- (更新:2024年04月23日)
- 労働問題
未払い残業代の請求時に必要な証拠と、証拠がない場合の対処法
「毎日遅くまで残業しても残業代が出ない」「残業代は固定給に含まれていると言われ、長時間労働を強要される」
このような環境で働いている場合には、未払い残業代を会社に請求できる可能性があります。会社に残業代請求をするためには、サービス残業をした事実がわかる証拠が必要となりますが、どのようなものが証拠として有効なのでしょうか。
本コラムでは、未払い残業代の請求時に必要な証拠と、証拠がない場合の対処法、残業代の計算方法について解説します。
1. 未払い残業代の請求時に必要な証拠
(1)会社に残業代請求をするには証拠が必要
残業代は、会社に直接請求したり、労働審判や裁判で請求したりすることができます。
しかし、証拠なく会社に請求しても、会社側は「残業の事実はなかった」「少しは残業があったかもしれないが、請求額ほどではない」などと言い逃れできてしまいます。
また労働審判や裁判では、裁判所は証拠から事実を判断するほかなく、請求を認めてもらうためには労働者側が証拠を提出する必要があります。
なお、残業代未払いについては、弁護士や労働基準監督署などに相談することもできますが、その際にも、できる限りの証拠をそろえていく方がスムーズに話を進められます。
(2)残業の証拠となりえるもの
会社に残業代を請求するためには、「どれくらい残業したのか」を示す記録などが必要です。退職してしまうと収集が難しくなる可能性があるので、できるだけ在職中から日常的に収集しておきましょう。
残業の事実を裏付ける証拠として有効なものは、以下が挙げられます。
①タイムカードや日誌など
タイムカードで出退勤を管理している職場であれば、タイムカードをコピーして証拠として保管しておきましょう。タイムカードを採用していない職場でも、出退勤が記録されている業務日誌などがあれば証拠になりえます。
しかし、タイムカードの打刻後にサービス残業をしているケースもあるでしょう。その場合には、タイムカード以外の証拠で、残業していたことを立証する必要があります。
②パソコンやFAXなどの記録
たとえば、夜遅く会社のパソコンから取引先にメールを送信していた場合には、そのメールの送信履歴も証拠になる可能性があります。また、FAXの送信時間やパソコンのログイン・ログオフの履歴も残業していたことを示す証拠になりえます。
③スマホのやり取りやメモなど
たとえば、家族に「これから事務所を出て家に帰る」と伝えているLINEなどのメッセージも、残業の証拠になることがあります。また、残業していたことを記録した日記やメモも、証拠として認められる場合があります。
④通勤定期券など
Suica(スイカ)などを通勤定期券として使用している場合には、利用した日時の履歴が残されている場合があります。このような記録も残業を示す証拠となりえます。
⑤給与明細や就業規則、雇用契約書など
残業に対してどのような規定が設けられているのか、残業代として支払われていたのはいくらだったのかなどを確認できる証拠になり、普段の勤務形態から一定の推計ができることもあります。
これらの証拠だけでなく、証拠になりそうだと思ったものは収集しておくようにすることが大切です。
2. 証拠が手元にない場合の対処法
証拠が見つからない、すでに退職していて証拠の入手が難しいなどのケースでも、残業代を請求できる可能性はあります。
(1)会社に必要書類を提出してもらう
会社(使用者)は、労働者との労働に関する書類を5年間保存しなければなりません(労働基準法第109条)。弁護士を通し開示請求をすることにより、時間外労働の上限規制や労働時間が分かる書類などを提出してもらえる可能性があります。
(2)証拠保全手続きを利用する
会社が開示請求に応じず交渉が難航している場合には、裁判所における訴訟などの法的手続きを通じて残業代請求をすることができます。
証拠保全とは、会社側が証拠の処分や改ざんをするおそれがある場合に、その証拠を確保することができる制度です。証拠保全手続きは非常に複雑な手続きのため、弁護士に依頼するとよいでしょう。
3. 残業代の計算方法
会社側に未払い残業代を請求する場合には、証拠にもとづいて残業時間を把握し、残業代を計算しておく必要があります。
(1)一般的な残業代の計算方法
残業代は、一般的に、次の計算式で求めることができます。
1時間あたりの賃金の金額×時間外労働などを行った時間×割増賃金率
「1時間あたりの賃金の金額」は、月給制であれば、次の計算式で計算できます。
月の基礎賃金(基本給+諸手当)÷1か月の所定労働時間
そして、証拠から把握した残業時間を計算式にあてはめますが、その労働時間が時間外労働・休日労働・深夜労働のいずれにあたるのかを区別しておく必要があります。
というのも、その残業時間がどの労働にあたるのかによって、割増賃金率が変わる可能性があるためです。
なお労働基準法で定める割増賃金率は、以下のとおりです。
法外残業 | 25%以上 |
---|---|
月60時間超 | 50%以上 |
法定休日労働 | 35%以上 |
深夜労働 | 25%以上 |
状況によってそれぞれが組み合わさり、法定・法外など労働基準法に基づいた区分けとなるため、厳密に算定するには、弁護士へ相談するとよいでしょう。
なお、会社でこれを上回る割増賃金率を定めていればその率によるので、就業規則などで確認する必要があります。
(2)固定残業代の計算方法
固定残業代は、一定時間分の残業代を含めた金額を固定給とする制度です。しかし含まれている残業時間を超えて残業すれば、残業代を請求できます。
たとえば月給20万円(10時間分の残業代2万円を含む)などとされていれば、10時間を超える残業について残業代請求ができます。
固定残業代における残業代の計算方法の考え方は、一般的な残業代の計算方法と大きく変わりません。しかし、何時間分の残業代が含まれているかに注意を払いながら、1時間あたりの賃金の金額を計算する必要があるでしょう。
残業代請求には3年間の時効が定められています。十分な証拠がない場合にも、会社側に残業代を請求できる可能性はありますので、一度弁護士などに相談してみることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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