ジャンポケ斉藤氏「書類送検」で“加熱報道” 弁護士「十分えん罪のリスクはある」と指摘するワケ
お笑いトリオ「ジャングルポケット」のメンバーだった斉藤慎二氏が今年7月、東京都新宿区の路上に止まっていたテレビ番組の撮影に使うロケバスの中で、20代女性に性的暴行を加えた容疑で、今月7日に書類送検された。
斉藤氏は警察の捜査に対し容疑を認めて「軽率な行為で相手や家族に迷惑をかけたことを反省している」と話しているというが、斉藤氏の妻である瀬戸サオリさんは報道内容が一部事実と異なるとして、個人のインスタグラムを更新して反論している。
事件発覚から現在まで、斉藤氏について性依存症の可能性、多額の借金問題などの報道もなされている。また、斉藤氏からロケバス内で被害を受けた女性も弁護士を通じてコメントを発表。報道直後から引き続き「被害者探し」も行われ、セカンドレイプにつながりかねない状況となっている。
一連の加熱ともいえる報道は点としての情報だが、線となる事件の詳細については現時点では明らかになっていない。
刑事事件に多く対応する杉山大介弁護士は、こうした過熱報道について、「袴田事件でいい加減懲りないんですか?」と冷静な目で見るべきだと話す。
弁護士「十分えん罪のリスクはある話」
「世間的には、“全く別の犯人がいた”という場合しかえん罪をイメージできていないようですが、同意があればただのスキャンダル、同意がなければ犯罪となる本件にも、十分えん罪のリスクはある話だと指摘しておきます。
証拠も見られない段階で、騒ぐものではありません」(杉山弁護士)
日本では、逮捕や書類送検の段階で、まるで“犯罪者”かのように報道されることがかねてより問題視されている。事実、逮捕・書類送検された刑法犯の起訴率は36.2%にとどまる(令和5年「犯罪白書」より)。
直近でも、サッカー日本代表の伊東純也選手が「準強制性交致傷」の容疑で書類送検された後に不起訴処分となったことは記憶に新しい。
この「書類送検」について、杉山弁護士は「手続き上、当たり前の“段取り”として行っているだけ」として、次のように説明する。
「当事者のうち一方は不同意だったと言い、他方は同意があったと言って食い違っている。少なくとも警察段階の供述では、犯罪の成立を争う形になっています。
目撃者などがいない2人きりの場面で、それ以上捜査をすることがなければ、警察は検察庁に事件を送って判断を求めることになる。ただそれだけで、ほかに意味はありません」
警察で捜査を受けていたときと、書類送検され検察が判断を出すまでの間で、斉藤氏の“立場”になんら変化はない。
「今後、検察官が書類を読み、時に供述などを再確認して、起訴不起訴の判断をします」(杉山弁護士)
本件では捜査を担当した警視庁が「厳重処分」という処分意見をつけて書類送検したことも報道されたが、杉山弁護士はこの処分意見についても、あくまで警察の意見で法的な意味合いはなく、「法律家(検察官)は独自に事件を判断」するという。
吉本興業との「契約解除」には理由がある
現時点ではどのような性的な行為があったかも不明瞭と前置きした上で、杉山弁護士は事件について以下のように考察した。
「報道ではいわゆる口腔性交が行われたという話も出てきています。もしそれが事実であるなら、不同意の場合は、女性に相当強力な態様の圧力がかかっていないとそういうアクションには至らないんじゃないか…など、弁護士として見ると『ストーリーに不整合な点が出やすい場面』はあるように思います。
また、(斉藤氏の妻が主張するように)それまでに関係性があった場合には、事情は『同意があった』方向に傾くことが考えられます」
斉藤氏が所属していた吉本興業は、事件が報道された7日、「本日、弊社とのマネジメント契約を解除いたしましたので、ご報告いたします」と発表。この契約解除もさまざまな臆測を呼んだが、杉山弁護士はあくまで冷静に状況を整理する。
「ロケ中の不要な行為によって出演者間に不和が生じ、番組がつぶれてテレビ局に迷惑をかけたという点は、争いのない事実からも認定できます。よって、芸能人として不利益な処分(マネジメント契約の解除)を受ける理由はあると思います」
検察官の判断により起訴された人も、有罪判決が下るまではあくまで「被告人」。憲法により“推定無罪の原則”が適用されていることを忘れてはならない。
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