フジテレビ「パワハラプロデューサー」が物議…ハラスメント“ゼロ”の職場を実現するには?

中原 慶一

中原 慶一

2022年06月21日 09:57

フジテレビ「パワハラプロデューサー」が物議…ハラスメント“ゼロ”の職場を実現するには? かつて〝3K〟とも揶揄されていたテレビ番組制作現場の労働環境は改善されているが…(写真:フジテレビ本社社屋 Ryuji/PIXTA)

フジテレビの昼の情報番組「ポップUP!」のチーフプロデューサーが、番組スタッフにパワハラし、そのスタッフは二度も自殺を図ったと「文春オンライン」が報じ話題となった。

記事によれば、パワハラ疑惑がもたれているのはチーフプロデューサーのX氏。X氏は、同番組を担当する制作会社社員でアシスタントプロデューサーのA氏に対し、お菓子を買いに行かせたり、「全然働かないから、仕事振ってもいいよ」と女性スタッフに言ってばかにしたり、帰宅しようとするA氏に「仕事もロクにしてないのに帰るの?」などの暴言を浴びせていたという。

A氏は、5月12日の夜、番組表の入稿に関してX氏に怒声で叱責されたことを機に、70錠以上の薬を飲み、自殺を図った。5月22日にも同様に自殺を図り、救急搬送された。2日後に退院したが、現在は休職中という。

「X氏は旧華族の出身で、その横柄な態度は以前から有名だった。スタッフからは陰で〝天皇〟と呼ばれていました。記事が配信された当日にはフジテレビは、X氏を実務から外しています」(テレビ局関係者)

夕刊紙記者が付け加える。

「フジテレビは今、視聴率的にも苦戦しており、今年頭には50歳以上のベテラン社員を大量リストラしたことも話題となりました。社内の士気が下がりきっている中で、視聴率も低迷している『ポップUP!』の制作現場を舞台に事件は起きたのです」

一般的なパワーハラスメント6つの「類型」とは

パワハラを巡っては、2020年6月1日(中小企業は2020年4月1日)からは、いわゆる「パワハラ防止法」(正式名称「労働施策の総合的な推進ならびに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正により、職場における防止対策が義務化されている。

厚生労働省は、パワハラの定義を「⑴職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、⑵業務の適正な範囲を超えて、⑶精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と定義している(数字は筆者付記)。

3つの要素が完全にそろって初めてパワハラとなる。では具体的にはどんな区分があるのか。労働問題の取り扱いも多いベリーベスト法律事務所錦糸町オフィスの石毛孝一弁護士に聞いた。

「一般的なパワーハラスメントの類型は大きく6つに分類されます」

暴力型
殴る蹴るなどに加え、物を投げつけるなどの暴行によるパワハラ

精神的圧力型
強い言葉や態度での叱責に加え、関係性や空気感によって圧迫を加える

村八分型
いじめの典型である集団全員で無視したり、必要な連絡を行わないなど

過剰要求型
業務上の指示や指導を理由として過剰な仕事を押し付ける

過小要求型
窓際社員や追い出し部屋に見られるように、仕事を取り上げたり、単純作業に従事させるなど

プライバシー侵害型
私生活の事情に立ち入るタイプ

「分野ごとに、程度が深刻であれば訴訟に発展することがありうるので、十分に注意が必要です」(石毛弁護士)

自分が「上司」になった際の心がけ

記事の内容が事実であれば、X氏のA氏に対する言動は〈②精神的圧力型〉や〈④過剰要求型〉に当てはまる可能性がある。

「今時、制作会社のスタッフをいじめるなど、最悪なことで、他局ならありえないと思う。このP個人の問題によるところも大きいと思うが、それを野放しにしていた周囲にも責任がある」(前出=テレビ局関係者)

石毛孝一弁護士もこう続ける。

「自分が上司になり、部下を持った場合、まずはどのような行為がハラスメントにあたるのかの事例を知り、そのような行為をしないことがもちろん大切です。しかし、それと同時に、周囲の行為に違和感を持った場合は、しかるべき機関やさらに上の上司への報告をするべきだと思います」

一方で、自分が「パワハラを受けている」と感じたときはどうすべきか。何よりも大切なことは「泣き寝入りをいしないこと」だという。

「平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によれば、パワハラを受けた後で自分自身はどのような行動をしたかを質問したところ、「何もしなかった」が40.9%ともっとも多くなっている。とにかく勇気を持って声を上げることが大切だ。

「ハラスメント」に悩んだらどこへ相談すべきか

厚生労働省の「あかるい職場応援団」のホームページには、ハラスメントに悩んだ場合の対処法について、

  • どんなことをされたのか記録する
  • 周囲に相談する
  • 会社の窓口や人事担当者に相談する
  • 外部の相談窓口に相談する

の4つを挙げている。

「外部の相談窓口」として、「総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)」、「個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県労働委員会・都道府県庁」、「法テラス(日本司法支援センター)」、「みんなの人権110番 全国共通人権相談ダイヤル」、「かいけつサポート」、「ハラスメント悩み相談室」などの相談機関の窓口のリンクが貼られているから参考になる。もちろん、会社に労働組合がある場合は、そこに相談するのも手だ。

「『パワハラ防止法』により、企業にパワハラ対策の相談窓口設置が義務化されたことを受け、専門の相談窓口が設置されるようになったため、窓口に相談するのは極めて有効です。また、程度がひどい場合には弁護士に相談することも有効です。とにかく一人で悩まずに、周囲や専門家に相談してください」(前出=石毛孝一弁護士)

加害者も被害者もいない、パワハラとは無縁の安心して働ける職場を実現したいものだ。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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