入居者がクレーマーに! トラブルに対処するとき気を付けるべきこととは

入居者がクレーマーに! トラブルに対処するとき気を付けるべきこととは

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

不動産の賃貸借契約において、賃貸物件の入居者は賃料を支払う義務がありますが、賃貸人は建物を使用させる義務を負います。建物に修理が必要になった場合には、原則として賃貸人の負担において修理しなければなりませんし、利用上問題が生じればそれを解決する必要があります。

もっとも、中には悪質なクレーマー入居者もいるので、クレームの内容を確認しながら、真に解決が必要な事案なのか、それとも嫌がらせなのかを見極める必要があります。

大家や不動産管理会社としては、入居者からクレームが頻繁になされると、契約を解除して退去してもらいたいと考えるかもしれませんが、そう簡単ではありません。そこで、今回は、入居者クレーマーへの対応策について解説したいと思います。

1. クレーマー対応の法的ポイント

クレームというのは、苦情の意味なので、その内容が正当ならば管理会社として対応するのは当然のことといえます。事実関係を確認して対応しなければならないものについては対応し、非がある場合には謝罪することで相手の怒りが収まることもあります。

クレームが多いのは、賃貸アパートなどで隣近所の騒音がうるさいというものです。常に音がうるさいという場合には、立ち会うなどして確認することができますが、たまに音がうるさいという場合には、事実確認ができないので、全世帯に対して音について配慮するようお願いするなどします。

問題となるのは、苦情の内容が理不尽なものや、極めて軽微なことを毎日のように連絡してくるなど回数が異常な場合です。特に回数が異常なものの場合、どれ位の頻度で連絡してくるかが問題になるので、記録を付けておくことが重要になります。日時とクレームの内容を記録しておくことで、その異常性を立証することができるようになります。

なお、記録だけだと「言っていない」と主張される可能性もあるため、電話を録音しておくことも有効です。裁判では、証拠が全てなので証拠がなければ勝てる裁判も勝てなくなります。

証拠を集めておけば、あまりにもひどい場合には、内容証明郵便を送り、警告を発するという方法をとることができます。弁護士名義で内容証明郵便を送れば、より効果的です。場合によっては、弁護士から電話をしてもらうことでクレームがなくなることもあります。

2. 退去してもらうことはできるのか

大家としては、クレームばかり言うクレーマー入居者には出て行ってほしいと思うでしょうが、賃借人の居住権は判例法理によって強く保護されているので、「気にいらないから出て行ってくれ」とは言えません。

退去してもらうことができるのは、「信頼関係が破綻している」と認められる特段の事情が認められる場合です。どのような場合に「信頼関係が破綻している」と言えるかですが、一般的には、家賃の滞納が3か月続いた場合やペット禁止なのにペットを飼っている場合などがあげられるでしょう。

クレームは債務不履行というわけではないので、クレームを何度も言ってくることを理由として信頼関係が破綻したというのは難しいと言えます。しかし、他の入居者とトラブルを起こしたり、嫌がらせをしたりするようになった場合や、管理会社や大家に対して脅すなど、度を超すような行動をする場合には、契約解除も認められる可能性があります。

また、同じ建物の入居者に直接的な迷惑行為をしないにしても、ささいなことで何度も管理会社にクレームを言ってくるような入居者がいることは、他の賃借人にとっても迷惑なので、クレームの回数や内容によっては、契約解除が認められる可能性はあります。

裁判を起こさないにしても、契約を解除するためには、相手に事実関係を提示する必要があるので、証拠を集めておくことが必要です。クレーマーもクレームの内容や日時が記録されていると知れば、おとなしくなる場合もあります。

まずは、しっかり証拠集めを行い、それをクレーマーに示しながら、これ以上クレームを繰り返した場合、契約解除もあり得ることを伝えることが重要です。

3. まとめ

今回は、入居者から何度もクレームを言われている場合に、どのように対処したらよいかについて解説しました。クレーマーに対応することは非常に疲れますし、何度もクレームがあると契約を解除したくなるものです。

しかし、賃借人には居住権という強い権利があるので、簡単には契約を解除することができません。最も効果的なのは、自分が理不尽な要求をしているということに気づかせることでしょう。

そのためには、客観的な証拠を準備して、これだけ頻繁にクレームをしているということを本人に自覚させることが重要です。また、弁護士に依頼するなどして、第三者から連絡してもらうことで、クレーム行為がやむことも多いです。担当者がひとりで抱え込まず、まわりや弁護士に相談しながら解決の道を探っていきましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2021年09月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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