賃借人に立ち退きを求める場合の交渉はどうする? 手順などについて解説

賃借人に立ち退きを求める場合の交渉はどうする? 手順などについて解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

アパートやマンションなど、保有している物件が老朽化してきた場合、建て替えなどを考えるでしょう。その際、賃貸物件に賃借人がいる場合には立ち退いてもらう必要があります。ただ賃貸人都合の立ち退きはトラブルになりやすく、解決に時間がかかることも少なくありません。事前に立ち退きを求められる条件や交渉の流れを確認しておきましょう。

1. 賃貸人の都合による立ち退きの条件

賃貸借契約を結んでいる賃借人を賃貸人の都合で一方的に追い出すことはできません。賃貸人の都合での立ち退きが認められるのは、「正当の事由」がある場合(借地借家法28条)に限られます。

しかし、「正当の事由」が認められるためには、実はかなりハードルが高いのが現状です。

「正当の事由」は、契約当事者が賃貸物件を使用する必要性等の諸般の事情を比較考量することによって決せられます。たとえば、立退料の支払いをした場合は、「正当の事由」が認められる方向に働く一つの要素になりえます。

立退料は、法律によって規定された金額が存在しません。

もっとも、立退料の相場は、「賃料の6か月分程度」とされています。単なる居住用の賃貸物件に比べ、オフィス用又は店舗用の賃貸物件の方が、立退料の金額が高い可能性があります。

なお、賃借人が賃貸人に無断で第三者に賃貸物件を賃貸した等、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊された場合には、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができ(民法612条2項)、賃借人に対し、立退料を支払う必要がなくなります。

定期建物賃貸借契約(借地借家法38条)は、期間の満了によって終了する(契約期間が1年未満である場合は、終了通知を賃借人にする必要はありません。他方、契約期間が1年以上のときは、期間満了1年前から6か月前までの間に契約終了の通知が必要になります。)ため、賃貸人は、賃借人に対し、立退料を支払う必要がありません。

2. 立ち退き交渉の進め方

立ち退き交渉はトラブルになることも多いため、きちんと準備し、計画的に進めることが大事です。具体的な流れは次の通りです。

(1)契約更新時期や賃借人の転居先候補を調べておく

賃借人に説明する前に、交渉の準備が必要です。

スムーズな立ち退きのために、各賃借人の契約更新時期を確認するほか、近隣で転居先として提示できそうな物件を探しておきましょう。

期間の定めのある賃貸借契約の場合、期間満了の1年〜6か月前までに(借地借家法26条1項)、期間の定めのない賃貸借契約の場合、6か月前までに通知する必要があります(借地借家法27条1項)。

(2)立ち退きについて賃借人に説明する

賃借人に立ち退きについて口頭や書面で説明をします。

「老朽化のため建替えをしたい」「賃貸人自身が利用したい」など、立ち退きが必要となった理由を説明し、理解してもらいましょう。立ち退きの時期や転居先の候補、立退料などについても提示します。

老朽化などの事情があっても、退去を求めるのはあくまで賃貸人側の事情です。高圧的な態度に出たりすると賃借人が不信感を持ち、トラブルに発展する可能性があります。

また、立ち退きの時期が迫っていたり、引っ越し先候補が遠方であったりすると、賃借人も立ち退きをためらうでしょう。要求をすべて受け入れる必要はありませんが、賃借人側の事情を考慮し、立退料の増額など、立ち退きに納得してもらえるような条件を提示して何度も交渉するなど、誠心誠意対応することが大事です。

(3)合意内容を文書にする

立ち退きに合意してもらえたら、立ち退きの時期や立退料など、合意内容を必ず文書にして残しておいてください。

一度立ち退きに合意した賃借人が、立退料をつり上げようと退去を拒否してくることもあります。その際に合意内容を示した文書が証拠になります。

(4)退去してもらえない場合は裁判を起こす

何度交渉しても立ち退きに応じてもらえない場合や、賃借人から到底認められないような条件を提示された場合には、裁判を起こしましょう。

立ち退きを求めることに「正当の事由」がなかったとしても、一定の立退料を支払うことで立ち退きを認める判決が出るケースは少なくありません。判決が確定すれば、賃貸物件を明け渡してもらうために強制執行ができます。

3. まとめ

立ち退きを求めるような事案では、賃借人が立ち退きに応じなかったり、嫌がらせをしてくるなど、トラブルに発展するケースも少なくありませんので、早めに弁護士へ相談されることをおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年09月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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