給与未払いを弁護士に相談|依頼手順とメリット、費用を徹底解説

給与未払いを弁護士に相談|依頼手順とメリット、費用を徹底解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

給与未払いは懲役や罰金の対象となる労働基準法違反です。

給与未払いが起きたときは事業所を管轄する労働基準監督署に相談できるほか、弁護士に依頼すれば民事上の問題として解決することも可能です。

本記事では、弁護士に依頼した場合の相談から解決までの流れや、給与未払い問題を弁護士に相談するメリットを紹介します。

1. 給与未払いを弁護士に相談した場合|解決までの流れと時間

弁護士に給与未払いの問題を相談した場合、どのような流れで相談から解決にいたるのでしょうか?

また、問題が解決するまでに、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

以下で解説します。

(1)弁護士への相談から問題解決までの流れ

給与未払いの問題解決を弁護士に依頼した場合、解決までのフローは以下のようなものとなります。

給与未払いの弁護士相談から解決までの流れ

各項目をくわしく解説します。

①給与未払いについて弁護士に相談する

弁護士に給与未払いの問題を相談する際は、無料相談を実施している弁護士事務所もありますが、無料だからといって安易に選ぶのではなく、対応の質や労働問題の実績、説明の丁寧さなどを重視すべきです。
給与未払い問題は、事案の複雑さや証拠の有無に応じて対応方針が変わるため、費用だけで判断すると、かえって納得のいかない結果になる可能性もあります。
そのため、信頼できる事務所かどうか、事前によく情報を集めて相談先を選ぶことが重要です。

②未払い給与の請求に関する委任契約を締結する

弁護士から、給与未払いの問題を案件として受任できる回答を得られれば、正式に委任契約書(委任状)を締結することになります。

委任契約書は、依頼者が準備する必要はありません。多くの場合、弁護士事務所側が提示してくるため、内容を確認して納得できれば署名押印しましょう。

③会社と交渉する

委任契約締結後は、給与未払いの問題を起こした会社(相手方)と交渉することになります。
交渉は、請求事項を記載した内容文書を相手方に内容証明郵便で送ることから始まります。

内容証明郵便は自分名義で送っても取り合ってもらえないケースが大半ですが、弁護士名義であれば応じてくれる可能性が高まります。

④交渉で和解に至れば、和解書を作成して未払い分を支払ってもらう

弁護士と会社の交渉で解決できた場合は、和解書を作成して未払い給与の支払いを受けます。

和解書は、協議によって和解が成立したタイミングで作成する、民法695条(和解)に基づく契約文書の一種です(「互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめる」)。

双方が和解書に合意した場合、会社側はその記載内容に従って、未払い給与の支払いや、その他必要な対応を行う必要があります。

ただし、和解書は私文書のため強制執行力がない点には注意が必要です。

⑤裁判を起こす

交渉で和解にいたらなければ、裁判上の手続きで解決を図ることになります。

給与未払いの解決に有効な裁判上の手続きには、以下のようなものがあります。

  1. 支払督促

  2. 少額訴訟

  3. 民事調停

  4. 労働審判

  5. 民事訴訟

[1]支払督促

申立人の申し立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度です。相手方からの異議の申し立てがなければ、判決と同様の法的効力が生じます。

[2]少額訴訟

特別な訴訟手続きで、1回の期日で審理を終えて判決することを原則とします。60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り、利用できます。

[3]民事調停

裁判所が当事者の間に入って話し合いを進め、問題の解決を図る手続きです。以下のようなメリットがあります。

  • 手続きが簡易
  • 費用が安い
  • 判決と同じ効果を得られる
[4]労働審判

迅速な解決が期待できる労使間トラブルの解決に特化した紛争解決制度です。原則として3回以内の期日で審理を終えることになっています。

[5] 民事訴訟

法廷で紛争の解決を図る手続きです。裁判官が双方の言い分を聞き、証拠を調べることで判決をくだします。

140万円以下の事件については簡易裁判所、140万円を超える事件については地方裁判所で取り扱われます。

(2)【ケース別】給与未払い問題の解決までにかかる時間

給与未払い問題の解決までにかかる時間は会社との交渉で和解できた場合、早ければ1か月程度、遅くとも3か月以内に解決できることもあります。

和解交渉の決裂によって法的手続きに移る場合は以下の目安で期間が必要となります。

  • 支払督促:1か月
  • 少額訴訟:1〜3か月
  • 民事調停:3か月
  • 労働審判:2〜3か月
  • 民事訴訟:1年

ただし、支払督促は異議申し立てがあると通常訴訟に移行するほか、民事訴訟は複雑な事案や控訴された場合に長期化する場合もあります。

2. 給与未払い問題を弁護士に相談するメリット

本章では、給与未払い問題を弁護士に相談するメリットをみていきましょう。

(1)未払い給与を正確に計算してもらえる

労働問題にくわしい弁護士であれば、未払い給与や残業代を正確に計算してくれます。
また、未払い給与に対して発生する遅延損害金も計算してくれるでしょう。

遅延損害金は、本来支払われるべき日の翌日から発生するもので、利息に相当します(在職中は年3%、退職後は年14.6%)

(2)未払い金を回収できる可能性が高い

弁護士に対応を依頼すると、未払い金を回収できる可能性が高まります。
法的知識に基づいて適切な方法で回収にあたってくれるだけでなく、弁護士の介入自体が相手方(会社)にとって大きなプレッシャーとなるためです。

一方、自分で会社と交渉する場合は、交渉を先延ばしされたり、極端なケースは経営者に逃げられたりすることもあります。

(3)証拠がない場合は開示請求が可能

給与未払いの証拠がない場合は、証拠保全や文書提出命令といった強制的な開示手続きを請求できます。認められれば、給与未払いの証拠を入手できるでしょう。

証拠保全や文書提出命令は依頼者本人でも請求可能ですが、弁護士に依頼すれば明確な法的根拠をもとに請求書類を作成してくれます。

3. 未払い給与の請求でかかる弁護士費用は?

ここからは、未払い給与の請求でかかる弁護士費用について解説します。

(1)弁護士費用の内訳

未払い給与の請求にかかる費用の内訳と相場は、次のとおりです。

費目 相場
法律相談 30分5000円程度
着手金 10〜20万円
成功報酬 回収額の20%程度
訴訟・労働審判 着手金が別途30万円程度
実費・手数料 交渉のみ:1万円程度
労働審判:3万円前後
訴訟:5万円前後

給与未払いの問題は、経営不振など企業側の問題によって起こる傾向があります。
従業員ひとりだけの問題となるケースは少ないといえるでしょう。

民事訴訟で企業に未払い金を請求する際は、複数の従業員で集団訴訟を起こすことになることを念頭に置いておきましょう。

また残業代の不払いについても、複数の従業員に対して常習的に行っている場合が多いとされています。そのため、実際に未払い残業代を請求する際は、給与未払いと同様に、集団訴訟を提起するのが一般的です。

(2)弁護士費用を抑える方法

弁護士費用を抑えるうえでは、各都道府県に設置されている「法テラス」を活用するのが有効です。法テラスを通じて弁護士相談を申し込むと、収入と資産が一定基準以下であれば、相談料が無料となります。

企業が倒産した場合は、そもそも弁護士に頼らず、労働基準監督署と独立行政法人労働者健康安全機構が実施する「未払賃金立替払制度」を活用するという手段もあります。同制度を活用すれば、国が未払賃金の8割を立て替えて支払ってくれます。

そのほかにも、着手金が発生しない完全成功報酬型の料金体系を採用している弁護士事務所もありますが、そうではない弁護士事務所と比べて解決時の成功報酬が高めであることが多いので注意しましょう。

4. 未払い給与の請求について弁護士に相談する際のポイントと、弁護士の選び方

本章では、未払い給与の請求について、弁護士に相談する際のポイントと、弁護士の選び方を解説します。

(1)弁護士に相談する際のポイント

未払い給与の請求について弁護士に相談する際は、会社の情報や自分の勤務履歴だけでなく、給与が未払いになった経緯について時系列でまとめておきましょう。
経緯を時系列にまとめた文書を初回相談の前に弁護士事務所へ提出しておけば、実際の相談が円滑に進みます。

また、相談の段階でも、給与未払いに関する証拠を集めておくことは欠かせません。勤怠履歴や雇用契約書、給与振込先の口座通帳、業務日報などのデータがあれば、準備しておきましょう。
退職後で証拠を集められない、会社が資料を意図的に提供してくれなかったなど、証拠集めが難しい場合には、相談時にその旨を伝えるとよいでしょう。

(2)弁護士の選び方

弁護士を選ぶ際は次に紹介する2つのポイントを押さえておきましょう。

①給与未払いをはじめとする労働問題の取り扱い経験が豊富か

弁護士を選ぶ際は、給与未払いをはじめとする労働問題の取り扱い実績をチェックしましょう。
給与未払いの問題は依頼者によって証拠の保有状況や未払い金額が異なります。知識や経験が豊富な弁護士でないと解決が難しいでしょう。

労働問題にくわしい弁護士事務所であれば、ホームページに実績が掲載されている場合が多いので、検討材料にしましょう。

弁護士事務所のホームページを閲覧しても、どの弁護士事務所を選べばよいかわからない場合は、都道府県ごとに設置される弁護士会に紹介してもらうとよいでしょう。

当サイト「弁護士JP」の条件検索からでも労働問題にくわしい弁護士を探すことができるので、ぜひ活用してみてください。

②親身になってくれる弁護士か

相談後は、その弁護士が依頼者の悩みやトラブルに耳を傾け、親身に寄り添って相談に乗ってくれるかを吟味しましょう。

弁護士のなかには、着手金や成功報酬の少ない個人相手の案件を軽んじる弁護士も少なくありません。そうした実情を踏まえ、相談した弁護士が誠意を持って対応してくれるか見極めましょう。

③レスポンスが早いか

弁護士を見極めるうえでは、弁護士のレスポンスの速度も重要です。

たとえば、よい弁護士はレスポンスも早く、質問や相談に対して迅速に返答してくれます。逆に返信が遅い弁護士はこちらの話をあまり聞いてくれない傾向にあるため、避けた方が賢明です。

5. 給与未払い請求は弁護士に相談するのがおすすめ

給与未払いの問題が起きたら、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に対応を一任すれば、未払い金を回収できる可能性が高いほか、遅延損害金も請求できます。法的な開示手続きの請求が裁判所に認められやすいといったメリットも享受できるでしょう。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2025年05月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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