医療ミスを疑うとき弁護士に相談すると何をしてくれるの?

医療ミスを疑うとき弁護士に相談すると何をしてくれるの?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

怪我や病気で入院し手術を受けたけれども、手術前の説明と結果が違う、納得がいかないというときもあります。そんな場合、「医療ミス」という言葉が頭をよぎるかもしれません。とはいえ、患者側から病院に対して、「医療ミスではないのか?」とたずねることはためらわれるでしょう。そんなとき、弁護士に相談すると、どんなメリットがあるのでしょうか。

1. 医療ミスと医療事故、どう違う?

医療ミスに似た言葉として、医療事故や医療過誤などがあります。まずは、これらの区別について正しく理解しましょう。

(1)医療ミスとは?

医療ミスとは、医療行為について、医療機関側の判断の間違いやそれによって発生したミスのことをいいます。言い換えれば、医療者が十分に注意を払って対応をしていれば防止できたにもかかわらず、発生してしまった事故を医療ミスと呼んでいます。

医療ミスは医療過誤とも言い、医療ミス(過誤)と認められれば、医師側に法的な賠償責任が生じます。医療ミスの具体例には、医師の診断の誤り、検査のミス、手術の失敗、レントゲンやMRIなどの画像の見落とし、さらには患者の取り違えなども含まれます。

(2)医療事故とは?

これに対して、医療事故とは、医療によって患者や医療関係者に何らかの事故が起きた場合のすべてを指します。医療者側にミス(過誤)があったかどうかは関係ありません。

したがって、あらゆる医療事故のうち、医療者側にミスがあったために患者に何らかの損害が生じたものだけを医療ミスとして区別しているのです。

(3)医療ミスと認められるために必要なこと

自分の手術結果などについて医療ミスが認められるためには、次の2点を証明する必要があります。

  • 自分に対して行われた医療行為が、その当時、その医療機関に求められる程度の医療水準以下のものであったこと
  • その医療行為によって、自分に損害が生じたこと

病院にはいろいろな規模の医療機関があり、求められる医療水準もさまざまです。たとえは、大学病院など大きな病院の専門外来であれば、高度な医療水準が期待されるでしょう。

一方で、離島の小さな診療所であれば、高度な医療を提供することは難しいかもしれません。したがって、自分が手術を受けた病院が、どの程度の医療水準なのかによって、医療ミスかどうかの判断は異なってくるのです。

この点の判断には、医学的な専門知識と、法的な知識や経験が必要になります。医療ミスを疑う場合は、医療過誤事件に詳しい弁護士のサポートが必須といえるでしょう。

2. 医療ミスに対して弁護士ができること

では、弁護士に相談すると、具体的にどのようなサポートが得られるのでしょうか。

(1)カルテの取り寄せと読み込み

医療ミスについて相談を受けた弁護士は、まず、患者さんからの説明を詳しくお聞きします。そして、病院からカルテを取りよせ、医療現場で何が起きたのか、しっかりと検討します。

なお、カルテ改ざんなどの証拠隠滅のおそれがあるような場合は、事前に裁判所に申し立てて、カルテを取得することもあります。これを証拠保全手続きといいます。

カルテや診断書などの医療記録は、裁判になった場合でも重要な証拠資料になります。カルテを早期に入手して、じっくりと検討することは、弁護士にとっても患者さんにとっても一番大事なことなのです。

(2)求められる医療水準の検討

上述の通り、医療ミスといえるためには、その医療機関に求められる医療水準そのものを患者側で立証しなければなりません。そのうえで、実際に行われた医療行為が、その水準に達したものだったのかどうか、という検討に進むことになります。

このような判断は、弁護士にとっても簡単なことではありません。さまざまな文献を調べ、過去の裁判例と照らし合わせながら検討を進めます。

(3)協力医に対する調査

医療過誤事件の特徴は、弁護士が正式な損害賠償請求事件として依頼を受ける前に「調査」という形で依頼を受ける点です。調査とは、医療ミスかどうかの検討・判断に協力してくれる医師(「協力医」といいます)を見つけて医療調査を行うことです。

整形外科、眼科、耳鼻科、心臓外科、免疫内科など、各専門領域の医師を探して、病院の行った治療にミスがないか、ミスがあるとすればどんな点なのか、訴訟を提起する前に、医師の専門的な意見を求めるのです。

この協力医を見つけるのには、とても時間がかかることもあります。また、協力医を見つけたとしても、患者側に有利な意見が得られるとは限りません。

仮に、協力医から、医療ミスはなかったという意見が出てきた場合は、別の協力医を探すこともあります。調査の段階で医療ミスの立証が困難だと判断された場合は、調査で終了することもあります。

医療裁判は、長い時間と費用が掛かります。そのため、裁判を始める前に、調査という段階を経ることで、無理な裁判を起こしてしまう患者さんのリスクを軽減することができます。

(4)病院との交渉・裁判

調査を経て、医療ミスがあったと判断できる場合は、医療機関に対して損害賠償を求めて交渉を開始します。病院側が医療ミスを認めない場合には、医療訴訟に発展することもあります。

また、医療ミスを認めても賠償金額で合意できない場合にも、裁判で解決することになります。交渉でも裁判でも、医療と法律という2つの観点から、粘り強く進めていく必要があります。

治療を受けた患者としては、手術の結果について納得できないまま過ごすのは苦しいものです。とはいえ医療ミスは、数ある事件の中でも特に難易度の高い案件です。

カルテや医療記録も早めに取得することが重要です。手術後に病院に対して不信を感じている方は、医療事件に詳しい弁護士に相談することを早めに検討してはいかがでしょうか。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2021年10月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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