給料未払いで生活できない! 請求方法と支払いを確保する方法とは
給料未払いは違法です。自身の生活を守るためにも、未払い給料は早めに請求する必要があります。しかし、支払うよう請求したにもかかわらず、会社側が誠実に対応しない場合には、労働者側で適正な給料額を計算し、その証拠もそろえなければなりません。
本コラムでは、未払い給料の請求方法や、その支払いの履行を確保する方法などについて詳しく解説します。
1.給料未払いは違法
(1)給料の支払いに関する法律上のルール
給料未払いはいかなる事情があっても違法です。
すなわち、労働基準法24条1項本文では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。一般に「全額払いの原則」といいます。
労働の対価として発生した給料を一部でも未払いとすることは、全額払いの原則に違反するため、理由を問わず違法です。会社の経営が苦しい、給料の計算を間違った、などの事情があったとしても、給料を未払いとする正当な理由にはなりません。
(2)未払いが問題となる「給料」の範囲
全額払いが必要な「給料」(賃金)とは、労働の対価として会社から従業員へ支払われるすべてのものを指します。
基本給の他にも、賞与や各種手当て、退職金などをはじめとして、名称にかかわらず、労働の対価として支払われるものは「給料」(賃金)に該当します。
一方、結婚祝い金や病気見舞金、弔意金などのように、労働の対価としてではなく、恩恵的に支払われるものは「給料」(賃金)には該当しません。
(3)給料未払いに対するペナルティー
給料未払いが発生すると、会社は未払い給料だけでなく、従業員から請求があれば遅延損害金も加算して支払わなければなりません。遅延損害金の利率は2025年現在、年3%です(民法404条。3年ごとに算定し直され、次回は2026年に変動する可能性があります)。
それだけでなく、給料未払いには30万円以下の罰金という刑罰が科され(労働基準法120条1号)、悪質なケースでは会社(法人)が処罰されることもあります(同121条)。
2. 未払い給料を請求する手続きの流れ
未払い給料を請求するための手続きの流れは、以下のとおりです。
(1)未払いの金額を計算する
給料の未払い額は、労働者側で計算する必要があります。
就業規則や賃金規程、雇用契約書などで定められた計算方法に従って算出しますが、残業代(時間外労働や休日労働、深夜労働)については、1分単位で割増賃金を請求できますので、正確に計算する必要があります。
そして、労働した事実と、未払い給料の算出根拠となる証拠をそろえておくことも重要です。
一般的には、タイムカードその他勤怠管理の記録が有力な証拠となります。勤怠管理が適切に行われていない場合には、手帳のメモ等も証拠になりますが、それだけでは必ずしも証明力が十分とはいえません。主に以下のような資料を証拠として確保するよう努めてください。
- 業務日報
- 業務上のメールやFAXの送信履歴
- チャットなど業務上のシステムへのアクセス記録
- パソコンのログイン、ログアウト時間のログ
- 会社への入退館記録
など
(2)会社側と交渉する
以上の準備が完了したら、会社側へ未払い給料を請求し、その支払いについて交渉します。
すでに退職している場合は、内容証明郵便で請求書を作成し、会社宛てに送付するのが有効です。その上で、準備した証拠を経営者や担当者に示し、「お支払いいただけない場合は裁判をする準備もあります」と告げて、強気に交渉するのもよいでしょう。
在職中で今後もその会社で働き続けたい場合には、なるべく角が立たないように交渉方法を工夫するのが得策です。とはいえ、弱気な態度で交渉すると泣き寝入りすることにもなりかねませんので、弁護士を間に入れて話し合うことも検討してみましょう。
(3)労働審判や訴訟を提起する
話し合いで解決できない場合には、労働審判や訴訟といった法的手続きによる解決を図ることになります。
労働審判とは、労使間のトラブルについて、裁判所において原則として3回以内の審理で解決を図る手続きのことです。
具体的には、まず、中立公平な労働審判委員会(裁判官1名と労働審判員2名で構成される)を介した話し合いにより、合意による解決(調停)を目指します。合意に至らなかった場合には、当事者が提出した主張や証拠に基づき、裁判所が判断(審判)を下します。
労働審判は訴訟と比べて審理期間が短く、手続きにかかる労力も比較的軽いです。そのため、早期解決や柔軟な解決を望む場合には、労働審判を利用するとよいでしょう。
一方、時間や労力をかけてでも未払い給料を全額回収したい場合には、訴訟の提起がおすすめです。
訴訟とは、当事者が主張と証拠を出し合い、最終的に裁判所が判決によって判断を下す手続きです。当事者や証人の尋問など本格的な証拠調べを経て判決が下されます。
ただし、給料の未払い額が60万円以下の場合は、少額訴訟を利用できます。
少額訴訟とは、請求額が少額(60万円以下)の紛争について、原則として1回の期日で終結し、その日のうちに判決が下される訴訟のことです。証拠書類や証人は、その場ですぐに調べることができるものに限られます。また、判決に対する控訴はできず、「異議申立て」のみ認められます。
相手方が少額訴訟の手続きに異議を述べた場合は、通常訴訟の手続きに移行します。
(4)会社が倒産した場合は未払賃金立替払制度を利用する
会社が倒産してしまった場合は、未払賃金立替制度の利用を検討しましょう。
未払賃金立替制度とは、企業の倒産によって賃金を受け取れなくなった労働者に対して、国が事業主に代わって賃金の一部を立て替えて支払う制度のことです。
この制度を利用すれば、退職日の6か月前から請求日の前日までに発生した未払い給料について、原則として80%の金額を受け取ることができます。
ただし、退職時の年齢に応じて上限額(88万~296万円)が定められているため、受取額が80%に満たないこともあります。
3.給料未払いとなったときの注意点
給料が未払いとなったときは、以下の点に注意が必要です。
(1)未払い給料の請求権には時効がある
未払給料の請求権には時効があるため、早めに請求することが大切です。給料請求権の消滅時効期間は、以下のとおりです(労働基準法115条、同附則143条3項)。
-
給料(退職金以外)
3年
-
退職金
5年
本来の支払日から上記の期間が経過してしまうと消滅時効が完成し、未払給料を回収できなくなってしまいます。
ただし、時効完成前に裁判を起こせば時効が更新され、それまで進行していた時効期間はリセットされます。労働審判や訴訟で会社の支払い義務が確定すると、その後の消滅時効期間は10年に伸長されます(民法169条1項)。
時効完成が間近に迫ってしまった場合は、内容証明郵便を送付するなど「催告」をすれば、6か月間だけ時効の完成が猶予されます。その間に会社と交渉したり、裁判を起こしたりするとよいでしょう。
(2)未払い給料を請求するには証拠が重要
未払給料の請求に会社がストレートに応じてくれればよいですが、意見が対立することの方が多いものです。その場合には、証拠が重要となります。
証拠がなければ裁判や審判で請求を認めてもらうことはできませんし、交渉においても、証拠がなければ会社側を説得することは困難だからです。
給料計算の根拠となる資料(就業規則など)や、労働した事実を証明できる資料(勤怠管理の記録など。タイムカード等でなくても、チャット等での始業と終業の報告のログ、画面のスクショ等でも可)が有力な証拠となりますので、早めに収集しておきましょう。
4.給料未払いで困ったときの相談先
未払給料を請求し、その支払いを確保するためには専門的な知識やノウハウを要しますので、困ったときは早めに、以下のように専門的な機関へ相談することをおしすすめします。
(1)労働基準監督署
労働基準監督署では、労働問題について全般的に相談を受け付けています。
会社側に法令違反が認められた場合には、是正勧告などの行政処分が行われるため、会社側が自主的に未払給料を支払うことも期待できます。
しかし、行政処分には法的な拘束力がないため、会社が自主的に支払わない場合には別途、交渉や法的手続きが必要となることに注意が必要です。
(2)労働組合
会社に労働組合がある場合は、相談し、協力を求めることをおすすめします。
労働組合は、労働者のために労働条件や労働環境の改善を目的とした組織であり、未払給料の支払いについて会社側と交渉してくれることもあります。
交渉で解決できない場合には別途、労働審判や訴訟などが必要となります。
(3)弁護士
弁護士は、労働者の代理人として会社と交渉したり、必要に応じて労働審判や訴訟といった法的手続きを代行したりします。証拠の収集についてもサポートしてくれます。
相談するだけでも有益なアドバイスが受けられますし、最適な解決方法が見つかることを期待できます。
未払給料を回収するためには、早めに弁護士へご相談の上、具体的な対処法を検討することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2025年07月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。