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「やりとりがストレス」同僚からクレーム“ワガママ社員”が解雇…裁判所に「組織不適合」の烙印を押された“横暴すぎる態度”とは

「やりとりがストレス」同僚からクレーム“ワガママ社員”が解雇…裁判所に「組織不適合」の烙印を押された“横暴すぎる態度”とは
非協力的な言動を繰り返した(naka / PIXTA)

「私に喧嘩を売るという事、理解していただかないと」
「私を敵にしてくれたので、お礼するまでです」

これらは、仕事で女性社員(以下「Aさん」)とモメたXさんが、社内のチャットで仲の良い同僚に送った文章である。しかもその後、XさんはAさんを刑事告訴までした。

この横暴に会社は我慢ならず、ほかにもXさんのワガママな態度などにも業を煮やし、解雇した。Xさんは不服を訴えるも…

裁判所
「解雇はOK」(東京地裁 R6.6.13)

以下、事件の詳細だ。

事件の経緯

会社は、コンピューターソフトウエアの設計やコンピューターシステムの運用管理、保守などを行っており、Xさんは正社員でカスタマーサクセス部に配属されていた。

裁判所が「解雇OK」とした背景には数多くのエピソードがあるが、次の3つに絞って紹介する。

■ 非協力的な態度
Aさんは引き継ぎのための日程調整について、Xさんとチャットで下記のようなやりとりをした。

Xさん
「もっと早くやってほしかったです。これ以上の、引き継ぎ事項ってあるんですか?」

Aさん
「引き継ぎ事項は正直、特にはないです。お客様の人柄とか契約背景とかお伝えするくらいですかね」

Xさん
「ないなら、特段と行う必要はないかと思います」

Aさん
「わかりました。ただ●さんは今後お客様の窓口となるのでお人柄的なところは明日個別に引き継ぎしますね」

Xさん
「やるのですか? 業務の流れ、ご存知ないようですが、ここ3か月は、技術的なやりとりは私がメインになりますよ。ご自身の問題を棚上げして問題視されるのは困りますね」

また、Aさんが以前Xさんに伝えていた事項について、Xさんが「足りない」と言ってきたため、Aさんは「今回の場合すでに確認し連絡済なので、解決済ですよね?」とメッセージを送ったが、Xさんは太字で「ご認識を正すために申し上げます」と返信してきた。

これらのやりとりなどでAさんは相当ストレスがたまっていたようで、上司に対して「毎回いちいち何でも突っかかってこられて結構辛いです。。」「お客様に迷惑かからないよう私もなるべく下手にって気をつけてるんですけど毎回毎回で悲しくなってくるので」「なんていうかやりとりがストレス」と相談していた。

■ 顧客を軽視
ある顧客から質問があったので、社員(Aさんとは別の人物)はXさんに対して対応を求めた。チャットのやりとりは、おおむね以下のとおりだ。

社員
「顧客から『質疑応答をさせてほしい』とのリクエストがありました。Xさんの空いている時間で30分程度オンラインミーティングをお願いできませんでしょうか」

しかし、Xさんは拒否した。

Xさん
「所用があるので、午後なら可能です。どのようなお話か不明ですが...」
「私の評価が上がるわけでもないので、困るといえば困ります」
「評価を変えるなどあれば、動きますよ」

■ Aさんを告訴
出産間近であったAさんは「Xさんが引き継ぎをしてくれない...」旨、上司に相談していた。それを聞きつけたXさんが立腹。仲の良い同僚とのチャットで「私を敵にしてくれたので、お礼するまでです」「私に喧嘩を売るという事、理解していただかないと」とメッセージを送信していた。

そして、なんと。「ウソをつかれた。これは業務妨害罪にあたる」旨の告訴状を作成して警察署に提出したのである。その後、Aさんは出産したが、告訴状を提出されたことで相当なストレスがかかったようだ。

■ 解雇
会社はこれらの事実に加え、Xさんの態度不良などを理由として、Xさんを解雇した。

(解雇理由)
・Xさんが上司、同僚および取引先との関係において多数の重大な問題を生じさせる行動をとり、当社の業務に重大な支障をおよぼした
・上司から複数回注意や指導を受けたにもかかわらず、それに従うことを拒絶し、業務の質や職場における人間関係を改善しようとしなかった
・出産間近のAさんを虚偽の事実で告訴し、結果としてAさんおよびその子息の安全および健康に危害をおよぼすおそれを生じさせた

これに対して、Xさんは「解雇は無効である」と提訴した。

裁判所の判断

裁判所は「解雇OK」とした。上述した3つのエピソードに対する見解は次のようになっている。

■ 非協力的な態度
「Xさんは、Aさんから引き継ぎの提案を受けると、これに消極的な態度を示し、さらには侮辱的な発言も行った。これによってAさんのストレスが増大したが、Xさんのメッセージ内容や経緯からすれば、Aさんがストレスを感じるのは無理がないものといえる。Xさんの行為は、他の従業員と連携、協力して仕事を進めるとの意識を欠くものである」

■ 顧客を軽視
「Xさんは、この顧客からの問い合せについては自分が対応すべきであることを認識していたにもかかわらず、自らの評価には結びつかないなどという利己的な理由を並べ立て、対応を拒否した。これは本来の職責を合理的な理由なく果たさないものであり、職務怠慢といわざるを得ない。また、これが顧客の知るところとなれば当然に会社の信頼を失いかねない行為であった」

■ Aさんを告訴
「Aさんに対して社会的制裁を求めるであるとか、はたまたAさんを刑事告訴するというのは、正当な権利行使を装って、Xさん個人のAさんに対する一方的な敵意に基づく報復の手段として刑事告訴の制度を用いたものといわざるを得ない。このことは、Xさんが同僚に対してチャット上で「私に喧嘩を売るという事、理解していただかないと」などと攻撃的な意図をあらわにしていることからも明らかである。Xさんが告訴状を提出したことによって、出産直後の時期のAさんに強い心理的な負荷を与えており、Xさんの行為は、会社秩序を大きく穀損した」

最後に

ここでは取り上げきれないが、ほかにも組織不適合な行為があり、裁判所は「ほかの社員と協力して仕事を進めていく意識に欠け、ほかの社員の意見に耳を傾けず、独善的な考え方に基づいて行動していた」と判示している。

日本では社員を解雇することが非常に難しいが、ここまで会社に迷惑をかけている社員の解雇であればOKになることがある。参考になれば幸いだ。

取材協力弁護士

林 孝匡 弁護士
林 孝匡 弁護士

情報発信が専門の弁護士です。専門分野は労働関係。 YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO

所属: PLeX法律事務所

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