SHEIN、Temu、アリエク…商品から“発がん性物質”検出の韓国発表を受け厚労省「情報収集中」 もし健康被害が発生したら?

弁護士JP編集部

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SHEIN、Temu、アリエク…商品から“発がん性物質”検出の韓国発表を受け厚労省「情報収集中」 もし健康被害が発生したら?
海外通販サイトでは「頼んだ商品が届かない」「粗悪品が届いた」といったトラブルも後を絶たない(HIT1912/PIXTA)

中国発のインターネット通販サイト「SHEIN(シーイン)」「Temu(テム)」「AliExpress(アリエクスプレス)」などで販売されていた商品の一部から発がん性物質などが検出されたことが韓国ソウル市の調査で分かり、日本国内でも物議をかもしている。

問題はらみながらも…利用者数急増

「SHEIN」「Temu」「AliExpress」とは、いずれも中国企業が運営する“格安”が売りの通販サイト。10円以下の商品が出品されるなど、破格の安さで衣料品や化粧品、日用品などを購入できるとあって、全世界的に利用者数が急増している。安さの秘密は、中間業者を省くことで工場が消費者へ商品をダイレクトに届けられるFtoC(Factory to Customer)のビジネスモデルだ。

しかし人気の一方で、「頼んだ商品が届かない」「粗悪品が届いた」「カスタマーセンターに電話がつながらない」「トコジラミが付着していた」など、SNSを中心に真偽不明なものも含めトラブルが多く報告されている。

さらに懸念されるのは、各社が世界中で多くの訴訟を抱える知的財産権の侵害。日本では今年1月、SHEINにバッグのデザインを模倣されたとして、ユニクロが同社を東京地方裁判所に提訴した。

このように、さまざまな問題をはらみながらも、多くのユーザーに利用されている各社の通販サイト。しかし、冒頭の通り、“消費者の身体に危害をもたらす可能性のある商品”が販売されていたことがわかり、今までにない大きな波紋を呼んでいる。

韓国の安全基準値超える有害物質が検出

韓国ソウル市では、今年の4月からSHEINなどで販売されている製品の成分検査を実施。5月に調査した全93製品のうち40製品から、韓国の安全基準値を超える有害物質が検出されたことを発表した。

ソウル市はその後も成分検査を定期的に行っており、7月には女性用下着から膀胱(ぼうこう)がん発生リスクを高める発がん性物質、化粧品からは皮膚感染症を引き起こす黄色ブドウ球菌の検出を発表。8月にも子ども用自転車や浮き輪、インラインスケートから有害物質が検出されたと明らかにした。

有害物質が検出された商品は、いずれも日本国内からも購入することができるものだ。この事態を国はどの程度把握し、どのような対応を取っているのだろうか。

厚労省「情報収集中」必要あれば検査実施へ

厚生労働省化学物質安全対策室の担当者は、所管する範囲内での回答とした上で、「中国の通販サイトの商品から韓国当局の安全性基準を超えた化学物質が検出されたことは、報道もあったため承知している」として、以下のように話す。

「具体的にどの商品から何の物質が検出されたかなど、報道だけではわからない部分もあり、情報を収集しているところです。情報が集まり次第、日本の基準に照らして精査し、検査をするのか、する場合はどの商品を調べるのかなど今後の対応を検討していくことになります」(担当者)

現時点では、特定のサイトやそこで販売されている個別の商品について、国として購入をやめるよう呼びかけてはいないという。購入した商品がもとで健康被害などのトラブルが発生したり、その不安がある場合には、「基本的にはまず事業者に問い合わせていただくことになります」と説明する。

「事業者に聞いても不安が解消されない、事業者と連絡がとれないという場合には、全国の消費生活センター、国民生活センターに相談いただくというのもひとつの手かと思います。

なお、中国発の通販サイトをめぐっては、購入商品の未着などのトラブル相談が消費者庁に寄せられていることも認識しています。化学物質の検出に限らず、海外の通販サイトを通じた買い物にはリスクが伴うものです。商品は信頼できる業者から購入していただくのが望ましいと思います」(同上)

健康被害発生しても…訴訟「ハードル高い」

ちなみに法的には、製品が原因で健康被害が生じた場合、「製品を利用したこと」と「生じた健康被害」との間に因果関係が認められれば、製品を製造・販売した事業者に対し、損害賠償(病院に通院した場合、治療費、通院交通費、慰謝料、休業損害など)を請求することができる(民法709条)。

しかし、因果関係を証明するのは簡単なことではなく、損害賠償請求には高いハードルがあるのが現実だ。

さらに、消費者問題にくわしい北島菜月弁護士によれば、SHEINなど海外企業相手だと「訴訟のハードルがより高くなる」という。

「海外の事業者の場合、国内の事業者の場合と比べ、事業者と連絡が取れなくなるリスクも高くなりますし、言葉の問題が表出することもあります。

また、仮に訴訟などになった場合、必ずしも国内の裁判所が管轄になるとは限りませんし、日本の法律が適用されるとも限りません。いずれの国の法律を適用するのか(準拠法)、どこで裁判を行うのか(管轄裁判所)から決めることになり、解決には時間や費用がかかることが想定されます。そして、適用する準拠法によってはトラブルの解決自体が困難になる可能性も否定できません」(北島弁護士)

その上で、北島弁護士も前出の厚労省担当者と同じく「安心できる事業者か否かを見極めて安全に利用することが重要」と、消費者側の“自衛”を促した。

安さと引き換えに自身や家族の健康を奪われては元も子もない。

「健康被害に遭わないためには、製品の品質管理や検査が十分なされているかなど、製品の詳細情報や成分表示を確認し、安全なものか判断したうえで、購入することが大切です」(北島弁護士)

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