特定屋とは? 利用したとき起こる可能性があるトラブル

特定屋とは? 利用したとき起こる可能性があるトラブル

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

インターネット上には、思いがけず個人情報の特定につながってしまう手がかりが散らばっています。最近では、これらの情報を駆使して個人の住所や電話番号などを割り出す「特定屋」の存在が問題視されていますが、特定屋を利用することに法的な問題はあるのでしょうか?

特定屋の問題点や利用することで起こりうるトラブルを紹介します。

1. 特定屋(特定代行屋)とは?

「特定屋」とは、第三者からの依頼を受けて個人情報を割り出す人のことです。まるで正規の業者かのように感じられるかもしれませんが、その多くはSNSなどを通じて依頼を受けている個人で、とくに資格などをもっているわけではありません。

個人情報の特定を依頼した場合の報酬は数千円から数万円程度で、正規の届け出をしている探偵業者と比べると低額であるため、気軽に依頼する人が急増しています。依頼主は学生・主婦から高齢者などさまざまで、ネット上のトラブルや金銭貸借などを背景にしているケースが多いようです。

2. 特定屋を利用することで起こりうるトラブル3つ

特定屋は正規の探偵業者などではありません。ただし、探偵業法の届け出が必要なのは尾行・張り込み・聞き込みといった「実地の調査」を手法とする場合であり、ネットを駆使して個人を特定する特定屋は規制の対象外です。つまり、特定屋自身も、特定屋に調査を依頼した利用者も、調査・利用のみでは法律には違反しないことになります。

ただし、特定屋に依頼する目的やその後の行動次第では、トラブルに発展する危険があります。

(1)ストーカーとして罰せられてしまう

元交際相手がどこに住んでいるのか知りたい、初恋の人が結婚しているか知りたいといった理由で特定屋を利用する方は少なくありません。しかし、手に入れた情報をもとに元交際相手などの周囲をうろつくようになったり、相手から拒絶されたのにしつこく連絡を繰り返したりしていると、つきまとい等にあたってストーカー行為となるおそれがあります。

警察に呼び出されて警告を受けた段階で行為をやめれば処罰は受けませんが、さらにストーカー行為が続けば禁止命令を出され、場合によっては刑罰も受けることになるでしょう。

(2)名誉毀損などの罪を犯してしまう

SNSで誹謗中傷を受けたなどの理由で相手を特定し、警察への刑事告訴や損害賠償請求の足がかりにしたいというケースでも、特定屋を利用する方が多いようです。

たしかに、個人を特定していれば刑事告訴や損害賠償請求といった手続きがスムーズになるのは間違いありません。ただし、手に入れた情報をもとに個人を名指ししてSNSで誹謗中傷すれば名誉毀損罪や侮辱罪に、相手に連絡を取って「個人情報をさらされたくなかったらお金を払え」などと脅せば恐喝罪に問われてしまいます。

たとえ相手が先に攻撃してきたのだとしても、同じように反撃すればどちらも罪に問われてしまうので、なんの解決にもなりません。

考えられる犯罪はたとえば次のとおりです。

  • 名誉毀損罪……3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金
  • 侮辱罪……拘留または科料
  • 恐喝罪……10年以下の懲役

損害賠償請求などを視野に入れて相手を特定したいのであれば、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。法に基づいた開示請求を行ってもらえるとともに、適切な対応などについてアドバイスを受けられます。

(3)プライバシー侵害で損害賠償を請求されてしまう

特定屋から入手した個人情報をインターネット上にアップすると、プライバシー侵害にあたるおそれがあります。プライバシー権は憲法に基づいて認められている権利であり、これを侵害した場合は犯罪として刑罰を受けることはないものの、相手から精神的苦痛などを理由として慰謝料の支払いを含めた損害賠償請求を受ける危険が高いでしょう。

3. Web上のトラブルが起きたときの相談先

特定屋を利用して情報を入手しただけでは、罪に問われたり、損害賠償を請求されたりすることはありません。ただし、特定屋を利用して手に入れた情報をもとに、SNSなどで個人を攻撃したり、相手の個人情報をさらしたりすると、法律に違反する危険があります。そもそも、特定屋の手法はSNSなどから得られる情報をもとに個人をたどるにすぎないため、情報の正確性は高くありません。

ウェブ上のトラブルが起きて、トラブルの相手がどこの誰なのかを特定したい場合は、裁判所の手続きを利用した発信者情報開示請求を選択するのが正規の流れです。個人での対応には手間がかかるうえに、SNS事業者やインターネットプロバイダが情報を保管している期限もあるため、弁護士に依頼して対応を任せるのが望ましいでしょう。

トラブル相手の情報を入手しても、個人で攻撃していては新たに自分が罪を犯してしまう危険もあります。どのような方法で解決を図るのかについても、弁護士に相談のうえで慎重に決めていくのが賢い選択です。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年03月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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