女子刑務所“イジメ”の実態「そりゃ、いろいろありますよね」…20代の初犯受刑者が経験したこと
一般社会から断絶された“塀の中”で何が起きているのか――。
刑務所問題をライフワークとする記者が、全国各地の“塀の中”に入り、そこで見た受刑者の暮らしや、彼らと向き合う刑務官の心情をレポートする。
刑期の長さや犯罪傾向などによって収容刑務所が分類される男性受刑者に対して、女性受刑者は基本的に短期から無期懲役まで、初犯も再犯も一緒に服役することになる。女性用の刑事施設が限られていることが理由だが、それゆえトラブルも発生しやすく、刑務官の負担も男子刑務所に比べて重たいとされる。
第4回は、そんな女子刑務所の「イジメ」について、受刑者の話を紹介する。
※ この記事は、テレビ朝日報道局デスク・清田浩司氏の著作『塀の中の事情 刑務所で何が起きているか』(平凡社新書、2020年)より一部抜粋・構成しています。
ホストクラブへ行くために窃盗
そもそも女子刑務所とはどんな場所なのだろうか。ドラマや映画の舞台になることもあるが、受刑者の“生の声”を聞くと、よりはっきりと見えてくるものがある。
窃盗で懲役2年6か月の20代受刑者が、初めて刑務所に来た時の心境を語った言葉が印象的だった。
「刑務所に初めて来たときはもう絶望的でした。当たり前なんですけど、外の景色も見られないし、外に出られないし、1人になると何やってるんだろうって情けなくなりました」
おそらく多くの受刑者が最初に、このような暗澹(あんたん)たる思いを抱くのであろう。彼女はホストクラブに行きたいがために、飲食店でレジから金を盗むことを繰り返していた。逮捕・起訴され、1回目の判決では執行猶予3年がついたにもかかわらず、その数か月後に、また盗みをしてしまったという。
――執行猶予中に事件を起こしたら、刑務所に行くことになるということを考えなかったのですか?
「考えていない……。そうですね、あまり考えてなかったですね」
――ちょっと厳しい言い方をすると、1回目の有罪判決のときにしっかり反省し切れていなかったってことじゃないんですか?
「帰れたから多分、甘く見ていたんです。すごくナメていました。刑務所に行くはずなのに行かないだろうなーって。なぜかはちょっとわからないんですけど……」
――もう1回盗みをやっても行かないだろうと思っちゃったんですか?
「うん。別に……行かないかなーみたいな」
イジメはないのか
そして、読者が気になるであろう「女子刑務所でイジメはないのか?」という疑問、私も気になって何人かの受刑者に聞いたことがある。ある20代の初犯の受刑者は自らの経験を話してくれた。
――刑務所でつらいことはありますか?
「女ばっかりなんで、そりゃ、いろいろありますよね。姑みたいな意地悪なおばあさんとかもいますし、派閥みたいなのもあります。やっぱり、みんな出所したいですから、早くここを出る人のことを妬んだりします」
――何か具体的にされたことはあるんですか?
「今はもうないですけど、入った頃はされましたよ。シカト(無視)されたりみたいなことです。みんなボスみたいな人が怖いから、その人に従うみたいな」
そして70代半ばの受刑者も言う。
「初めてここに来たときは、よくイジメられました。揚げ足をとられたり、ちょっと動いただけで『うるさい!』と年下の受刑者から怒られたりしました。悲しくなって布団の中でよく泣いてました……」
当然だが、われわれがカメラを持って塀の中を歩いても、このような場面に出くわすことはない。おそらく刑務官も見ていないところで、こうしたことが行われているのだろう。
逆に実際に入所してみて刑務所のイメージが違うと思ったと話す受刑者もいた。
「私自身がここに来るまで刑務所は自分に縁がないと思っていたので、自分とは違うよくない人がいるのではという偏見がありました。でも、自分が実際に刑務所に入ってみると変わった人もいないという感じです。苦しんでいる人もいるし、みんな一生懸命生きていると思う。自分が世間知らず過ぎたのもあって、自分が抱いていた偏見が違うと今は思っています」
彼女は殺人、死体損壊、死体遺棄の罪で懲役16年、刑期を半分ほど終えているからか、このようなことを言えるのかもしれない。同僚の女性を殺めた彼女は今、なぜそのような凶行に及んでしまったと考えているのだろうか。
「自分自身がすごく自己中心的な部分があったんだなっていう……本当に人のことを愛せていなかったというか、自分ばかり痛かったり嬉しかったり苦しかったりっていうこと中心でした。周りの人がそういうふうに感じているということを自分のこととして受け止められなかったから、結局は自分の苦しさだけにとらわれてしまったところがあると思います」
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