施主に追加工事代金を請求したが拒否された。回収方法は?

施主に追加工事代金を請求したが拒否された。回収方法は?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

新築住宅の建築にあたっては、当初の契約内容から変更があったり、オプションの追加があったりするなどして、追加工事を行うことがよくあります。

施主との間で合意に基づいて追加工事を行ったのであれば、当然に追加工事代金を請求する権利がありますが、なかには「そんな工事は依頼していない」と言われて支払いに応じてもらえないこともあります。

本コラムでは、施主に追加工事代金を請求するための準備と拒否されないようにする対策について解説します。

1. 施主が追加工事代金を支払わないケースがある

追加変更工事が発生するたびに契約書を交わしておくことが望ましいですが、実際には追加変更工事においては、契約書を作成しないまま工事を進めることが少なくありません。

そのため、工事が完成したあとに

  • 当初の契約書に含まれる工事だと思っていた
  • 手直し程度なのでサービス工事だと思っていた
  • 依頼をした覚えのない追加工事がされている

などの理由から、施主が追加工事代金の支払いに応じないというトラブルに発展することがあります。

2. 追加工事代金請求をするための流れ

本工事には含まれない追加工事を行った場合には、以下の流れで追加工事代金の請求をするようにしましょう。

(1)施主との話し合い

施主から追加工事の支払いを拒絶された場合には、まずは、施主との間で話し合いの場を設けて解決を図るようにしましょう。その際には、業者側は以下の書類などを準備した上で、話し合いに臨むようにしましょう。

  • 追加工事をするに至った経緯の記載がある議事録
  • 施主に提示した見積書
  • 追加変更工事を行う際の契約書

お互いに誤解があって支払いに応じてもらえないこともありますので、施主と業者の間でどの部分に食い違いがあるのかを明らかにしながら、お互いに納得できる解決策を検討するとよいでしょう。

(2)催告書や請求書の送付

施主が話し合いに応じない場合には、業者側の主張を記載した催告書や請求書を送るようにしましょう。催告書には、追加工事をするに至った経緯を時系列で分かりやすく記載し、施主に納得してもらえるような記載にしましょう。

そして、請求した事実を残すためにも、催告書は、弁護士に依頼し内容証明郵便によって送付することが望ましいといえます。催告書には、支払期限や回答期限を区切って、期限内に施主から何らかのアクションを求めるようにしましょう。

(3)支払督促

内容証明郵便による催告をしても期限内に回答がない場合には、支払督促を申し立てます。支払督促とは、簡易裁判所から施主に対して督促をしてもらう法的手続きのひとつです。

相手から異議申し立てがなければ、「仮執行宣言付支払督促」が取得でき、強制執行の申し立てができるようになります。

(4)訴訟の提起

通常訴訟で、追加工事代金を請求することも可能です。裁判を起こす場合には、訴状と、施主が工事代金を支払うべきであるという証拠を裁判所に提出します。

建築紛争は非常に時間と労力を要する手続きになりますので、訴訟手続きでは最終的に解決するまでに長い時間がかかります。

追加工事代金が60万円以下の場合には、「少額訴訟」を利用することもできます。少額訴訟は、通常の訴訟とは違い原則1回の期日で判決が言い渡されるため、解決までの時間と費用を抑えられる点がメリットです。

(5)強制執行

裁判手続きを経ても相手が支払いに応じない場合には、強制執行を申し立てることもできます。

強制執行を申し立てる場合には、事前に相手方の差し押さえ可能な財産を把握する必要があります。強制執行の申し立てでは、専門的な手続きを行うことになりますので、債権回収の実績が豊富な弁護士にサポートを求めることをおすすめします。

3. 追加工事代金の請求トラブルを防ぐための対策

追加工事代金の請求でトラブルになる事案では、追加工事を行う際に必要な手続きを十分に行っていないことが原因であることが多いです。そこで、同じような事態を防ぐためには、以下のような対策を講じることをおすすめします。

(1)追加変更工事ごとに契約書を作成する

本工事の際には請負代金額も大きいため正式な契約書を作成しますが、追加工事の際には追加工事代金もそこまで大きくなく変更が頻繁にあるため、その都度契約書を作成していないことが多いといえます。

しかし、追加変更工事契約書が存在しないと、工事内容や工事代金について後日発注者との間で争いになることもありますし、裁判になった場合に、追加工事を証明することが難しくなります。そのため、できる限り追加変更工事ごとに契約書を作成するようにしましょう。

また、追加変更工事は、当初の請負契約に含まれているなどの理由で争われることもあります。そのため、不明確な請負契約書では後日争いになるおそれもありますので、弁護士に依頼して契約書のひな形を見直してもらうとよいでしょう。

(2)見積書や議事録を作成する

追加変更工事ごとに契約書を作成することが難しいという場合には、後日、争いにならないように議事録にその内容を残しておくとともに、施主に対しては見積書を交付するようにしましょう。

その際には、大ざっぱな見積もりではなく、どのような工事にどのくらいの費用がかかるのか、できる限り正確な見積書を作成し、施主にきちんと説明した上で合意を得るようにしましょう。

そうしておくことによって、「追加工事を依頼していない」「金額に合意をしていない」といったトラブルを回避することができます。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年04月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

不動産・建築・住まいに強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す

関連コラム

不動産・建築・住まいに強い弁護士