会社が倒産しそう! 給料をしっかりもらうことはできる?

会社が倒産しそう! 給料をしっかりもらうことはできる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

会社の経営状況が悪化し、倒産しそうな状態になった場合に気になるのが、給料を支払ってもらえるのかという点です。

会社が倒産してしまうと資金的余力のない会社から給料の支払いを受けるのは難しくなりますが、独立行政法人労働者健康安全機構による立替払い制度を利用することで、一定額の給料を確保することは可能です。

本コラムでは、会社が倒産しそうになったときの未払い給料の問題について解説します。

1. 会社が倒産したら給料は払ってもらえる?

会社が倒産したら未払い給料を支払ってもらうことができるのでしょうか。会社に資金が残っているか否かで対応が変わってきますので、以下ではそれぞれのケースについて説明します。

(1)会社に資金が残っている場合

会社が倒産してしまった場合、破産手続きにより以下のようなお金を支払ってもらうことができます。

  • 給料

  • 賞与

  • 退職金

  • 解雇予告手当

破産手続きにおける配当は、債権ごとに決められた優先順位に基づいて行われますが、その優先順位は「財団債権>優先的破産債権>一般の破産債権>劣後的破産債権」という順で決められています。給料などの債権は、発生時期に応じて、以下のように債権の種類が定められています。

  • 破産手続開始決定前3か月以内の未払い給料など……財団債権
  • 破産手続開始決定前3か月よりも前の未払い給料など……優先的破産債権

このように債権の発生時期に応じて優先度は異なりますが、一般的な債権よりも優先的に支払いを受けられるという特徴があります。

(2)会社に資金が残っていない場合

会社に十分な資金が残っていれば、破産手続きにおける配当で未払い給料の支払いを受けることができます。

しかし、倒産をするような会社では、十分な資金が残っていないケースの方が圧倒的に多いです。

そのような場合には、会社から未払い給料の支払いを受けることは難しいですが、独立行政法人労働者健康安全機構による未払い賃金の立替払い制度を利用することで、未払い給料の最大80%を支払ってもらえる可能性があります。

未払賃金立替払制度とは、会社の倒産により給料が未払いのまま退職した労働者に対して、国が未払い賃金の一部を立替払いする制度です。

未払賃金立替払制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

【会社側の条件】

  • 1年以上事業活動を行っていた
  • 法律上の倒産(破産、特別清算、会社整理、民事再生、会社更生)または事実上の倒産(労働基準監督署長が倒産を認定)をした

【労働者側の条件】

  • 法律上または事実上の倒産の日から6か月前から2年の間に退職した

ただし、未払賃金立替払制度を利用する際は、以下の点に注意が必要です。

・立替払の対象となるのは、基本給、家族手当などの定期賃金と退職金であり、賞与や解雇予告手当は対象とならない

・立替払いされる額には以下の上限がある

30歳未満 88万円まで
30歳以上~45歳未満 176万円まで
45歳以上 296万円まで

・法律上または事実上の倒産の日の翌日から起算して2年以内に請求しなければならない

2. 会社が倒産する前にできることは?

未払い給料の支払いを受けるためには、会社が倒産する前からしっかりと対策を講じておくことが大切です。以下では、会社が倒産する前にできる対策について説明します。

(1)団体交渉などを通じて資産を確保させる

会社の倒産前に給料を確保する方法としては、団体交渉により会社に対して給料の支払いを求めていく方法があります。会社に対して個別で交渉しても、影響が小さいため労働者がまとまって行動することが重要です。労働組合があるなら、労働組合による団体交渉を利用して、財産の散逸を防ぐとよいでしょう。

なお、その際に未払い賃金の存在を証する証明書を作成してもらえば、後述する先取特権の実行により優先的に返済を受けることも可能になります。

(2)裁判所に対して会社財産の仮差押え手続きをする

仮差押えとは、債権者が債務者の財産を仮に差押えることにより、債務者が勝手に財産を処分できないようにする手続きです。

未払い賃金の支払いを求める裁判を起こすと、結論が出るまでに1年以上の期間がかかることもあります。その間に会社が財産を処分してしまうと、裁判に勝っても支払いを受けることができなくなってしまいます。そこで、そのような事態を回避するために利用されるのが仮差押えの手続きです。

ただし、仮差押えは、あくまでも「仮の」手段になりますので、実際に会社財産から支払いを受けるためには、債務名義(確定判決など)を取得して、強制執行の申立てをする必要があります。また、担保金を積む必要があります。

(3)先取特権の実行

未払い給料があり、その存在を証する証明書がある場合には、先取特権を実行することで、迅速に未払い給料の支払いを受けることができます。

この方法であれば債務名義は不要で、担保金も必要ありませんので、上記のような団体交渉と組み合わせて利用してみるとよいでしょう。

3. 弁護士に相談するメリットとは

会社が倒産しそうな場合には、以下のようなメリットがありますのですぐに弁護士に相談することをおすすめします。

(1)今後の対策についてアドバイスしてもらえる

会社が倒産しそうな状況になったとしても、早期に適切な対応をとることで、未払い給料を回収できる可能性が高くなります。

労働者がとるべき対策は、会社の状況や給料の額によっても異なりますので、最適な対策を講じるためには、専門家である弁護士のアドバイスが必要です。早期に相談することで、労働者ができる対策の幅も広がりますので、会社が倒産してしまう前に早めに相談するようにしましょう。

(2)労働者の代理人として会社と交渉できる

適切な対策がわかったとしても労働者個人では、会社側が誠実に対応してくれない可能性もあります。そのような場合には弁護士への依頼がおすすめです。

弁護士に依頼をすれば、弁護士が労働者の代理人となって会社と交渉することができます。

弁護士が対応することによって、会社も誠実に対応せざるを得ない状況になりますので、任意の交渉で未払い給料の支払いに応じてくれる可能性が高くなります。

また、仮差押え、裁判、強制執行などの法的手続きが必要な事案でも弁護士が引き続き対応してくれますので、安心して任せることができます。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年08月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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