過重労働の判断基準は? 放置すれば精神疾患のリスクも

過重労働の判断基準は? 放置すれば精神疾患のリスクも

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

長期間過重労働を強いられると、脳・心臓疾患を発症させるリスクが高くなることが医学的に確かめられています。また、過重労働は精神的な負担も大きいため、うつ病などの精神疾患を発症し、自殺につながるケースもあります。このような過重労働を強いられている場合には、早めに専門機関や専門家に相談をすることが大切です。

今回は、過重労働の判断基準と過重労働に悩んだときの相談先について解説します。

1. 過重労働の定義と判断基準

過重労働とはどのように定義されているのでしょうか。また、過重労働かどうかはどのように判断するのでしょうか。

(1)過重労働の定義

過重労働とは、長時間におよぶ時間外労働、深夜労働、休日労働、不規則な勤務、頻繁な出張などによって労働者の身体や精神に大きな負荷がかかる働き方のことをいいます。

過重労働は、労働者の疲労回復に必要となる睡眠時間を減少させるものであるため、脳・心臓疾患などの重大な健康障害を発生させるリスクが高い働き方です。

過重労働を原因とする病死や自殺を「過労死」と呼び、大きな社会問題となっています。

(2)過重労働の判断基準

過重労働の判断基準として、厚生労働省は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」、いわゆる「過労死ライン」を定めています。この基準は、病気や死亡のリスクが高まる時間外労働時間等の基準を定めたものであり、以下のような基準に該当する状況で脳・心臓疾患が発症した場合には、労災の認定において業務との関連性が強いと評価されることになります。

  • 発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働があった
  • 発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働があった

この定義に該当する場合には、過重労働と評価される可能性が高いといえます。

2. 過重労働させた企業への罰則

労働基準法では、1日8時間、週40時間という労働時間の上限を定め、36協定を締結した場合のみ時間外労働を行わせることができるとしています。そして、36協定を締結して時間外労働を行わせる場合でも、月45時間、年間360時間という上限の範囲内で行うことができるとしています。

過労死ラインに該当する長時間労働が行われている場合には、労働基準法上の時間外労働の法規制にも違反することになりますので、労働基準法違反となります。この場合には、事業者に対して6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。

3. 過重労働に悩んだときの相談先

長期間過重労働を強いられた状態が続くと、ストレスによって心臓疾患や精神疾患などが発症し、命にもかかわる重大なリスクが生じる可能性があります。そのため、過重労働の疑いがある場合には、すぐに相談をすることが大切です。

(1)労働基準監督署・労働局

労働基準監督署では、労働時間、賃金、解雇などの労働条件に関する相談を受け付けています。労働基準法に違反する疑いがある企業に対しては、立ち入り調査によって違反事実の確認をし、違反が認められる場合には是正勧告・指導によって違反状態の改善を行ってくれます。

労働局では、労使トラブルが生じた場合に助言や指導によって解決を図るほか、紛争調整委員会によるあっせん手続きによって解決を図ることもできます。

(2)労働条件相談ほっとライン

労働条件相談ほっとラインは、厚生労働省の委託事業として行われているものであり、労働者からの電話相談に対して、専門知識を有する相談員が具体的なアドバイスや関係機関の紹介を行ってくれるものです。

全国どこからでも無料で電話相談が可能ですが、企業に対する指導は行ってはくれません。

(3)労働相談ホットライン

労働相談ホットラインは、全国労働組合総連合(全労連)が実施している無料の電話相談です。労働相談ホットラインでも専門の相談員が対応し、過重労働を含む幅広い相談に対応してくれます。

(4)弁護士

上記の相談機関では相談に対して具体的なアドバイスをしてもらうことはできても、労働者の代わりに会社と交渉をしてくれることはありません。労働環境の改善や過重労働を理由とした残業代、慰謝料の請求をする場合には、会社と直接交渉をする必要がありますが、労働者個人での対応では会社はまともに取り合ってくれない場合もあります。

過重労働などの労働問題の直接的な解決を図るためには、弁護士のサポートが重要です。まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年07月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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