
未払い給与の請求を弁護士へ相談すべき6つの理由|手順や費用など
会社から支払われるべき給与が未払いのままだと、自身の生活に深刻な影響を与えかねません。しかし、会社に未払い給与を請求するためには、専門知識や証拠の収集が必要となる場合が多く、個人での対応には限界があります。そこで頼りになるのが弁護士です。
本コラムでは、未払い給与請求を弁護士に相談すべき理由や、相談後の手順、依頼にかかる費用などについて詳しく解説します。
1. 未払い給与の請求を弁護士に相談すべき6つの理由
未払い給与が発生した場合、弁護士に相談することで得られるメリットが多くあります。以下では、代表的なメリットを6つ説明します。
(1)迅速な対応や確実な請求を期待できる
賃金請求権(=残業代などの賃金を受け取る権利)の消滅時効期間は、3年間と定められています(労働基準法第115条、第143条第3項)。3年経過後、会社側が債権は時効によって消滅したという意思表示をすることで、消滅時効が完成します。(民法第145条)。
よって、消滅時効期間を過ぎると、会社に対して未払い給与の請求ができなくなってしまいます。自身で会社と直接交渉すると、話し合いや交渉がうまくいかず長引き、うっかり消滅時効を経過してしまうおそれもあるでしょう。
時効の成立を防ぐためには、内容証明郵便を送付して時効の完成を猶予(民法第150条第1項)したり、さらに訴訟を提起するなどして時効を更新(民法第147条)する必要があります。弁護士は、時効に関する知見を生かし、消滅時効が完成しないよう迅速に対応してくれます。
また、会社がまともに取り合ってくれない場合でも、弁護士であれば交渉に応じてくれる可能性が高く、より確実な請求を期待できるでしょう。
(2)未払い給与の計算を正確に行える
会社に対して、未払い給与を請求するには、まず未払いとなっている給与を計算する必要があります。その際、就業規則や給与明細などの資料が必要です。
弁護士は給与や残業代の算定実績があることが多いので、請求漏れが発生しないように適切に未払い給与を計算することができます。そのため、しっかりと適切額で回収できる可能性が大幅に高まります。
(3)証拠がなくても開示請求できる
賃金台帳やタイムカード、勤怠記録などの証拠は多くの場合、会社が保有しています。労働者が証拠の開示を求めても、会社側が応じないケースも少なくありません。
弁護士に依頼すれば、証拠保全や文書提出命令といった手続きを通じて、強制的に証拠を開示させることが可能となります。
(4)遅延損害金も併せて請求できる
未払い給与が発生した場合、遅延した日数に応じた遅延損害金(=賃金の支払いが遅れたことへの損害賠償金)を請求することができます。遅延損害金の利率は、在職中は年3%、退職後は年14.6%です(民法第404条第2項、賃金の支払いの確保等に関する法律第6条第1項)。
自分で遅延損害金の計算や回収を行うことは難しい場合が多いですが、弁護士に依頼すれば、遅延損害金を正確に計算し、全額回収を目指せます。
(5)裁判になっても手続きを一任できる
交渉が決裂して裁判に発展した場合でも、弁護士に依頼すれば全ての手続きを一任できます。法廷での主張や証拠の提出、判決後の強制執行手続きまで対応してもらえるため、精神的・時間的負担を軽減できます。
(6)状況に応じた最適な解決策を提案してもらえる
未払い給与の請求をするための方法としては、交渉による和解、労働審判、裁判などがあります。弁護士に相談することで、状況に応じて最適な方法を提案してもらえます。
2. 弁護士へ依頼した場合の請求の手順・流れ
弁護士に未払い給与の請求を依頼した場合、以下のような流れで進行します。
①相談・依頼
まず、電話やメールで現在の状況などを伝え、面談日時を決定します。事務所へ来訪のほか、電話面談やオンライン面談に対応している法律事務所もあります。
面談では、弁護士から今後の流れや費用感についての説明を受けます。納得できるようであれば、正式に依頼することになります。
②証拠収集・金額の計算
給与明細やタイムカードなどの証拠があれば、証拠を基に未払い賃金の金額を正確に算出します。証拠が不足している場合は弁護士が会社に開示請求を行い、必要な情報を入手します。
③会社への請求・交渉
弁護士が会社に対して未払い給与の請求書を送付します。その後、会社と直接交渉を行い、支払額や支払い条件を協議します。
④和解または労働審判・裁判
会社と交渉の結果、和解に至れば、和解した内容に基づき未払い給与の支払いが行われることになります。
和解に至らない場合は、労働審判や訴訟手続きに移行し、第三者による紛争解決を求めます。
3. 弁護士へ依頼する場合にかかる費用は?
弁護士に未払い給与の請求を依頼する場合、以下の費用が発生します。
(1)相談料
相談料は、30分あたり5000円〜1万円程度が相場です。
もっとも、初回相談を無料とする事務所も多いです。弁護士との相性を確認してから正式に依頼したい場合、まずは無料相談を実施している事務所を探してみましょう。
(2)着手金・成功報酬
弁護士に正式に依頼すると、「着手金」が発生します。10万円〜20万円程度が相場ですが、着手金を無料としている事務所もあります。
また、実際に未払い給与の回収ができた場合には、「成功報酬」が発生します。回収額の10%〜20%が相場です。
(3)その他の費用
その他、以下の費用が別途発生する場合があります。
- 実費(交渉、労働審判、訴訟対応に要した費用など)
- 日当、タイムチャージ(時間単位の料金)
- その他手数料
(4)完全成功報酬型の場合もある
「完全成功報酬型」とは、着手金が不要で、回収に成功した場合のみ報酬を支払う契約形態です。
初期費用をできるだけ抑えたい場合に適していますが、報酬率が高めに設定されることがあるため、料金体系は事前にしっかりと確認しておきましょう。
4. 未払い給与の請求をする際に知っておくべきこと
会社に未払い給与を適切に請求するにあたって、知っておくべきポイントがいくつかあります。
(1)未払い賃金は違法
会社の経営悪化を理由とした給料未払いや、従業員の勤務態度を原因とする給料の差し引きは、労働基準法に違反する違法行為です。給与は労働に対する正当な対価であり、未払いのまま放置することは許されません。
労働者の当然の権利として、未払い給料分は会社に請求すべきでしょう。
(2)会社が倒産しても「未払賃金立替払制度」利用できる可能性がある
勤務先が倒産してしまった場合でも、「未払賃金立替払制度」を利用することで、未払いとなっている給与や退職金の8割相当の金額を受け取れる可能性があります。
未払賃金立替払制度は、全国の労働基準監督署や独立行政法人労働者健康安全機構が実施する制度です。申請のためには、必要書類の提出や労働基準監督署などでの手続きが求められるため、事前に制度の概要をしっかりと確認しておきましょう。
(3)証拠がなくて悩んでいる方も、まずは弁護士へ相談を
上記のとおり、給与未払いを証明する証拠が手元にない場合でも、弁護士に相談して強制力のある手続きを利用することで、会社側から必要な資料を開示させることができます。
したがって、証拠がそろわなくても、早めに専門家へ相談することで解決の可能性が大幅に高まります。給与未払いを放置せず、弁護士の力を借りることで、早期解決を目指しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年03月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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