捨てアドを使われたら個人は特定できない? 法的に対応する方法

捨てアドを使われたら個人は特定できない? 法的に対応する方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

捨てアドを使って誹謗中傷や脅迫をされた場合、その発信者を特定することは難しいと考えられがちです。ところが、捨てアドでメールを送った個人を特定できる可能性はゼロではありません。

本記事では、捨てアドを使った誹謗中傷や脅迫など、違法性が高いと考えられる行為をした相手を特定する方法について解説します。

1. 捨てアドとは? その意味と種類

(1)捨てアドとは

捨てアドとは、いつも使用しているメールアドレスとは別に作成された、いつでも捨てることができるメールアドレスのことです。他人にメールアドレスを教えたくない場合や、セキュリティーに不安があるサイトにメールアドレスを登録しなければならないときなどに便利なので、所有している人も少なくないのではないでしょうか。

メールアドレスにはさまざまな種類があります。中でも、インターネットプロバイダが提供するものや、会社独自のドメインを使用したものなどは、取得時に詳細な個人情報を登録する必要があることから、信頼性の高いメールアドレスと言われています。

一方、無料かつ個人情報を詳細に登録する必要のないフリーメールは、気軽に作ったり削除したりできることから、捨てアドとして利用されることも多いようです。

(2)捨てアドの種類

前述のように、捨てアドにはフリーメールを用いたものが多く存在します。代表的なフリーメールは、以下のようなものです。

  • Gmail
  • Yahoo!メール
  • Outlookメール

これらのフリーメールでアドレスを作成する場合には、いずれも名前や生年月日などの入力が必要です。とはいえ、本人確認書類の提出は不要ですので、偽名やうその生年月日を登録しても、メールアドレスを取得することができます。

またフリーメール以外にも、捨てアドを無限に作成できるアプリやソフトも存在します。これらの中には、個人情報を一切入力せずにメールアドレスを取得できるものも珍しくはありません。

2. メールアドレスから個人を特定できないケース

たとえば「あなたはバカだ」「あなたは臭くてたまらない」「お前はうそつきで、詐欺師だ」といったメールが送られてきたら、受信者は不快で仕方がないでしょう。ところが、こういった誹謗中傷や侮辱的な言葉が投げつけられても、メールの場合は名誉毀損罪や侮辱罪には該当しないのです。

名誉毀損罪や侮辱罪は、不特定多数の人が閲覧できる場所での書き込みに適用される罪です。一対一のやりとりであるメールは、第三者が閲覧することがほぼないと考えられることから、これらの罪に該当しない可能性が高いと現状は判断されています。

また、インターネットを通した誹謗中傷の加害者を特定しやすくすることを目的に、令和3年4月、「改正プロバイダ責任制限法」が成立・公布されたことをご存じの方も多いでしょう。しかしこの法律も、改正前から変わらず、不特定多数の人が閲覧できる場所での書き込みにのみ適用され、一対一のやりとりであるメールには適用されません。

3. 刑事事件であれば特定できる可能性がある

前述のように、メールでの名誉毀損や侮辱には違法性がないと考えられる事例が多く、捨てアドの持ち主を特定することは難しいと言えるでしょう。ところが、メールの内容そのものに違法性があると判断される場合は、警察や弁護士が送信者の情報を特定できる可能性があります。

(1)メールが刑事事件化する可能性があるケース

メールの内容が以下のような事例に該当する場合は、刑事事件化する見込みがあり、捨てアドの持ち主を特定できる可能性があります。

  • 「お前や家族を殴る」といった殺人や暴力などを示唆して脅迫している場合
  • 「○○をバラされたくなければ金を払え、○○をしろ」といった恐喝罪や強要罪に該当する可能性がある内容の場合
  • ストーカー行為に該当する場合

メールの内容に違法性があるかを個人で判断することは難しいため、警察や弁護士にメールの内容を伝えて、対処可能か判断してもらうとよいでしょう。

(2)警察や弁護士による捨てアド送信者の特定方法

警察と弁護士が捨てアドの送信者を特定する方法は以下の通りです。

①警察の送信者特定方法

警察が捨てアドの送信者を特定するのは、被害届や告訴状が提出されて事件化した場合です。メールの内容から殺人や傷害などの事件が発生するおそれがあると判断した場合は、警察が捜査の一環として捨てアドの送信者の特定にあたります。警察は捨てアドの「ヘッダー情報」から送信時のIPアドレスを特定して、IPアドレスからプロバイダを特定し、プロバイダに個人情報の開示を請求します。

②弁護士の送信者特定方法

弁護士は、弁護士法で規定されている「弁護士会照会」によって、プロバイダに個人情報の開示を求めることができます。基本的な流れは警察と同じですが、弁護士であれば、被害届や告訴状が受理されていなくても手続きを行うことが可能です。

しかし、メールでのやり取りは公開されている性質のものではないため、フリーメールを提供している会社が通信の秘密を理由に弁護士会照会に応じない可能性は否定できません。

捨てアド送信者によるメールにお悩みの方で、生命や財産に危険が生じる可能性があるときは、まずは警察に相談することを強くおすすめします。そうではない場合、迷惑メールなどに振り分けて視界に入らないようにすることもひとつの手となるかもしれません。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年12月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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