N国党の「名誉毀損」の訴えが“棄却”… 原告が事実関係を「争わず」2回で“スピード結審”
「NHKから国民を守る党」(立花孝志代表、以下「N国党」)がジャーナリストの「選挙ウォッチャーちだい」こと石渡智大氏(以下「ちだい氏」)を名誉毀損で訴えていた訴訟で、東京地裁(阿部雅彦裁判長)は27日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
原告が主張していたのは、今年7月に投開票のあった東京都知事選挙において、N国党の選挙掲示板の使用に関連して、被告がSNSで同党を「反社会的カルト集団」などと論評したことなどが「名誉毀損にあたる」というものだった。
ちだい氏側は、N国党を「反社会的カルト集団」と論評した根拠となる18の事実を主張した。これに対し、N国党側は大半について事実関係を争わなかったため「裁判上の自白」(民事訴訟法179条)が成立し、異例の口頭弁論2回での結審となった。裁判所は18の事実のうち17について「各行為等があったことが認められる」と認定した(1つについては別の訴訟で「真実相当性」が認められている)。そして、ちだい氏の表現について「公共の利害に関する事実」「目的の公益性」「真実性」が認められ、「意見あるいは論評としての域を逸脱したものではなく、違法性を欠く」とした。
なお、N国党が控訴したとしても、判決の基礎となる事実関係について上述した「裁判上の自白」が成立している以上、地裁への事実認定が高裁で覆る可能性はほぼ考えられない。
裁判所が「N国党の反社会性」を認定
判決後の記者会見で、ちだい氏は、本判決の「社会的意義」について語った。
ちだい氏:「裁判所は、N国党を『反社会的カルト集団』と呼んでもなんら問題がないとの判断を示したということを意味する。
裁判官が事実関係に詳細に踏み込んで、N国党と代表の立花氏が行ってきた行為の『反社会性』を認定したことは大きい」
被告代理人の石森雄一郎弁護士は、訴訟でどのような攻撃防御が交わされたかを説明した。
石森弁護士:「我々は、ほとんど否定しようのない客観的事実を主張しており、これらのほとんどについて、N国党側は事実関係を争わなかった。
その中には、立花氏が有罪判決を受けている脅迫、威力業務妨害、不正競争防止法違反等の違法行為も含まれている」
判決文で指摘された「反社会性」の内容とは
実際の判決文をみると、裁判所は以下のようにN国党および代表者の立花氏を厳しく断罪している。いずれも、原告が争わなかった事実を前提としたものである。
「原告代表者は(中略)本件政党において不法行為に該当するサービスを一般市民に向けて提供し、以後も法律も守らずに活動を行っていくとの発言をしていたものである。このように、原告代表者(立花氏)は、法律を遵守する意思がない旨、繰り返し表明していた事実が認められる」
「原告代表者は(中略)被害者のある犯罪行為や不法行為を繰り返してきたのみならず、本件副党首とともに支持者に対して自らに批判的な言論活動を行う被告又は第三者への迷惑行為を促し、テロや民族虐殺をも辞さないかのような発言すら行っていた事実が認められる」
石森弁護士は本件判決が、N国党の「反社会性」の内容を具体的に述べていることの「意義」を指摘した。
石森弁護士:「N国党の危険性は、自分たちを支持してくれる人を、いつの間にか不法行為をする当事者になるように巻き込んでいくことにある。場合によっては刑法犯に問われることになってしまう。
話が上手いからといって『面白い』と追従すると、犯罪行為に巻き込まれてしまうなどのリスクを負うということだ。
NHKの委託会社の社員だった人が、N国党に協力して、不正競争防止法違反で有罪判決を受けたケースもある。
このような事実が、判決文の中で認定され、それを基に『犯罪行為や違法行為を平然かつ盲目的に次々と行う危険な集団又は団体である』という意見・論評を行う行為が『意見あるいは論評としての域を逸脱したものではない』とはっきり判断されたことは、意義深いことだ」
「同様の訴えを起こされる人」にも役立ててもらいたい
ちだい氏は本件訴訟の被告であり、訴訟においては「受け身」の立場だった。勝訴したとはいえ、原告と異なり、相手方当事者からの損害賠償金等を得ることはできない。しかも、今回のような短期で結審する場合は、原告側の経済的な負担も少ない。
もし、他の一般人等に対し、同様の訴訟提起が行われた場合、「嫌がらせ」として機能する危険性が考えられるのではないか。
その点について、ちだい氏は次のように述べた。
ちだい氏:「幸いにも、弁護士費用の着手金20万円をクラウドファンディングで募ったところ、それを大きく上回る300万円以上の金額が集まった。
このような事実が積み重なれば、多少は抑止になるのではないかと考えている。
また、今回の判決文のみならず、証拠として提出したものや準備書面等は、すべて無料で公開するつもりだ。
皆さんの財産として、もし同様の訴えを起こされた場合に、引用して使ってもらえるようにしたい」
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