不当解雇の証拠として有効なものと証拠集めが難しい場合の対処法

不当解雇の証拠として有効なものと証拠集めが難しい場合の対処法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

正当な理由なく会社が労働者を解雇することを不当解雇といいます。会社から解雇を言い渡されたものの、身に覚えのない理由だったり、納得できる理由でなかったりした場合には、不当解雇の可能性があります。

不当解雇だと考える場合には、解雇の効力を争うことによって、引き続き会社で働き続けることや、解雇されていた間の賃金を請求することが可能になります。争う際には、不当解雇であることを示す証拠が重要です。

今回は、不当解雇を証明するための証拠として有効なものと、それらを集めることが難しい場合の対処法について解説します。

1. 証拠集めは解雇撤回・解雇無効の判断のカギとなる

会社から不当解雇をされた場合、労働者は会社に対して解雇が無効であることを主張し、処分の撤回を求めていくことになります。解雇が正当な理由に基づかない処分であることを示すために、労働者側から働きかけなければなりません。

ところが、解雇の撤回を求めようとしても、会社側が話し合いに応じてくれないことも考えられます。その場合は、労働審判や不当解雇訴訟によって、解雇の効力を争っていくことになります。労働審判や訴訟において、解雇に理由があることの立証責任は会社にありますが、不当解雇であると主張する労働者側も、自らの主張(適切に業務を行っていたこと等)を根拠づける証拠を提出することで、会社の立証を妨害していく必要があります。

このように、証拠があることによって、会社による解雇の撤回や裁判所による解雇無効の判断を引き出しやすくなりますので、裁判の有無に関わらず、不当解雇を争うにあたっては不当解雇であることを示す証拠の存在が重要といえます。

2. 証拠となるものの具体例

不当解雇を証明する証拠になるものとしては、以下のものが挙げられます。

(1)解雇理由証明書

不当解雇を証明する証拠として、まずは解雇理由証明書を取得することが重要です。解雇理由証明書とは、労働者を解雇した理由が記載された書面のことをいいます。労働基準法では、労働者から請求があった場合、会社側は遅滞なく交付しなければならないとされています(第22条2項)。

解雇の争い方は、解雇の種類(普通解雇、懲戒解雇、整理解雇)や、どのような理由で解雇されたのかによって異なってきます。そのため、解雇の理由や根拠が記載された解雇理由証明書を取得することによって、今後の争い方の方針が決まってくるのです。

(2)就業規則

会社側が労働者を有効に解雇するためには、客観的に合理的な理由があり、解雇することが社会通念上相当と認められることが必要になります(労働契約法第16条)。

普通解雇の場合には就業規則に明記されている理由以外の事由を理由として解雇を行うことも可能だという考え方もあります。

一方で懲戒解雇の場合には、就業規則に懲戒事由として明記されている事由に該当していなければ、懲戒解雇を行うことは許されません。そのため、懲戒解雇の場合には、まずは、就業規則と解雇事由を照らし合わせることによって、会社が主張する懲戒解雇理由が就業規則上の根拠に基づいているかを判断することになります。

(3)勤怠記録

会社側から欠勤や遅刻を理由に解雇された場合には、勤怠記録を取得するようにしましょう。勤怠記録を確認することによって、会社が主張するような欠勤や遅刻がないことを証明することができます。また欠勤や遅刻があったとしても、解雇に相当するといえるほど重大なものではないことを証明することができます。

(4)勤務成績表や人事評価書

会社側から成績不振を理由に解雇された場合には、勤務成績表や人事評価書を取得することが考えられます。業務内容や職位、給料額にもよりますが、成績不振を理由に解雇する場合には、著しく成績が悪く、改善の見込みがないという状態であることが必要であると考えられています。そのため、勤務成績表や人事評価の内容が平均より劣るという内容であったとしても、不当解雇を争うための十分な証拠となり得るのです。

3. 証拠集めが難しい場合の対処法

不当解雇の証拠を収集しようとしても、労働者個人では限界があり、十分な証拠を収集することは容易ではありません。より着実に収集するために、以下のような方法を検討してみてください。

(1)裁判所へ証拠保全を申し立てる

労働者は退職後、会社に立ち入ることができませんので、勤怠記録や人事評価書など不当解雇の証拠を収集することが難しくなります。たとえ開示を求めたとしても、会社が応じてくれないことや、証拠の改ざんが行われるリスクもあります。

このような場合には、裁判所に対して証拠保全の申し立てをすることが有効です。これにより、裁判所から会社に対して証拠を開示するように要請がなされますので、会社が証拠の開示に応じる可能性が高くなります。

また申し立てをすることによって、会社に対して証拠の改ざんや隠滅をする時間的余裕を与えないということもメリットのひとつです。

(2)弁護士への依頼

不当解雇を争うためには、いかに有効な証拠を集められるかが、その結論を左右するほど重要になります。しかし、どのような証拠が有効であるかは事案によって異なり、労働問題に関する知識や経験の少ない個人では、証拠を適切に取捨選択することは難しいでしょう。

弁護士であれば、裁判所への証拠保全申し立てはもちろん、豊富な知識と経験に基づき証拠集めをすることができます。会社から解雇を言い渡された場合には、早期に弁護士に相談して、サポートしてもらうとよいでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年03月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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