騒音トラブルに不動産管理会社はどう対応すべき? 対応方法を解説
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騒音トラブルに不動産管理会社はどう対応すべき? 対応方法を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

「マンションの隣の部屋から大きな音楽が聞こえる。」「上の階の足音が響いて眠れない。」「深夜に洗濯機を回す住民がいてうるさい。」など、騒音に関する住人からの苦情は、不動産管理会社へ日々多く寄せられる問い合わせかと思います。

実際に騒音の苦情が発生した時、不動産管理会社としては、どう対応すべきなのでしょうか。

1. 騒音の基準や法的な限度は?

人が生活する以上、生活音を全く出さずに暮らすことはできません。日常的な生活音をゼロにすることは、現実的にはおよそ不可能なことです。すべての騒音を違法であるとして止めることはできません。では、いったいどの程度から違法な騒音と判断されるのでしょうか。

(1)騒音の違法の判断基準

隣人や住人が騒音を出したからといって、すぐにそれを止めさせる権利はありません。アパートやマンションは、生活区分は分かれているとはいえ、一つの建物内に暮らしているわけですから、お互いの生活音は、ある程度許容しながら暮らすべきものです。この許容すべき範囲のことを「社会生活上受任すべき限度」といいます。この受忍限度を超えると、騒音が違法な程度に達している判断されます。その結果、あなたが相手方に対して騒音を出さないように求める権利が生まれるわけです。

(2)受忍限度を超えているかの判断

騒音が受忍限度を超えた違法な程度かどうかの判断は、簡単ではありません。たとえば、次のような点に注目しながら、総合的に判断する必要があります。

  • 騒音の大きさ
  • 騒音の種類(声、音楽、テレビ、鳴き声、楽器演奏、足音など)
  • 騒音の時間帯(日中、夜、深夜、明け方など)
  • 頻度(一日に何回、週に何回、月に何回など)
  • 長さ(すぐに止まる、30分程度、一日中など)

2. 騒音に対する不動産管理会社の対応方法は?

では、実際に騒音による苦情が出たら、不動産管理会社としては、どんな流れで対応すべきでしょうか。

(1)賃貸人(オーナー)と管理会社の責任

前提として、オーナーとしては、自分の物件を有償で他人に貸す以上、入居者が、その物件を借りてから平穏な生活を送れるように賃貸管理すべき責任があります(民法601条)。不動産管理会社は、この管理責任をオーナーから任されているわけですから、入居者が平穏な生活を送れないような状況があれば、速やかに対応すべき責任があるわけです。

(2)まずは聞き取りから

騒音による苦情を受けた場合、まずは、苦情を訴えてきた人へのヒアリングから開始しましょう。どんな騒音がいつ発生しているのか、できるだけ具体的に聞き取ることが重要です。また、苦情を申し立てた人以外の住人にも同じようにヒアリングを行って、客観的な状況を把握するように努めましょう。なお、ヒアリングを徹底するメリットは、実際の騒音状況を把握できる点に加えて、苦情を訴えた人に対して、管理会社として適切な対応を行っていることを理解してもらえる点にもあります。

(3)騒音の計測

騒音は、専用の機械やアプリを使って誰でも計測することができます。騒音が発生している際に、録音をしながら騒音レベルを計測して記録に残しておくと客観的な証拠になります。

(4)一般的な注意勧告をする

騒音を出している本人は、音が漏れていること自体に気がついていないこともよくあります。音が漏れていることについて、本人に気付かせることができれば、それだけで音が止まることもあります。そこで、個別的な交渉に入る前に、玄関エントランスや共用部分に注意文を掲示することが望ましいでしょう。注意書きをした印刷物を全戸のポストに投函する方法も有効です。なお、注意勧告は、ある程度具体的に書くことがポイントです。「騒音に注意しましょう」などの一般論では、本人に気付かせることができません。個人情報は出してはいけませんが、「夜〇時頃」、「ピアノの演奏」、「窓を開けたまま」など、騒音がいつどのように生じているのか認識できるような記載を盛り込みましょう。

(5)個別連絡

注意勧告をしても騒音が治まらない場合は、騒音の元になっている居住者に対して、状況を説明します。この場合のポイントは

  • けんか腰にならない
  • 相手のプライドに配慮する
  • 管理会社は中立の立場であることを明確にする
  • 音を出さないのではなく、小さくしてほしいことを伝える
  • 誰がクレームを申し出たかは知らせない

などです。管理会社が出てきたことで、居住者同士のトラブルに発展しないように注意しましょう。

(6)調停・差し止め請求

いくら丁寧に対応しても、騒音が止まらず、苦情も収まらないときもあります。管理会社としては、根気強く話し合っても改善が見込めなければ、裁判官及び調停委員が介入し、話し合いによる解決を図る民事調停や損害賠償請求や騒音差止請求を求める民事訴訟などをオーナーと検討していくことになります。この段階では、早期に弁護士に相談して、法的な判断について見通しを立てながら進めることが最大のポイントです。

3. まとめ

騒音トラブルは、賃貸経営ではよくあるクレームであり、管理会社としてはしっかりとした対応が求められます。居住者の納得が得られるように、公平な立場で対処することが大事です。トラブルに発展しそうな場合は早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2021年08月31日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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