
会社から突然解雇されたら? 解雇が違法となる条件や対処法を解説
会社は自由に社員を解雇できるわけではありません。正当な理由や手続きを欠いた解雇は「不当解雇」とされ、無効になる可能性があります。
不当解雇であれば、弁護士などに相談して解雇を争うこともできるのです。
本コラムでは、解雇が違法とされる条件や、不当解雇を言い渡された時にとれる対応、主な相談先について解説します。
1. 会社からの解雇|不当解雇になる場合とは?
まず、会社が従業員を解雇できるケースや、解雇を言い渡されそうなときの対応について確認しておきましょう。
(1)解雇の種類
解雇には主に3つの種類があり、それぞれ法律で定められた要件があります。これらの要件を満たさずに解雇されると、「不当解雇」と判断されるのです。
①普通解雇
普通解雇とは、病気や能力の不足、職場での協調性に欠ける言動、勤務態度の悪化、就業規則に違反する行為などを理由として行われる解雇をいいます。
- 就業規則や労働協約上の手続きを経ている
- 解雇に合理的理由や社会通念上の相当性が認められる
- 労働基準法上の「解雇禁止事由」に該当しない
- 30日前に解雇予告している、または相当分の解雇予告手当を支払っている
- 業務遂行能力が著しく欠如している
- 勤務態度が著しく悪い
- ケガや病気で長期間働けない
②整理解雇
整理解雇とは、使用者側の事情によりやむを得ず行われる解雇をいいます。
- 人員削減の必要性がある
- 解雇回避の努力を尽くした
- 人選が合理的
- 解雇手続きが妥当(従業員へ十分な説明・協議を行った)
- 経営が悪化して、人員削減が必要になった
- 工場の生産ラインを機械化して、余剰人員が発生した
③懲戒解雇
懲戒解雇とは、懲戒処分として行われる解雇をいいます。
- 就業規則に具体的な懲戒事由が定められている
- 就業規則を従業員に周知している
- 懲戒事由に該当する事実が存在する
- 解雇に合理的理由や社会通念上の相当性が認められる
- 職場の金銭を横領した
- 部下へのパワハラを繰り返した
(2)解雇を言い渡される前にできること
会社から不当に解雇を告げられそうであれば、以下の対応を取るようにしましょう。
①就業規則や労働契約を確認する
まずは、会社の解雇に関するルールを再確認しましょう。就業規則や個別の労働契約書に、解雇の条件や手続きが明記されていることが多いです。
②退職勧奨にすぐ応じない
解雇に一度でも合意してしまうと、復職要求が困難になる場合があります。退職の打診があっても、その場ですぐに承諾しないようにしましょう。
③言動を記録する
退職勧奨の方法が不当と認められれば、会社に対して損害賠償請求ができる場合があります。可能であれば、退職勧奨を受けた際の会話を録音できるよう準備しておきましょう。
2. 会社から不当解雇を言い渡された場合の対処法
解雇を言い渡されてしまっても、不当なものであれば争う余地があります。以下、主な対処法を紹介しますので、ご参考ください。
(1)復職の意思表示をする
不当解雇であると感じたのであれば、以下のような方法をとるなど、復職の意思を会社に対して明確に伝えることが重要です。
①出勤を継続する
可能であれば出社を継続して、具体的な業務指示を仰ぎましょう。解雇通告後も出勤を続けることで、復職の意思表示を示せます。
②退職届や離職票には安易にサインしない
退職に合意したと誤解される可能性があるので、書類には安易にサインしないようにしましょう。
③内容証明郵便で「解雇に納得していない」旨を通知する
記録として残るよう、「解雇に納得していない」「復職を希望している」といった内容を内容証明郵便で送付するのが有効です。
(2)不当解雇の根拠となる証拠を集める
裁判などの手続きに発展した場合、客観的事実を証明する証拠が重要になります。証拠は、退職して時間が経過すると収集しづらくなるので、できる限り早い段階で集めるようにしましょう。
収集すべき証拠の具体例は、以下のとおりです。
- 解雇通告の際の録音データ
- 解雇理由について会社とやり取りした際のメール
- 解雇理由証明書
- 勤務成績に関する資料(人事評価書など)
- 就業規則、賃金規定
(3)解雇理由を明らかにする
解雇の理由を確認するために、「解雇理由証明書」の交付を会社に請求しましょう。労働基準法によれば、解雇理由証明書の交付請求を受けた会社は、証明書の交付を拒否できないことになっています。
もし会社が交付を拒否すれば、拒否したこと自体が不当解雇の疑いを強める要素となり、労働審判や裁判の場で労働者に有利に働く可能性があります。証拠として残すためにも、口頭ではなく、書面・メール・内容証明郵便などの手段で請求するのがよいでしょう。
(4)解雇予告を受けていなかった場合は「解雇予告手当」を請求できる
会社は、労働者を解雇する際、原則として30日前までに解雇予告を行う必要があります。30日前に予告ができなければ、「解雇予告手当」を支払う義務が生じます(労働基準法第20条)。
解雇予告手当を受け取っていない、または金額が不相当の場合には、相当額の解雇予告手当を請求しましょう。
解雇予告手当は、以下の計算式を用いて算出します。
解雇予告手当の金額 = a. 支給対象日数 × b. 平均賃金
aの「支給対象日数」とは、解雇予告が「30日」に不足する日数をいいます。
たとえば、解雇日の14日前に解雇予告をされた場合、30日に16日分不足しているため、支給対象日数は「16日」となります。
bの「平均賃金」は、以下の計算式で算出できます。
平均賃金 = 直近の3か月に支払われた賃金の総額 ÷ 3か月の日数
ただし、下記の労働者は解雇予告手当の支払い対象外となるので、注意が必要です(労働基準法第21条)。
- 日雇い労働者で、使用される期間が1か月以内の労働者
- 2か月以内の期間を定めて使用される労働者
- 4か月以内の期間を定めて使用される季節労働者
- 試用期間中で、試用期間が14日以内の労働者
【注意!】不当解雇を争う場合における解雇予告手当の受領リスク
解雇予告手当を何の異議もなく受け取ってしまうと、「解雇に納得している」と判断されかねないので、注意が必要です。会社が手当を一方的に振り込んでくるケースもあるかもしれません。その場合、実務では「解雇を承認しての受領ではない」「このお金は解雇予告手当としてではなく、賃金の一部として受け取る」と会社に明確に伝えたうえで受け取る手法がよく使われます。
3. 会社からの不当解雇の相談先
解雇に納得できなければ、ひとりで抱え込まず、信頼できる機関や専門家に相談することが重要です。
以下、主な相談先を紹介しますので、状況に応じて適切な相談先を選びましょう。
(1)人事部
まずは社内の「人事部」に相談する方法が考えられます。
メリット | デメリット |
---|---|
社内での円満解決が目指せる | 会社寄りの対応になる場合がある |
(2)組合(労働組合)
会社に労働組合があれば、組合を通じて会社側と交渉してもらえる可能性があります。会社に労働組合がなくても、ユニオン(合同労働組合)に加入して、そこから会社と交渉してもらうことも可能です。
メリット | デメリット |
---|---|
・団体交渉権や争議権を活用できる | ・組合が十分に機能していない場合もある
・対応スピードが労働組合により異なる |
(3)労働基準監督署
解雇が各種労働法に違反していれば、労働基準監督署へも相談できます。
メリット | デメリット |
---|---|
・専門の相談員が中立な立場で相談にのってくれる
・相談内容に法令違反があれば、会社に対して是正勧告や指導を行うケースがある |
・会社に対して解雇撤回の交渉はしてもらえない |
(4)弁護士
不当解雇かどうかの判断や会社との交渉、法的手続きを一任できるのが弁護士です。状況が深刻な場合には、弁護士に相談すれば対応がスムーズに進むでしょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・不当解雇に該当するか判断してもらえる
・会社との交渉をすべて代理してもらえる ・労働審判や訴訟手続を一任できる ・紛争を終局的に解決できる |
・費用が発生する |
4. 不当解雇は労働問題に強い弁護士へ相談を
以上のように、弁護士に相談することで多くのメリットを得られます。不当解雇と感じたら、弁護士に相談してみましょう。
(1)弁護士はどこで探せばいい?
以下の手段を参考に、自分に合った方法で不当解雇を得意とする弁護士を探しましょう。
①知人の紹介
実際に相談したことがある人からの紹介であれば信頼性が高く、安心して相談できます。
②インターネット検索
「不当解雇 弁護士 東京」など、地域名や相談内容をキーワードにして検索すれば、対応可能な弁護士を効率的に探せます。
③ポータルサイトの利用
「弁護士JP」などのポータルサイトを利用すれば、不当解雇をはじめとした労働問題を得意とする弁護士を簡単に検索できます。対応エリアや料金表、経歴などの情報が掲載されており、不慣れな方でも使いやすいのが特徴です。
(2)自分に合った弁護士選びのポイント
不当解雇を得意とする弁護士の中でも、自分に合うと感じる弁護士を選ぶべきでしょう。以下のポイントを参考に比較・検討してみてください。
①解決実績の豊富さ
不当解雇に関するトラブルを数多く扱ってきた実績がある弁護士であれば、状況に応じた柔軟な対応が期待できます。事務所のホームページなどを参照して、過去の解決実績を具体的に確認しておきましょう。
②相性やコミュニケーション能力
弁護士との相性も大切な要素です。「この人には話しやすい」と感じるかどうか、また、専門用語をかみ砕いて説明してくれるかなども確認しておきましょう。初回の法律相談を無料で実施する事務所も多いため、一度申し込んでみるのもおすすめです。
③弁護士費用
着手金・報酬金・実費などの内訳が明確に説明されるか、追加費用が発生するかも確認しておくと安心です。
自分にあった弁護士に相談して、トラブルの早期解決を目指しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年05月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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