妊娠を理由にした解雇は違法? 弁護士が対処法を解説

妊娠を理由にした解雇は違法? 弁護士が対処法を解説

倉内 怜

監修弁護士

倉内 怜 ベリーベスト法律事務所 新宿オフィス

第二東京弁護士会 / 登録番号:59047

妊娠を理由にした解雇は違法です。会社が妊娠を理由とした解雇ではないことを証明しない限り、原則として無効になります。
本コラムでは、妊娠を理由に解雇された場合や退職勧奨された場合などへの対処法、妊娠中の女性に認められている権利について解説します。

1. 妊娠を理由とした解雇は違法!

妊娠を理由とした解雇は法律で禁止されているため、違法です。根拠となる条文と共に詳しくみていきましょう。

(1)妊娠中、出産後1年を経過しない解雇は無効

男女雇用機会均等法9条4項は、妊娠中または出産後1年を経過しない女性労働者の解雇は、事業主が妊娠などを理由とした解雇ではないことを証明しない限り、原則として無効であると規定しています。

(2)就業規則、労働契約に定めがあっても違法

男女雇用機会均等法9条1項の規定により、会社は就業規則や労働契約において、妊娠や出産を退職理由として定めることはできません。
したがって、仮に就業規則や労働契約に「妊娠または出産をした場合は解雇する」とあらかじめ定めがあったとしても、実際に会社がそれを行うと違法行為に該当するのです。

(3)会社が妊娠を理由としてできないこと(不利益取扱い)とは

会社が妊娠を理由としてできないことは解雇だけではありません。
男女雇用機会均等法9条は、妊娠を理由とした会社による「不利益取扱い」を禁止しています。
「不利益取扱い」に該当する具体的内容は、以下のとおりです。

  1. 解雇する
  2. 期間を定めて雇用されている者の契約を更新しない
  3. あらかじめ契約更新回数の上限が明示されている場合に当該回数を引き下げる
  4. 退職または正社員をパートタイム労働者などの非正規社員にするような労働契約内容の変更を強要する
  5. 降格させる
  6. 就業環境を害する
  7. 不利益な自宅待機を命ずる
  8. 減給をする、または賞与などにおいて不利益な算定を行う
  9. 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行う
  10. 不利益な配置変更を行う
  11. 派遣労働者として就業する者に、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役割の提供を拒む

会社はこれらの不利益取扱いに該当する行為をすることができません。

なお、妊娠出産に関して不利益取扱いと共に問題になるのがマタニティ・ハラスメント、通称「マタハラ」です。不利益取扱いは会社が行うものであるのに対し、マタハラは上司や同僚の言動により就業環境が害されることを指します。
会社は不利益取扱いを行うことを禁止されているのと同時に、マタハラ防止措置を講じることを義務づけられているのです。

2. 万が一解雇されたときにできることは?

万が一、妊娠を理由に企業から解雇を言い渡された時にやるべきことを、以下の順に解説していきます。

  1. 弁護士に法律相談する

  2. 不当解雇の証拠を集める

  3. 解雇撤回を求める

  4. 労働審判の申し立てや訴訟提起をする

(1)弁護士に法律相談する

妊娠を理由に解雇を言い渡されたら、まずは弁護士に法律相談しましょう。

不当解雇への対処法はケースによって異なります。弁護士に相談することで自身のケースに応じたアドバイスを受けられるでしょう。

(2)不当解雇の証拠を集める

弁護士への相談と同時並行で不当解雇の証拠を集めましょう。
不当解雇の証拠として有効なものは以下のとおりです。

  • 解雇理由証明書
  • 解雇を言い渡された際の音声データやチャット、メールなど
  • 同僚の証言

妊娠を理由に不当解雇された証明として、解雇理由証明書や妊娠を理由に解雇を言い渡された際の音声データなどを集めておきましょう。

解雇理由証明書は、会社に請求すれば受け取ることができます。ただし、解雇理由として「妊娠したため」と記載されることはほとんどないでしょう。

したがって、自分の勤務態度に解雇に該当するようなものがないことを証明する必要があります。そのために、自分の勤務態度を知る同僚の証言を集めておきましょう。

(3)解雇撤回を求める

証拠を集めたら、会社に対して解雇撤回を求めます。

解説してきたように、妊娠を理由とした解雇は不当解雇に該当し、違法です。
したがって、会社に妊娠を理由に解雇された場合は法律を示しながら無効を主張することで、解雇の撤回が認められる可能性があります。

その際は、会社側に不当解雇について争う意思を示した証拠が残るように、内容証明郵便(日本郵便が書面内容や送付日などを証明するサービス)を利用しましょう。

(4)労働審判の申し立てや訴訟提起をする

解雇撤回が認められない場合、労働審判の申し立てや訴訟提起を検討します。

「労働審判」とは、解雇や給料不払いなどの労働者と事業主間の労働関係トラブルを迅速、適正かつ実効的に解決するための手続きです。
まずは労働審判委員会が仲介して「調停」という話し合いで解決を目指しますが、調停が不成立になった場合は労働審判委員会が事案の実情に即した審判を下します。

労働審判に不服がある場合、異議申立てをすることで訴訟に移行し、労働関係トラブルに関する最終的な判断が下されるのです。

3. 退職を促された場合の対処法

妊娠を理由に会社から解雇を言い渡されるのではなく、退職を促される場合があります。このことを「退職勧奨」といいますが、退職勧奨を受けた場合はどのように対処すればよいのでしょうか?詳しく解説します。

(1)妊娠を理由に退職勧奨を受けた場合は?

退職勧奨は強制ではありません。したがって、妊娠を理由に「退職した方がよいのではないか」と退職を勧められても、退職したくない場合には拒否することができます。

退職勧奨を拒否する場合は、口頭や書面で退職勧奨に応じないことを明確に伝えましょう。弁護士に相談して会社へ退職勧奨をやめるように伝えてもらうことも有効です。

また、長時間拘束して退職するように促す、脅迫する、といったように退職勧奨のやり方が悪質な場合は損害賠償請求が認められる可能性もあります。弁護士に依頼すれば、その対応を任せることも可能です。

(2)妊娠以外の理由で退職勧奨を受けた場合は?

妊娠とは別の理由をカムフラージュにした上で退職勧奨を受けた場合も、妊娠を理由に退職勧奨をされた場合と同様に退職を拒否することができます。

退職勧奨を拒否することを会社に伝え、場合によっては弁護士に相談しましょう。

4. 不利益取扱いを受けた場合の対処法

妊娠を理由とした不利益取扱いを実際に受けた場合の対処法は、基本的には2章で解説した解雇された場合の対応と同じです。

  1. 弁護士に法律相談する

  2. 不利益取扱いの証拠を集める

  3. 不利益取扱いの撤回を求める

  4. 労働審判の申し立てや訴訟提起をする

上記以外の対処法として考えられるのは、「労働基準監督署に相談する」という方法です。

労働基準監督署は厚生労働省の出先機関であり、労働基準法に違反している企業を監督指導しています。労働問題の相談窓口も設けているため、「残業代がでない」「育児休業がとれない」「不利益取扱いを受けている」といった労働問題に関する相談をすると、解決のためのアドバイスや適切な窓口の紹介をしてもらうことが可能です(電話相談も可能)。

5. 妊娠中なら仕事内容や勤務時間の変更もできます

妊娠による解雇や不利益取扱いを受けないこと以外にも、妊娠した女性労働者には法律上認められている権利があります。詳しくみていきましょう。

(1)医師からの指導による変更(男女雇用機会均等法13条)

男女雇用機会均等法13条において、女性労働者が医師から指導を受けた場合、会社は女性労働者が医師からの指導を守れるように、勤務時間の変更や勤務内容の軽減などの必要措置を取らなければならないことが規定されています。

したがって、妊娠した女性労働者には、医師から指導があった場合は会社に対して勤務時間の短縮や休憩時間延長、仕事内容の変更などを求める権利があります。

(2)危険な業務などの禁止(労働基準法64条の3第1項)

労働基準法64条の3第1項の規定によると、会社は妊娠中の女性および出産後1年を経過しない女性を危険有害業務に就かせてはなりません。危険有害業務は女性労働基準規則に定められており、具体的には以下のものが挙げられます。

  • 重量物を取り扱う業務
  • 有害ガスを発散する場所における業務
  • 多量の高熱物体を取り扱う業務
  • 著しく暑熱な場所における業務
  • 著しく寒冷な場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • など

これらの危険有害業務を命じられても、法律で禁止されている以上、妊娠中の女性および出産後1年を経過しない女性にはこれらの業務を拒否する権利があるのです。

(3)請求による時間外労働の禁止(労働基準法第66条)

労働基準法第66条において、妊産婦が請求した場合、会社は時間外労働や休日労働、深夜労働をさせてはならないと規定されています。

したがって、時間外労働などを望まない場合は会社に対してその旨を伝えるようにしましょう。

(4)産前・産後の休業等(労働基準法第65条)

労働基準法第65条において、妊産婦は会社に対して産前6週間前から休業を請求することができます。また、産後8週間を経過していない女性を就業させることが禁止されています。

ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、医師が「支障がない」と認めた業務に就くことは可能です。

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

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  • こちらに掲載されている情報は、2025年06月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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