最大2万円分「マイナポイント」申請終了まで1か月…個人情報“漏えい”リスクはない?

弁護士JP編集部

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最大2万円分「マイナポイント」申請終了まで1か月…個人情報“漏えい”リスクはない?
カード未取得者に届いた「マイナンバーカード交付申請」の案内

「マイナポイント第2弾」終了まで残り約1か月となった。マイナンバーカードをまだ持っていない人であれば、9月末までにカード申請をすれば、最大2万円分のポイントを受け取ることができる(※1)。

(※1)QRコード決済や電子マネーなどのキャッシュレス決済サービスに付与

しかし、個人情報漏えいや、政府・自治体のセキュリティ体制への不安などから、カード取得を迷っている人も多いのではないだろうか。

マイナンバーカードを作る意味とは

マイナンバーカードは、国民一人ひとりに付与されたマイナンバー(個人番号)が記載されている、ICチップ付きのカードだ。氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、本人顔写真などが記載されており、本人確認のための身分証明書として使うことができる。

マイナンバーカード総合サイト」では、カード作成のメリットとして以下6点を紹介している。

  • マイナンバーを証明する書類として利用できる
  • 行政手続きのオンライン申請に利用できる
  • マイナンバーの提示と本人確認が同時に必要な場面でも、マイナンバーカード1枚で済む
  • 民間のオンライン取引に利用できる
  • 市区町村や国等が提供する様々なサービスごとに必要だった複数のカードがマイナンバーカードと一体化できる
  • コンビニなどで住民票、印鑑登録証明書などの公的な証明書を取得できる

また政府は、今年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」に、社会保障分野の政策方針として「マイナンバーカードの保険証利用」を進めることを明記。現在の保険証は「原則廃止」を目指していくという。

保険証は原則廃止へ…代わりにマイナンバーカードを使う“危うさ”

しかし、この動きには警鐘を鳴らす人も少なくない。神奈川県保険医協会職員であり「マイナンバー違憲訴訟」の原告でもある知念哲さんは、以下を指摘する。

「保険証として使うとなれば、カード所持が事実上強制されることになります。紛失、盗難のリスクが高まることはもちろん、カードに記載されたマイナンバーが人目にさらされる機会も増える。通知カードを自宅に保管しておくのと、日常的に使うカードとして持ち歩くのとでは、まったく意味が違います」(知念さん)

そもそもマイナンバーカードは、マイナンバー法によって「任意取得」とされている。しかし、すべての国民が公的医療保険に加入している「国民皆保険」の日本において、保険証を廃止しマイナンバーカードの保険証利用を原則とするのは、実質的な「強制取得」であり、マイナンバー法に違反することにならないのだろうか。

「マイナンバー違憲訴訟」神奈川弁護団の小賀坂徹弁護士は、以下のように語る。

「“任意”を保持するため、『骨太方針2022』では“原則廃止”としつつ、補足として『加入者から申請があれば保険証は交付される』とされています。

マイナンバーカードの普及を進めたい政府としては、法改正によって国民にカードを強制取得させられるのであれば、とっくにそうしているはず。しかし、それは憲法上の問題に関わってきます。

正攻法ではなく、保険証の原則廃止などによって事実上カードを持たざるを得ないような状況に国民を追い込もうとしているところが、悪質なのではないでしょうか」(小賀坂弁護士)

自治体が持つ「内部不正に気づけない脆弱さ」

今後、マイナンバーカードを取得し持ち歩かなければならなくなったとして、やはり不安に感じるのは、個人情報漏えいやセキュリティの問題だろう。

「マイナンバーカード総合サイト」によると、マイナンバーカードは以下のようなセキュリティ対策で守られているという。

  • 紛失時には24時間365日体制で一時停止が可能
  • 顔写真付のため悪用は困難
  • ICチップには税や年金などプライバシー性の高い情報が記録されない
  • 不正に情報を読み取ろうとすると記録情報が消去される
  • 電子証明書やアプリごとに暗証番号を設定し、一定回数間違えるとロックされる

しかし、小賀坂弁護士はマイナンバーカードの情報を管理する自治体の体質について「内部の不正に気づけない脆弱さがある」と指摘する。実際、今年5月には岩手県釜石市で、元市職員がマイナンバーの記載されたデータなどを業務に関係なく送受信していたことが発覚。7月には、マイナンバーの情報は含まれていなかったものの、兵庫県尼崎市で全市民約46万人の個人情報が入ったUSBの紛失事件が発生し、世間に大きな衝撃を与えた。

また、政府がマイナポイントでカード取得の促進を図っていることについて、日本弁護士連合会は意見書で、国民のカード管理に対する意識が低下する可能性を指摘している。

「ポイント取得だけを目的としたカード取得者については,その後のカードの適正管理に関して関心が低い者も存すると思われることから,個人番号カードを紛失したり盗まれたりしても市区町村へ届出(番号法第17条第5項)をしない可能性が高く,個人番号及び個人識別情報の漏えい,不正利用の危険性も高まる」(日本弁護士連合会「個人番号カード(マイナンバーカード)普及策の抜本的な見直しを求める意見書」より)

もし「マイナポイント第2弾」を機会にマイナンバーカードの取得を検討しているのであれば、慎重な管理が必要であることを十分に理解した上で、申請を行うべきであろう。

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