
退職で揉めたくない? 弁護士相談が必要なケースと費用を解説
退職をしたいとき、退職願にパソコンで入力して提出するだけでは円満に退職できないケースもあります。
また、退職時、自分から会社に言うと揉めそうで怖い、言い出しづらいといった理由から「退職代行」を検討される方も少なくありません。民間の退職代行サービスを利用する方法もありますが、なかには、弁護士に依頼したほうが、退職が円滑に進むケースもあります。
では弁護士に依頼すべきなのは、どのようなケースなのでしょうか?
本コラムでは、退職時に弁護士に依頼すべきケースや依頼するメリットを解説していきます。
1. 退職にまつわるトラブルとは?
退職時、どのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。
(1)退職時に起こりやすいトラブルの種類
退職の際、労働者が直面する代表的な問題には、たとえば以下のようなものがあります。
このようなトラブルを避け、会社と円満に退職するためには、以下の注意点を守ることが大切です。
- ①退職の意思を伝えるタイミングに注意する
- ②就業規則を確認する
- ③引き継ぎをしっかり行う
①退職の意思を伝えるタイミングに注意する
円満退職のためには、退職の意思を伝えるタイミングが大切になります。無期雇用契約である正社員の場合、一般的には退職の2週間前までに退職の意思を伝えることで退職することが可能です。
ただし、円満に退職するためには会社の繁忙期は避けるといった会社への配慮も重要なため、伝えるタイミングには十分注意しましょう。
②就業規則を確認する
上記のとおり、基本的には退職したい日の2週間前までに退職の意思を伝えれば退職はできますが、なかには就業規則で退職の意思を伝えるタイミングを2週間よりも前に規定している会社もあります。
たとえば就業規則に「1ヶ月前までに退職の申し入れをすること」といった規定がある場合であっても、退職意思を伝えてから2週間で退職できますが、トラブル防止のためには1ヶ月前までに退職の意思を伝えておくほうが良いでしょう。
③引き継ぎをしっかり行う
「引き継ぎをしっかり行う」というのも大切なポイントになります。後任者が困らないようにしっかりと引き継ぎを行いましょう。
引き継ぎをしっかり行わないなど、退職がスムーズに円満に進まなかった結果取引先から契約解除されて会社に損害が出てしまった場合、会社から損害賠償請求をされるケースもあるためできる限り円満に退職することが重要です。
(2)トラブルが起こった時に弁護士に相談すべきか?
退職時のトラブルを放置すると、前述のとおり損害賠償を請求されるリスクがあるほか、「離職票や雇用保険被保険者証を発行してもらえない」といったリスクもあります。
「離職票」は離職したことを証明する公的文書のことで、失業給付申請時に必要な書類です。「雇用保険被保険者証」は再就職先に提出しなければならない書類で、どちらも基本的には退職の際に会社から渡されますが、退職時のトラブルから会社に出してもらえないケースもあります。
それを防ぐためにも、早期に弁護士に相談することが大切です。早い段階で弁護士に相談が、退職時のトラブルへの解決が期待できるポイントになります。
2. 弁護士に相談が必要な退職トラブルのケース
弁護士に相談が必要な退職トラブルの具体的なケースをみていきましょう。
(1)弁護士に相談が必要な具体的事例
弁護士に相談が必要な具体的事例は以下のとおりです。
- 不当解雇
- 退職金や残業代の未払い
- パワハラやセクハラによる自主退職
- 退職後の転職先に影響が及ぶケース
- 在職強要
このような事例ではご自身での解決は難しく、弁護士に相談する必要があるでしょう。
(2)退職時に弁護士を早期に相談すべき理由
退職時に弁護士に早期に相談することで、退職トラブルがこじれる前に法的なアドバイスを得られます。
また、事前に弁護士に相談することで退職をスムーズに進められるのです。
3. 退職トラブルにおける弁護士に依頼するメリット
退職トラブルの解決に弁護士が役立つ理由、法的トラブルの解決までの流れを詳しくみていきましょう。
(1)退職時の問題解決に弁護士が役立つ理由
弁護士は、「退職代行」といって会社に連絡をとり退職に関する交渉や書類作成を代行することができます。
退職代行というと、退職代行サービスを提供する「非弁退職代行業者」を思い浮かべられる方も少なくないかもしれません。しかし、退職代行サービスに関して、弁護士にしか許されていない業務が多々あります。
非弁退職代行業者ができる業務はあくまで「退職意思を会社に伝えること」のみであることに対し、弁護士には以下の業務が許されています。
- 退職条件の交渉
- 未払いの残業代の請求
- 労働審判や訴訟の対応
このように、弁護士に依頼すれば退職意思を会社に伝えてもらえるだけではなく、会社との交渉などを任せることもできるのです。
また、弁護士が入ることで会社側が柔軟な対応を取る可能性が高くなるというメリットもあります。
さらに、和解や調停での問題解決が期待できるため、訴訟に発展する前に早期解決できる可能性も高いのです。
(2)退職に関する法的トラブル解決の流れ
退職トラブルが交渉段階で解決できず法的手続きが必要になった場合、以下の流れでトラブルを解決していきます。
- ①労働審判
- ②訴訟
①労働審判
会社との交渉が決裂した場合、労働審判手続きを行いましょう。労働審判では、労働審判員と裁判官で構成される労働審判委員会の仲介のもと、まずは「調停」でトラブルの解決を目指します。調停が成立、あるいは「和解」が成立した場合はそこで労働審判終了です。
不成立の場合は、労働審判委員会によってトラブルに関する審判が下されます。しかし、その下された審判に不服がある場合は、次に解説する「訴訟」の手続きに移行するのです。
②訴訟
訴訟手続きに移行すると、当事者の主張や提出された証拠をもとに、裁判官によってトラブルへの判決が下されます。
弁護士に依頼すると、こういった法的解決の際に審判や訴訟といった裁判手続きや準備(答弁書の精査や証拠の準備など)を任せることもできるのです。
4. 退職問題での弁護士費用
退職問題における弁護士費用はどのくらいかかるのかみていきましょう。
(1)弁護士費用の目安と料金体系
弁護士に依頼すると、おもに以下の費用がかかります。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 実費
- 日当
「相談料」とは法律相談時に支払う費用、「着手金」は弁護士に依頼するときに支払う費用、「成功報酬」は弁護士へ依頼した案件の成功の程度に応じて支払う費用です。
「実費」は交通費・郵送料などの費用、「日当」は弁護士が裁判に出た場合や出張した場合などに発生する費用を指します。
相談料の相場は30分5,000円ほどです。ただし、退職に関する初回の法律相談は無料にしている法律事務所もあります。
また、弁護士に依頼した場合の着手金の相場は無料や55,000円程度、成功報酬の相場は回収した費用(退職金や未払い残業代など)の20〜30%です。
退職トラブルに対する弁護士依頼の費用対効果は、退職金や未払い残業代などを回収できるほど高くなるでしょう。
(2)費用を抑える方法
退職代行にかかる費用を抑えるためには、「法テラス」や「弁護士費用保険の利用」をご検討ください。
日本司法支援センター通称「法テラス」では、経済的余裕がない方に一定の条件下で無料相談や弁護士費用の立て替えを行ってもらえます。
「弁護士費用保険」は、掛金を毎月支払うことで、法的トラブル発生時に弁護士費用を補償してくれる保険です。
このような制度・保険を利用することで退職トラブル解決にかかる費用を抑えることもできるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年02月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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