
労務相談はどこにすればいい? 労働問題の内容と各相談窓口の違い
「職場でのトラブルについて相談したいけれど、どこに相談すればいいのかわからない…」と悩んでいませんか?
残業代の未払い、不当解雇、ハラスメントなど、労働問題にはさまざまな種類があり、それぞれ適した相談窓口が異なります。自分の状況に合わせて、適切な窓口を見つけることが大切です。
本コラムでは、労務相談の主な内容と、それに対応する相談窓口の特徴を分かりやすく解説します。
1. 労務相談とは
労務相談とは、労働者が職場で直面するさまざまな労働問題に対する適切な解決策を見つけるための相談を指します。
ここでは、具体的な労務相談の種類と、具体例について詳しく説明します。
(1)賃金に関する相談
給与の未払い、残業代の未払い、不適切な賃金計算などの問題が対象です。
具体例
- 基本給や手当が事前の契約内容と異なる。
- 残業をしたにもかかわらず、残業代が支払われていない。
- 会社から一方的に給与の減額を通知された。
(2)不当解雇等に関する相談
不当解雇や退職勧奨、退職拒否など、労働者が雇用契約の終了を巡って争うケースが該当します。
具体例
- 退職を強要され、執拗な圧力を受けている。
- 業績不振を理由に突然解雇を言い渡されたが、実際には会社の業績は安定している。
- 正当な理由なく、試用期間終了と同時に雇用契約を打ち切られた。
(3)長時間労働等に関する相談
法定労働時間を超える労働の取り扱いや、適切な休息の確保などの問題が対象です。
具体例
- 過労死ライン(100時間程度)の残業をしている。
- 休日出勤が常態化しており、休みが取れない。
- 「忙しいから今は休めない」と、有給休暇の取得を拒否される。
(4)職場の人間関係、ハラスメントに関する相談
職場における人間関係の問題や、パワハラ・セクハラなどのハラスメントの問題が対象です。
具体例
- 上司から日常的に暴言を吐かれている。
- 同僚からの無視や嫌がらせが続いている。
- 仕事とは関係のない私生活について、上司から執拗に干渉される。
(5)労働条件・待遇に関する相談
雇用契約や就業規則で定められた労働条件や待遇と、実際の職場環境との相違などの問題が対象となります。
具体例
- 雇用契約で定められた労働時間と実際の労働時間が大きく異なる。
- 就業規則に反する形で、一方的に給与や勤務条件を変更された。
- 就業規則で産休が認められているにもかかわらず、「産休を取るなら辞めてもらう」と言われた。
2. 労務相談の相談窓口とそれぞれの特徴
ここでは、労務問題に関する主な窓口と、それぞれの特徴を解説します。

(1)労働組合
会社の労働組合に相談できます。もし会社に労働組合が存在しない場合には、合同労組(ユニオン)に加入して相談するという方法もあります。
労働組合に相談すれば、団体交渉権に基づいて組合が会社に対して交渉を申し入れ、労働者の立場を代弁して話し合いを進めてくれます。
ただし、交渉は基本的に話し合いを通じて解決を目指すため、必ずしも希望通りの結果になるとは限らない点は理解しておきましょう。
(2)労働相談ホットライン
全国労働組合連合会が運営する労働者向けの相談窓口の「労働相談ホットライン」にも相談できます。あらゆる労働問題について相談ができ、専門知識を有する相談員による適切なアドバイスを受けることができます。
相談方法は、電話相談またはメール相談の2種類から選べます。
電話番号
0120-378-060(フリーダイヤル・平日10時〜17時)
メール
労働相談メールフォーム
ただし、直接紛争の解決を行う権限はありません。解決が困難な場合には、裁判や労働審判などの法的手段が必要になることがあります。
(3)もよりの自治体等の労働相談窓口(労働相談センターなど)
都道府県や市区町村が設置する労働相談窓口にも相談できます。相談料は無料で、あらゆる労働問題について相談できることが多いです。
ただし、会社に対する調査や指導を行う権限はありません。
(4)総合労働相談コーナー
労働局・労働基準監督署に設置されている相談機関である「総合労働相談コーナー」にも相談できます。
労働問題に関する幅広い相談を受け付けているので、法律違反の有無にかかわらず、「まずは労働問題について相談したい」という段階でも利用できます。労働基準法などの法律に違反している可能性がある場合には、労働基準監督署など、行政指導を行う権限を持つ担当部署へと適切に取り次ぐことになります。
ただし、労働基準監督署のように、法令違反に対して行政指導を行う権限はありません。
(5)労働条件相談ほっとライン
「労働条件相談ほっとライン」は、違法な時間外労働や過重労働による健康被害、未払い残業代など、労働基準関係法令に関するさまざまな問題について相談できる電話窓口です。どなたでも無料で相談が可能で、匿名での相談にも対応しています。
専門的な知識を持つ相談員が、法令や裁判例を踏まえたアドバイスを行い、必要に応じて関係機関の紹介も行います。
電話番号
0120-811-610(フリーダイヤル・平日:17時〜22時、土日祝日:9時〜21時 ※年末年始を除く)
夜間の相談にも対応しているので、日中忙しい方でも利用しやすいでしょう。
ただし、相談内容に応じたアドバイスや情報提供を行う窓口で、実際に発生したトラブルを直接解決する窓口ではないので、注意が必要です。
(6)労働基準監督署
労働基準法違反の疑いがある場合には、労働基準監督署に相談できます。
労働基準監督署は、企業が労働基準法などの労働関係法令を適切に守っているか監督・指導する公的機関です。企業の労働基準法違反の有無を調査し、必要に応じて捜査をしたり、悪質な場合には使用者を逮捕したりする権限を有しています。
ただし、労働基準監督署は労働基準法を遵守させるための公的機関なので、個々の労働者と企業の間のトラブルを解決することを目的としているわけではない点には注意が必要です。
(7)社労士(社会保険労務士)
社労士は労働法分野の専門家で、さまざまな労働問題について相談できます。また、特別な認定を受けた「特定社会保険労務士」であれば、労働問題に関するあっせん手続きなどの代理を行うこともできます。
ただし、社会保険労務士は裁判手続きの代理人になることはできません。
(8)弁護士
弁護士は法律の専門家で、労働者と会社の間で発生するあらゆる法的トラブルに関して相談できます。
労働者と会社間の問題を解決するためには、まず会社と直接話し合うことが考えられます。ただ、話し合いで解決しない場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きに移行します。弁護士に依頼すれば、これらの手続きを代行して、問題の実効的な解決のために尽力してもらえます。
相談すると、相談料や弁護士費用がかかってしまう点はデメリットです。しかし、一定の収入・資産以下の方であれば、「法テラス」を利用することで、弁護士に無料で相談できたり、弁護士費用を立て替えてもらえたりできます。
また、初回の法律相談を無料としている事務所も多いです。弁護士に正式に依頼するか悩んでいる場合、まずは無料相談を利用するのもよいでしょう。
3. 労務相談をする前に準備しておくべきこと
労務相談をスムーズに行うためには、事前準備が重要です。ここで紹介する方法を参考にしたうえで、準備を進めるようにしてください。
① 相談内容の整理
相談したい内容を、あらかじめ簡単に整理しておきましょう。
どのような問題が発生しているか、いつからどのように進展したのかを時系列などにまとめておくことで、状況が明確になります。
② 証拠の用意
相談内容に応じた証拠を準備することで、事実を立証しやすくなるでしょう。具体例は、以下のとおりです。
-
残業代請求の場合
タイムカード、業務メールの送受信履歴、PCのログ、就業規則など
-
不当解雇に関する相談の場合
解雇に至る経緯をまとめたメモ、面談時の録音など
-
パワハラに関する相談の場合
録音データ、メール・チャットの履歴、目撃者の証言など
なお、弁護士に相談すれば、収集すべき証拠の種類や、収集方法についてアドバイスをもらえます。不安な点があれば、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
- こちらに掲載されている情報は、2025年05月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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