北海道・恵庭市遠藤牧場訴訟、市側は一貫して隠ぺいを否定 「めちゃめちゃな主張」原告弁護士は“反論”に批判も
北海道恵庭市にある遠藤牧場で働いていた障害者3人が、「障害年金を横領された」などとして市と牧場の経営者側に対し、約9394万円の損害賠償を求めた訴訟の第5回口頭弁論が9月4日、札幌地裁で開かれた。この日は、恵庭市側が具体的な反論を行った。
虐待を調査しなかったのは「忖度(そんたく)」
勤務していた牧場で、原告らは不衛生な水を飲み、十分な食事が取れない環境下に置かれ、一部原告らには月1500円から2000円程度の金銭しか提供されていなかった。また、3人の口座からは5120万円余りの金が引き出されていたという。
牧場を経営していた遠藤昭雄氏は元恵庭市議会議員で、市議会議長を務めた経験もある。遠藤氏は2020年に亡くなり、原告らは牧場を離れて転居。
その際に通帳を見た原告らは、自らに支払われているはずの障害者年金が引き出されていることを知り、がく然としたはずだ。
訴状によれば、恵庭市は以前から障害者支援団体 とやり取りしており、実際に当該牧場を訪問 。「プレハブ小屋の床の上に布団が敷いてある」などの劣悪な環境だったと認識を示していた。
その後、支援団体が虐待案件として扱うのならば恵庭市が単独で扱うとしていたが、状況が改善することはなかった。
弁護団はこれを「被告恵庭市は虐待の疑いを強く認識しながら、牧場経営者の故遠藤昭雄氏が元市議会議員(議長)であったという経緯を忖度して、あえて虐待調査を行わず、これを放置した」と訴えているのだ。
市側は一貫して虐待の隠ぺいを否定
これまでの口頭弁論で、恵庭市側は一貫して虐待の隠ぺいを認めていない。市側は今回提出した準備書面でも否定を貫いた。
例えば、市が委託している支援団体に対し、2016年12月に原告らの保護のため「グループホームを探してほしいと言っていた」と市側が要請していたと原告らは主張していたが、市側は「グループホームの空き状況の提供を求めたにすぎない」として原告らの主張はあたらないと反論した。
また、原告らの「『プレハブ小屋で冬期間に寝泊まりしているため、足が凍傷になっていると聞いている』と社会福祉法人の副会長が発言した」との主張には、「うわさ話だ。話は獣医師からのまた聞きであり、強引な結論を導いたにすぎない」とした。
そして、故遠藤氏は『職親』ではなく、使用者には該当しないとの従来の主張を繰り返した。
ここでいう職親とは、「知的障害者の援護などに意欲を持ち、それを希望する者」をいう。職親として援護するためには、登録申請書を提出して自治体から登録を受けなければならないとされている。
弁護士「反論がめちゃめちゃだ」
弁論の終了後、弁護団らが報告集会を札幌市内で開き、弁護団長を務める船山暁子弁護士や中島哲弁護士らが出席した。
中島弁護士は、「今回、市が本格的な反論を出してきた」としつつ、「でも反論がわれわれの立場からするとめちゃめちゃな主張だった。あまりにも苦し紛れの主張をしている」と話した。
そのうえで、市側は「被告恵庭市障がい福祉課が社会福祉法人の総会について決裁しているのか不明である」と社会福祉法人との関連を準備書面で否定しているが、弁護士らが情報公開請求で開示した決裁文書によると、「令和2年度定期総会の開催について(伺い)」という決裁文書を作成。福祉バス使用申請書にも当該社会福祉法人の名前と、関連する住所が書かれていた。中島弁護士は「どこからどう見ても決裁している」と批判した。
この裁判では並行して、原告側が裁判所側に対し、公費での手話通訳者の配置を求めていた。しかし、「個別具体的に勘案した結果、今回は実施しない」との回答を受けたという。
中島弁護士は「判決の時に配置をまた要請したい。また実際に支援者らに協力いただき、声を上げていくことを繰り返していく。このような積み重ねが大切だと考えており、意義があることだ」と胸を張った。
第6回目の口頭弁論は、11月18日に開かれる予定。
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