大阪&東京で「スカウト行為」逮捕者相次ぐ。勧誘が「路上からSNS」へ移行した裏事情

中原 慶一

中原 慶一

大阪&東京で「スカウト行為」逮捕者相次ぐ。勧誘が「路上からSNS」へ移行した裏事情
路上スカウトは「逮捕されるリスクが高い」と語る関係者も(※写真はイメージです Ryuji/PIXTA)

東京と大阪でスカウトの逮捕が続いた。

まずは大阪。スカウトした女性を性風俗店に紹介したとして、大阪市内を拠点とするスカウト集団のトップの男(34)ら19~34歳の男7人が、職業安定法違反(有害業務の紹介)容疑で大阪府警に逮捕された。

男らは「ベルグループ」を名乗り、梅田の商業施設周辺の路上で女性に声をかけたり、SNS上で標的にした女性を勧誘していた。昨年3月、路上で女性に対し、しつこく性風俗店の仕事を勧誘したとして、男2人が府迷惑防止条例違反で現行犯逮捕。男のスマートフォンなどの履歴から同グループの存在を突きとめたと報道された。

一方、東京でも、同じく、スカウトした女性を性風俗店に紹介したとして、不動産仲介会社役員の男(37)が職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで警視庁に逮捕された。報道によれば、こちらは路上でスカウトはせず、25個のTwitterアカウントを駆使して、Twitterで自身の写真や動画を投稿していた女性をターゲットにし、昨年だけで、50人の女性を性風俗店に送り込んでいた。

男は、「Twitterなら警察に捕まらないと思った」と供述しているという。男は15年前から新宿・歌舞伎町などの路上でスカウト行為をしていたが、警察に逮捕されるリスクが高いと考え、約5年前からTwitterを使うようになったという。

「有害業務」へのスカウト行為は禁止

刑事事件を扱うことも多い、ベリーベスト法律事務所柏オフィスの吉成純輝弁護士はこう話す。

「路上であれ、SNSを使用したものであれ、職業安定法では、有害な業務へのスカウト行為は禁止されています。『有害な業務』の該当性は事案に応じて個別的に判断されますが、たとえば、アダルトビデオの撮影や性風俗営業などが有害業務にあたるとされています」

職業安定法の第63条では以下のように規定している。

次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。

2号 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者。

「他に、スカウト行為の摘発にあたるものとしては、各都道府県の迷惑防止条例があります。迷惑防止条例では『公共の場所』において、客引き行為をすることを禁止しています。職業安定法がスカウト行為について場所を限定していないことに対し、迷惑防止条例では繁華街などの場所に着目した規定であることから、職業安定法の方がより広く処罰することができる規定であるといえます。また相手が無視しているにもかかわらず、相手方の着衣を引っ張って止めた場合には、暴行罪が成立する可能性があります」(吉成純輝弁護士)

いずれにせよ、「有害業務」を紹介することは違法なのだが、スカウトマンたちのやり方も以前とはだいぶ変化しているようだ。

スカウトマンが受け取る“バック”の相場は?

「以前は路上で声をかけると、いったん店に入り、話をすることが目的だったが、今は、その場であまり深追いはせず、〝とりあえずLINEを交換しよう〟とLINE交換することが大事です。その後、時間をかけてLINEのやりとりを続け、関係性を作りながら、〝なんでも相談してよ〟〝稼げる仕事があるよ〟〝結局、お前がどうしたいかだ〟などと、アメとムチを使ってその気にさせていく」(ベテランのスカウトマン)

ちなみに、スカウトマンの報酬は、性風俗店が1番”ウマみ”があるという。

「スカウトマンは、キャバクラなど水商売の場合は、店から10万円単位の紹介料を受け取ることが多いようです。ソープやデリヘルなどの性風俗の場合、〝スカウトバック〟と言われるマージンを受け取ります。これは女性がその店で働いた売り上げの10〜20%を女性がその店が働き続ける限りもらえるもの。

スカウントマンたちにとって、この収入が大きいのですが、スカウトバックに気付いた女性がスカウトにクレームを付けようとすると、そのスカウトマンと連絡がつかなくなることも多いようです」(夕刊紙記者)

行き過ぎた「ナンパ行為」は法律違反の可能性も

スカウトマンが路上で勧誘を行う場合、単なるナンパを装うケースも少なくない。

若くてイケメンのスカウトマンの場合、ホストのキャッチと見分けがつかないケースもあり、若いスカウトマンたちは、そのあたりも熟知しているようだ。

「確かにナンパ行為は直ちに犯罪が成立するわけではありません。しかし、断られたのに、その場から立ち去ることなく、話しかけ続ける場合など、しつこくナンパ行為に及んだ場合には、軽犯罪法や迷惑防止条例に違反する可能性があります」(吉成純輝弁護士)

前出の夕刊紙記者が続ける。

「ちなみに今は、芸能事務所のスカウトもSNSが主流です。TwitterやTikTokでダンス動画を上げている娘などをチェックする専門部隊を持っている芸能事務所もあります」

SNSが定着し、スカウト行為も様変わりしているようだ。

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