
- (更新:2025年02月20日)
- 労働問題
不当解雇の相談先は? 労働基準監督署と弁護士での違いや費用を解説
会社から不当に解雇にされてしまった場合、不当解雇に関する相談機関・専門家へ相談するのがよいでしょう。
相談先には労働基準監督署や弁護士などが挙げられますが、それぞれメリット・デメリットが存在します。また費用面が心配な方も多いでしょう。
本コラムでは、不当解雇の相談先の特徴や費用のほか、不当解雇を争う方法について解説します。
1. 不当解雇の相談先の種類
不当解雇の問題に直面した場合、以下の機関や専門家に相談できます。
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労働基準監督署(総合労働相談コーナー)
労働関係法令の有無がないか調査する、厚生労働省の出先機関
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労働組合
労働条件の維持や改善を目的とする団体(企業内に設立されている組合もあれば、企業の枠を超えて個人で加入できる合同労働組合もある)
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労働局
各都道府県に設置されている、労働基準監督署を指揮監督する機関
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弁護士
法律の専門家
2. 相談先別の特徴やメリット・デメリット
各相談先の役割や、相談できる内容は異なります。メリット・デメリットも存在しますので、特徴を踏まえたうえで、最適な相談先に相談するのがよいでしょう。
(1) 労働基準監督署での相談
役割 | 労働関係法令の違反があった場合に、該当する会社へ指導や勧告などを行う。 |
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相談できる内容 | 労働基準法などの労働関係法令違反。 |
相談の流れ | 1.最寄りの労働基準監督署に相談に行く。窓口相談の場合、相談可能時間は平日午前9時から午後5時(各署により異なる場合あり)。 ※相談の際は、証拠となる資料を持参するのが好ましい。 2.職員からアドバイスを受ける。 3.必要に応じて、会社に対して立ち入り調査・是正勧告を実施。 |
メリット | ・専門の相談員が問題の解決方法の提案や相談に乗ってくれる。 ・相談内容からして法令違反が明確な場合には、会社に対して是正勧告が出されることもある。 |
デメリット | 労働関係法令以外の法令違反や民事トラブルには介入しないので、労働者の解雇の有効性・取り消しの是正について対応はしてくれない場合が多い。 |
相談費用 | 無料 |
(2) 労働組合での相談
役割 | 団体交渉や争議行為を行う。 |
---|---|
相談できる内容 | 労働者の労働条件の維持や改善。 |
相談の流れ | 1.電話・メール・Webサイトより面談を予約する。 2.最寄りの労働組合の事務所へ訪問する。 3.面談を実施。解決方法や今後の対応について助言を受ける。 ※相談の流れは、労働組合により異なる。 |
メリット | ・憲法28条で保障された「団体交渉権」や「争議権」を活用し、会社を交渉の場に引き出すことが可能。 ・組合は個人よりも強い力で会社に対抗できるため、労働者の権利を効果的に守るサポートを受けられる。 |
デメリット | ・対応スピードは労働組合ごとに異なるため、迅速に対応してもらえるとは限らない。 ・不当解雇の問題が団体交渉で必ずしも解決できるとは限らない。 |
相談費用 | ・基本的には無料。 ・組合費や加入費がかかる場合あり。 |
(3) 労働局での相談
役割 | 労働問題に関する助言や助言、紛争調整委員会によるあっせん制度の案内。 |
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相談できる内容 | 労働関係法令違反のほか、労働トラブルも相談可能。 |
相談の流れ | 1.最寄りの労働局へ電話または来所相談。 ※ 証拠となる資料を持参するのが好ましい 2.助言・指導制度についての説明。 3.相談者より助言・指導の申し出。 4.労働局より、助言・指導の実施。 5.解決しなければ他の紛争解決機関の説明や紹介、またはあっせんへの移行。 |
メリット | ・解決に関する助言を受けることができる。 ・場合によっては、会社への事情聴取や指導が行われ、解決が難しい場合は「あっせん」の案内がされる。 (※あっせんとは、労働問題の専門家が介入し、双方の意見を調整して紛争解決を目指す方法) |
デメリット | ・会社との問題を解決させることが目的でないので、終局的な解決に至らない場合がある。 ・あっせんには強制力がないため、企業側が応じない場合には効果がない。 |
相談費用 | ・相談費用は無料。 ・あっせんを申し立てたい場合には費用が発生する。 |
(4) 弁護士への相談
役割 | ・相談者への法的アドバイス。 ・裁判外の交渉や、裁判による訴訟。 |
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相談できる内容 | 法律問題全般。 |
相談の流れ | 法律事務所に電話またはオンラインで相談。 ※証拠となる資料を用意しておくのが好ましい |
メリット | ・法律知識をもとに、不当解雇であるかどうかを判断できる。 ・不当解雇の証明に有効な証拠や、証拠の集め方についてアドバイスをもらえる。 ・代理人として会社との交渉窓口になってくれる。 ・労働審判や裁判などの法的な手続きを一任でき、労力や手間を省くことができる。 |
デメリット | ・相談料や着手金など、費用が発生する。 |
相談費用 | ・初回相談は無料の事務所が多いが、2回目以降の相談には相談費用が発生する。 ・依頼後は、着手金や成功報酬が別途必要になることが多い。 |
3. 不当解雇を解決する方法
不当解雇を争う場合、会社に対してどのような請求ができるのでしょうか。以下、主な請求方法・内容を3つ紹介します。
(1) 解雇の取り消しを求めて争う
そもそも解雇が認められない場合や、解雇権・懲戒権の濫用になる場合、解雇の手続き要件を満たさない場合には、解雇は無効となります。
職場復帰を希望するのであれば、会社に対して解雇の取り消しを求めるのがよいでしょう。
(2) 未払いの賃金を請求する
不当解雇を受けた場合、出勤を拒まれた時点から不当解雇と認められる日までの給料が未払いになっているケースがほとんどでしょう。
本来受け取るべき賃金が支払われていないことになるので、解雇日以降の未払い賃金を請求できます。
(3) 退職一時金の支払いを請求
会社に退職一時金規程があれば、会社を退職した際に、勤続年数に応じた退職一時金が支払われます。退職一時金は、労働者が自主的に退職した場合だけでなく、会社都合による場合にも支給対象とされている場合がほとんどです。
もし解雇時に退職金が支払われていないのであれば、会社に対して退職一時金を請求できます。
4. 不当解雇で争うときに知っておくべきポイント
どんな方法で不当解雇を争うにしても、知っておくべきポイントがあります。以下、おもなポイント3点を紹介します。
(1) 就業規則を確認する
就業規則には懲戒規定が含まれており、どのような場合に会社が労働者を解雇できるかが記載されています。就業規則を確認することで、解雇が不当解雇に該当するかどうかの判断材料を得ることができます。
(2) 在職を前提として争う
退職を申し出た場合、解雇ではなく退職の有効性が問題となり、解雇として争うことが難しくなってしまいます。退職届を出すように言われても、会社の対応が不当なので絶対に辞めないという態度を貫くことが大切です。
また、退職金や離職票、解雇予告手当を要求すると、退職を前提にしていると判断されるおそれがあります。
あくまでも在職を前提にして争う姿勢を持ちましょう。
(3) 解雇通知書・解雇理由証明書を請求する
解雇された場合、解雇通知書・解雇理由証明書の交付を必ず請求しましょう。
解雇通知書・解雇理由証明書とは、解雇理由が記載された書面のことをいいます。このうち、解雇理由証明書については、労働者からの請求があった場合には会社が発行しなくてはなりません。
通知書・証明書を受け取ることで、解雇理由を確認し、不当解雇に対する対応方針を検討できます。解雇理由証明書は請求がないと交付されないため、必ず自分から請求することが重要です。
不当解雇に関するトラブルが発生した際には、労働基準監督署などの相談窓口も活用できますが、専門的な知識を有する弁護士に相談するのがおすすめです。
早い段階で弁護士に相談しておくことで、不当解雇の争い方や方針についてサポートを受けることができます。
- こちらに掲載されている情報は、2025年02月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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