- (更新:2023年12月05日)
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ネットの書き込みが原因で経営が悪化! 加害者に損害賠償を請求できる?
多くの消費者が商品・サービスの購入にあたってインターネット上の情報を参考としている現状にかんがみると、悪質な書き込みは一時の売り上げ低下を招くにとどまらず、経営そのものを悪化させる要因ともなります。
ネット上の書き込みによって経営に悪影響が生じた場合は、書き込みの当事者に対して責任を追及したいと考えるでしょう。
そこで、本コラムでは、損害賠償請求の可否や請求方法などを解説します。
1. 損害賠償請求とは?
一般的に、他人の行為によって何らかの損害が発生した場合は「損害賠償」を請求できると考えている方が多いでしょう。
そもそも、損害賠償請求とはどのような行為を指すのか、法律に基づいて確認していきましょう。
(1)損害賠償を請求できる条件
損害が発生しても、無条件に相手に賠償を請求できるわけではありません。他人に損害賠償を請求できるのは、相手に「債務不履行」または「不法行為」があった場合です。
債務不履行とは、民法第415条1項を根拠に、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、または債務の履行が不能であるときを指します。
たとえば、約束の期日までに支払いをしない、納期までに納品されないといった状況が考えられます。
不法行為とは、民法第709条を根拠に、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為を指します。
ネット上の悪質な書き込みについて損害賠償の請求が可能かについては、不法行為にあたるのかがポイントになるでしょう。
(2)損害賠償請求が可能なケース
損害賠償請求が認められるのは、ネット上の書き込みが不法行為にあたる場合です。ここで問題となるのが、たとえ会社や店の評判を下げることにつながる書き込みでも、内容次第では不法行為にはあたらないおそれがある点です。
たとえば、実際に利用したときの感想に基づいて「店員の接客態度が悪かった」「薄味で物足りなかった」といった批評の域を出ない口コミは、不法行為と認められる可能性は低いでしょう。
一方で、「あの店は客の食べ残しを再提供している」など、事実無根の書き込みをしたり、執拗(しつよう)に店主や店員の人格を攻撃する書き込みを繰り返したりする場合であれば、不法行為として損害賠償請求が認められる可能性は高まります。
(3)損害賠償を請求できる内容
損害賠償によって請求できるのは、大きく分けると積極損害・消極損害・精神的損害の3つと考えられます。
- 積極損害
怪我の治療費や壊された物の修理費用など、相手の行為によって積極的に支出が必要となった損害 - 消極損害
相手の行為がなければ得られたであろう利益 - 精神的損害
相手の行為によって被った精神的苦痛を金銭に換算したもの(=慰謝料)
ネット上の悪質な書き込みについて損害賠償を請求する場合は、主に消極損害や精神的損害の請求をすることになります。
2. 損害賠償請求の方法
ネット上の書き込みについて損害賠償請求を進める場合は、まず証拠保全が欠かせません。
どこにどのような書き込みが投稿されているのかを保存しておきましょう。該当のURLはもちろんのこと、該当ページをスクリーンショットなどで記録しておきます。また、URLを含めて紙に印刷しておくと安心です。
次に、発信者情報開示請求や発信者情報開示命令によって加害者を特定します。
掲示板サイトや口コミサイトへの書き込みは、ニックネーム・ハンドルネームを使って投稿されるのが一般的です。たとえ本名らしき氏名を名乗っていても、実際の人物と同一であるとは限りません。
そこで、書き込みが投稿された際のIPアドレスなどと、これらに紐づいた契約者情報を発信者情報開示請求や発信者情報開示命令によって開示させることで、加害者を特定します。
なお、裁判上の手続きによらず任意で開示を請求することも可能ですが、請求に応じるケースは多くはありません。そのため、裁判上の手続きを利用するのが一般的です。
加害者を特定できた場合は、損害賠償を請求します。相手が支払いを拒んだ場合や交渉に応じない場合は、裁判によってその是非を問うことになるでしょう。
監修:瀬戸 章雅(弁護士)
- こちらに掲載されている情報は、2023年12月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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