メーカー勤務で発生した未払い残業代を請求する方法とは?
かつての日本では残業するのは当たり前で、サービス残業も横行していました。しかし、長時間労働による過労死や自殺などが社会問題となり、「働き方改革」が提唱されるようになったのです。
しかし、依然として残業を減らす気がなく、そして残業代を支払わないという悪質な企業も存在します。
この記事では、メーカー会社で働いている人が会社に未払い残業代を請求する方法について解説します。
1. メーカー会社で残業が多い理由
一般的に、営業職は残業が多いと言われています。営業職では基本的にノルマが課されているために、ノルマを達成するために長時間勤務してしまう傾向があるからです。
メーカー会社の営業職のうち素材系は比較的残業が少ないと言われています。営業相手が法人であることが多いために休日に勤務する必要性が薄いことや、ノルマを達成することよりも信頼関係を構築することが重要となるために長時間労働したからといって営業成績が伸びるわけではない、ということなどが理由として挙げられます。
他方で、食品メーカーは残業が多いと言われています。食品メーカーの営業相手は、問屋、スーパー、デパート、飲食店などです。土日祝日も営業しており、営業時間後の夜遅くに訪問する場合も多く、時間外労働が多くなってしまうためです。
夜遅くに営業先を訪問した後には、事務所に戻って営業日報などの事務作業をする必要もあり、帰宅するのが深夜になるということも珍しくないのです。
また、営業職の場合、外で働いている時間を管理できないことから、「事業場外みなし労働時間制」を採用している場合があります。事業場外みなし労働時間制とは、労働者が業務を事業場外する場合に、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。
法律的に「みなす」というのは、事実と異なっていても決められたとおりになるということを意味します。たとえば、実際に10時間働いたとしても事業場外みなし労働時間制で「8時間働いたとみなす」となっている場合には、8時間働いたことになるということです。
このように事業場外みなし労働時間制を採用し、それが有効な場合には、原則として残業代が請求できません。ただし、事務所内で残業した場合には、それは事業場外みなし労働時間制の対象外なので、その分は請求することができるのです。
2. 未払い残業代を会社に請求する方法は?
(1)証拠を確保
残業代を請求するためには、「自分が残業した時間」と、「その時間分の残業代をもらっていないという事実」を示す必要があります。
タイムカードがあればそれで明らかになりますが、タイムカードがない場合には、パソコンのログを活用することも考えられますし、日報やメモ帳などに出退勤の記録を付けておくことで残業時間が証明できる可能性があります。
また、会社が残業を認めないような場合には、残業していたことを証言してくれるよう同僚にお願いしておく、という方法もあります。
残業代が支払われていないことを証明する資料としては、給与明細があります。残業時間を証明したうえで、その分の残業代が明細に記載されていないことを示せばよいのです。
(2)請求の方法
証拠をもとに残業代を支払うよう会社に請求することができます。会社が請求に応じて支払ってくれれば問題は解決しますが、請求しても支払われない場合には、労働基準監督署に通報するという方法をとることも考えられます。
労働基準監督署は、通報があると会社に対して調査を行います。調査の結果、残業代を支払っていないと判断されれば、会社に対して支払いするように「勧告」を行います。勧告に従って残業代を支払う会社もありますが、勧告に強制力はないため、支払わない場合にはそれを強制的に実現する方法はありません。
勧告がなされても残業代が支払われない場合には、労働審判や訴訟(裁判)を行うことになります。労働審判と訴訟のいずれを選択するかは、証拠の内容や会社の態度によって決定することになります。
労働審判では、裁判所が双方から意見を聞いたうえで、双方が合意して調停が成立するか、裁判所が審判を下すことにより終了する手続きであり、3回ほどで終了するため訴訟よりも短期間に終了します。労働審判に異議が出された場合や、裁判所が労働審判手続きが適切でないとして終了させた場合には、裁判手続きに移行します。
裁判になると時間がかかるため、早期解決を目指すのであれば、その前に解決することが望ましいでしょう。その方法のひとつとして、弁護士の活用があります。
会社に「残業代を支払ってください」と弁護士が請求すると、会社としては(元)従業員本人から請求されるよりも無視しにくくなり、残業代を支払ってくる可能性があるからです。仮に残業代を支払ってこない場合でも、最終的には裁判で争うことになるので、弁護士がついていれば安心できます。
「メーカー会社の営業職だから残業代は出ない」と会社に言われて、これまで残業代をもらってこなかったという場合であっても、未払い残業代は請求できる可能性があります。
ただし、残業代には時効がありますので、早めに動き出す必要があります。
交渉するのが大変という場合には、弁護士に依頼すれば、代わりに交渉してくれます。証拠が手元にない場合も、弁護士を通じて会社に資料の開示を求めることもできます。未払いの残業代があるかもしれないと思ったら、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
- こちらに掲載されている情報は、2022年02月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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