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B型肝炎ウイルスに母子感染! 母子感染もB型肝炎給付金の対象になる?
集団予防接種によりB型肝炎ウイルスに持続感染した場合、B型肝炎給付金を受給することができますが、母子感染による持続感染者も二次感染者に当たれば、受給対象者となります。
この記事では、母子感染による持続感染者がB型肝炎給付金を受給するための要件や、必要となる手続き・証拠などについて解説します。
1. 母子感染とは?
母子感染とは、母親が子どもを出産する際、主に産道における血液を介して、子どもがB型肝炎ウイルスに感染することをいいます。
1986年以降は、B型肝炎母子感染予防事業としてB型肝炎ワクチンの接種などが実施された結果、母子感染の発生率は大幅に低下しています。しかし、それ以前に母親が出産した子どもは、B型肝炎ウイルスへの母子感染リスクが比較的高い状態で生まれてきたことになります。
2. 母子感染もB型肝炎給付金の支給対象となる?
母親が集団予防接種によりB型肝炎ウイルスに持続感染していれば(一次感染者)、感染した母親から産まれた母子感染者も二次感染者としてB型肝炎給付金の受給対象となります。
(1)母子感染者の受給要件
母子感染者がB型肝炎給付金を受け取るために立証すべき事項は、以下のとおりです。
①母親が次に示す一次感染者の要件を満たすこと
- B型肝炎ウイルスに持続感染していたこと
- 母親が満7歳になるまでに集団予防接種を受けており、注射器の連続使用があったこと
- 母親が母子感染ではないこと
- 集団予防接種以外の感染原因がないこと
②母子感染者が持続感染していること
③母子感染によりB型肝炎ウイルスに持続感染したことの証明
(2)国家賠償請求訴訟を通じて国と和解することが必要
二次感染者がB型肝炎給付金を受け取るためには、一次感染者の場合と同様、まず国に対して国家賠償請求訴訟を提起することが必要です。
国家賠償請求訴訟の中で、上記の受給要件をそれぞれ立証し、最終的に国との和解によりB型肝炎給付金を受け取ることができます。
3. 母親が亡くなっている場合の代替立証の例
国との和解のためには、母親の血液検査の結果だけではなく、母親の母子健康手帳や予防接種台帳の写しの他、本人が出生直後に感染していたことを示す資料なども必要とされます。
しかし、母親がすでに亡くなっている場合は、国との和解に通常必要とされる証拠を集められないケースもあるでしょう。厚生労働省が公開している手続きの手引きによると、以下の証拠については、代替証拠によっても立証することが可能としています。
(1)母親の母子健康手帳や予防接種台帳の写しがない場合
母子健康手帳を亡くなった母親が破棄しているケースや、予防接種台帳の写しを市区町村が破棄してしまっているケースでは、「母親が満7歳になるまでに集団予防接種を受けたこと」について、代替証拠による立証を行う必要があります。
「母親が満7歳になるまでに集団予防接種を受けたこと」を立証するために必要となる証拠は、以下のとおりです。
- 母子健康手帳や予防接種台帳を提出できない事情を説明した陳述書
- 予防接種痕に関する陳述書
- 住民票または戸籍の附票
- 該当時期の予防接種台帳を保存している市区町村に居住歴がある場合で、予防接種台帳に記載がない場合は、その証明書
(2)母子感染を立証するための書類が不足している場合
母子感染によりB型肝炎ウイルスに持続感染したことを立証するために必要な新生児検査の結果を、母親が破棄してしまっていた場合は、代替証拠による立証が必要です。
この場合、以下の事実をすべて立証できれば、母子感染とは異なる感染原因が存在する可能性が否定され、母子感染によりB型肝炎ウイルスに持続感染したことが立証されたものとして取り扱われます。
- 出生前に、母親のHBe抗原が陰性であった事実(感染力が弱かった事実)が確認されないこと
- 本人の出生日が昭和60年12月31日以前であること
- 医療記録などに母子感染以外の原因が存在することをうかがわせる、具体的な記載がないこと
- 父親が持続感染者でないこと、または父親が持続感染者であっても、本人と父親のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定されないこと
- 本人が持続感染するB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeでないこと
母親が亡くなっている場合は、母子感染を示す証拠の収集が難しいケースも少なくありません。必要な情報をどのように集めればよいかわからない場合は、弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年06月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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