フリーランス、年収600万円でも「物件借りにくい」 不動産業界の“古い体質”原因か…実態調査で浮き彫りになった“課題”
家賃保証業界の市場分析を行う「家賃保証ラボ」が、フリーランスを対象にした賃貸住宅の入居審査の実態を調査し、レポートを公表した。同ラボは、家賃保証会社向けのSaaS型支援システムを提供するリース株式会社が設立したもの。
賃貸市場では、企業勤めの給与所得者を前提とした審査システムが常態化しているため、フリーランスにとって適正な信用審査がなされていない課題がある。実際に調査結果からはフリーランスの約7割が住居を「借りにくい」と感じていることが浮き彫りになった。
「給与所得を前提にした審査基準」はフリーランスにとって不利
不動産の賃貸契約を行うためには、家賃保証会社の審査を通過する必要がある。家賃保証会社が家賃滞納に関するリスクを精査し、実際に滞納があった際に保証として代わりに物件オーナーに家賃を支払う仕組みとなっている。
オンラインでレポートの説明会を行ったリース株式会社は、フリーランスや外国籍の人が家賃保証会社の審査を通過できず住宅を借りられないケースがいまだに発生していると報告。これは同業界の古い体質に原因があると指摘した。
リース株式会社によれば、不動産業界は、審査書類をファクスで送ることも珍しくないほど、“アナログ”な世界だといい、審査方法も勤続年数や給与所得、被雇用者であるかなど、旧態依然とした審査が行われているそうだ。しかも、人力で多くの審査を行うため、業務が圧迫されており、一つひとつの審査には時間をかけられない状態だという。
年収600万、800万でも「借りにくい」
今回「家賃保証ラボ」では、フリーランスとして働く人たちが賃貸契約に際してどのような課題を抱えているのかを調査。今年8月、フリーランスの仲介サービスを手掛ける「ランサーズ」の協力のもとアンケートを実施し、500人(男性 312人/女性 188人)の回答を集約した。
その結果、回答者の約7割が「(賃貸住宅の)借りにくさ」を実感していることが明らかになった。
借りにくさの理由として一番多かった回答は、「不安定な職業と見なされ、審査が通りにくい」で58.8%。次いで、「年収を理由に、審査が通りにくい」(24.3%)、「連帯保証人が見つからない・見つけづらい」(5.9%)だった。
年齢別では、すべての年齢で「借りにくさ」を感じている人が多くなったが、中でも30~40代の現役世代では7割以上が借りにくさを感じていると回答している。
年収別に見ると、年収400~600万円台の給与所得者の平均給与と同程度に稼いでいる人でも、77.4%が「借りにくさ」を感じていると回答。さらに、年収600万円以上であっても58.6%が、年収800万円以上でも50%の人が「借りにくさ」を感じているという結果になった。
この調査からは、正社員なら問題なく物件を借りられる水準の収入があっても、フリーランスであるという理由で物件を借りにくい実態があることがわかる。
実際にリース株式会社の代表である中道康徳氏も、フリーランスになった際、会社勤めの頃と同程度の年収を得ていたにもかかわらず、審査に落ちて物件を借りられなかったことがあったといい、個人事業主として事務所利用が可能な物件を探す際にも物件が見つかりにくい課題に直面したという。
現在、同社の取締役COO尹英俊氏と「家賃保証ラボ」代表を務める小林司氏は、「現在の賃貸審査は本質的に個人の信用力ではなく、企業の信用力を測っているのではないか」と指摘。今後、いかに個人の信用力を測る物差しを作れるかが課題だとして、同社では具体的な提案・開発をしていくとともに社会への実装を目指すと語った。
賃貸契約支援の面でも「制度改革」必要
フリーランスとして働く人の数は現在257万人(総務省「令和4年就業構造基本調査」)と、すでに派遣社員の数を超えている。有業者に占める本業がフリーランスの人の割合は3.1%に上る。
フリーランス人口が増える中、今年11月からは不利な取引からフリーランスを守る「フリーランス新法」が施行され、一定の条件を満たすフリーランスには労災保険が適用されるなど、待遇面での改善が進む。
こうしたフリーランス保護の流れを受け、尹氏は「今後は物件の賃貸契約支援の面でも制度の改革などが必要になるだろう」と述べた。
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