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