
整形で後遺症が残った! 損害賠償は請求できる?
以前に比べて美容整形が身近になったこともあり、若い女性の間で美容整形がはやっています。しかし、美容整形には副作用・合併症・後遺症などのリスクがありますので、メリットだけではなくリスクについてもしっかりと理解したうえで選択することが重要です。
本コラムでは、美容整形で後遺症が残ってしまった場合の対処法などについて、わかりやすく解説します。
1. 整形に失敗し後遺症が残ってしまったら、訴えることはできる?
美容整形に失敗して後遺症が残ってしまった場合、どのように解決すればよいのでしょうか。以下では、美容整形の失敗についての法的な解決方法を説明します。
(1)医療過誤の可能性がある場合は損害賠償請求を
①医療過誤とは
医療過誤とは、医師や医療従事者など医療機関側の過失により、患者を死亡させたり、後遺症を生じさせたりするなどの損害を与えることをいいます。医療過誤を理由に医療機関側の責任を追及するためには、医療機関側に過失があることが必要になりますが、美容整形での医療過誤には、主に説明義務違反と技術的なミスの2つがあります。
美容整形は、患者が健康体であるという特徴がありますので、医療行為の緊急性・必要性は、一般の医療行為よりも低くなります。そのため、美容整形を実施するかどうかの判断にあたっては、患者の自己決定権が重視されることになり、その前提として、医師には高度の説明義務が課されています。
なお、整形には、「形成外科」と「美容外科」の2種類がありますが、形成外科は、怪我・腫瘍など機能や形態に異常がある場合に、正常な状態に戻すことを目的として行われるものであるのに対し、美容外科は、異常や問題がない部分をより美しくする目的で行われるという違いがあります。
②美容整形で医療過誤が疑われる例
以下のような美容整形については、医療過誤の可能性が疑われます。
- リスクや副作用、後遺症に関する説明が不十分だった
- 患者の病歴やアレルギーなどを把握していなかった
- 間違った部分を手術された
- 不適切な施術により後遺症が生じた
- 美容整形手術を行ったのが、専門の資格を持つ医師以外のスタッフだった
(2)損害賠償が認められなかったり低額になったりする可能性も
美容整形による医療過誤が発生した場合には、医療機関側に対して損害賠償請求をすることができます。
ただし、美容整形の場合、「理想どおりの見た目にならなかった」というだけでは、患者側に損害が生じたとはいえませんので、医療過誤には該当しない可能性があります。
また、美容整形により傷跡ややけど跡などが残ってしまった場合には、「外貌醜状」という後遺障害が認定される可能性があります。しかし、外貌醜状の認定基準は、たとえば顔面部であれば10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕が必要ですので、これに満たないものについては、残念ながら後遺障害には該当しません。
このように、美容整形では、結果に不満があったとしても、損害賠償請求が認められなかったり、低額になったりする可能性もあります。
(3)損害賠償請求をしても赤字になる可能性とは
医療機関側に対する損害賠償請求をする際には、患者個人では大変ですので、弁護士に依頼して行うケースが多いです。
しかし、弁護士に依頼するには弁護士費用がかかりますので、美容整形による医療過誤が認められたとしても、患者側に生じた損害額によっては赤字になる可能性もあります。弁護士に依頼する際には、医療過誤が認定された場合に予想される賠償額を踏まえて検討するようにしましょう。
2. 弁護士選びのポイント
美容整形による医療過誤で後遺症が生じてしまったり、精神的苦痛を被ったりした方は、医療機関側に対する責任追及として損害賠償請求を行うことができます。しかし、損害賠償請求をするためには、患者側において医療機関側の過失や因果関係、患者側に生じた損害などを立証していかなければならず、専門的な知識がなければ対応は困難といえます。
このような医療過誤の分野については、法律と医療という2つの専門知識が必要になりますので、弁護士であれば誰でも対応できるという分野ではありません。医療過誤の問題を弁護士に依頼するのであれば、医療過誤の問題に精通した弁護士に相談するようにしましょう。
3. 美容整形の病院選びで注意するべきポイント
美容整形による医療過誤のリスクを少しでも経験するためにも、以下のポイントを踏まえた病院選びをするようにしましょう。
(1)即日契約、即日施術を勧める
美容整形は、患者の健康状態には特に問題はありませんので、医療行為の緊急性・必要性は低いといえます。焦って美容整形手術をする必要性はほとんどありませんので、即日契約・即日施術を勧めるような美容整形外科は避けた方がよいでしょう。
(2)リスクなどの説明がない
美容整形は、見た目が改善されるといったメリットがありますが、副作用・合併症・後遺症などのリスクも生じます。美容整形のメリットばかり強調し、リスクに関する説明をしない病院では、医療ミスなどのリスクが生じたときに十分な対応をしてくれない可能性もありますので、避けた方がよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年01月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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