低評価・悪評の口コミは名誉毀損? ネガティブな口コミへの対処法とは
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低評価・悪評の口コミは名誉毀損? ネガティブな口コミへの対処法とは

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

商品やサービスの購入時に「口コミ」を参考にする方は多いでしょう。実際に商品やサービスを購入した際の忌たんない感想が投稿されてこそ、口コミの信頼性は高まり消費者にとって有益なものになります。

しかし、経営者や事業主であれば、低評価や悪評の口コミが書き込まれてしまう事態は望みません。特に、会社や店舗の評判を著しく失墜させる内容の口コミであれば、名誉毀損の責任を追及したうえで、口コミの削除や損害賠償請求をしたいと考えることもあるでしょう。

では、低評価・悪評の口コミを削除することはできるのでしょうか? 名誉毀損にあたるケースの判断基準と併せて解説します。

1. ネガティブな口コミだけを選んで削除することは可能?

会社や店舗を経営していれば、できれば高評価の口コミばかりが集まってほしいと思うものでしょう。一方で、低評価・悪評の口コミは、商品やサービスを購入しようとしている消費者の目に触れないように削除したいと考えるのは当然ともいえます。

では、低評価・悪評といったネガティブな口コミのみを削除することは可能なのでしょうか?

(1)低評価・悪評も正当な口コミにあたる

口コミとは、うわさや評判を口伝えに広めることをいいます。「コミ」はコミュニケーションをさし、「マスコミ」をもじって誕生した造語とされています。

インターネットが普及した現代においては、テレビや新聞といった報道媒体によって広がる評判ではなく、実際に商品やサービスを購入した消費者による信頼性が高い情報として重要視されています。

口コミのなかには「おいしかった」「素晴らしいサービスだった」といったポジティブな内容だけでなく、「気に入らなかった」「接客が悪かった」などのネガティブなものも含まれます。

低評価・悪評といったネガティブな口コミでも、実際に商品やサービスを購入した消費者が抱いた感想や批判・批評の域を出ない場合は、原則として正当な口コミにあたると考えられます。

そのため、たとえ客足が遠のき売り上げが減少したなどの損害を受けたとしても、消費者の感想や意見が生み出した結果である以上は、どのような媒体に書き込まれた口コミだったとしても削除請求が認められる可能性は低いでしょう。

(2)低評価・悪評の口コミへの正しい対応

低評価・悪評といったネガティブな口コミも、原則としては正当な口コミとして扱われますが、各掲示板サイトやSNSのポリシーに違反する内容であれば、運営者に対する通報によって削除請求が認められる可能性があります。

根も葉もないデマ、商品やサービスへの感想にあたらない攻撃的な発言、人格などの権利を侵害する暴言などは、ポリシー違反にあたる可能性が高いと考えられます。このような内容の口コミだった場合は、運営者が削除請求に応じなかったとしても、法的手続きを利用し強制的に削除させる方法も検討できます。

ただし、これらの対策が有効なのは、あくまでも口コミがポリシー違反や権利侵害にあたる場合です。ネガティブな口コミの投稿を見つけた場合は、まず真摯(しんし)な姿勢で返信を試みてみましょう。

厳しい口コミでも貴重な意見のひとつとして受け止め、丁寧に感謝の意思を示すことで、ほかの消費者からの好感度が高まることが期待できます。

また、ポジティブな口コミを増やすことも有効です。実際の消費者によるポジティブな口コミが増えれば、ネガティブな口コミは少数意見となります。

口コミの絶対数が増えたうえで一定数のネガティブな口コミが存在することは、口コミの信頼性を高める結果にもつながるでしょう。

2. 口コミが名誉毀損(きそん)に該当する判断基準

個人の感想や意見を超えた悪質な口コミは、名誉毀損として責任を追及できる可能性があります。口コミが、名誉毀損にあたる場合の判断基準を確認しておきましょう。

(1)名誉毀損の判断基準

公然と事実を摘示して、名誉を毀損した場合は名誉毀損が成立します。口コミがインターネット上で公開される以上は、「公然と」という点を満たすことに異論はないでしょう。

主に問題となるのは「事実の摘示」にあたり、「名誉を毀損した」といえるのかです。

事実の摘示とは、内容の真偽を問いません。虚偽の内容であっても、確認可能な具体的内容を摘示していれば事実の摘示にあたります。

ただし、「まずい」「サービス品質が低い」といった客観的な評価方法が存在しない内容であれば、個人の感想や批判の域を出ないため、事実の摘示とはいえないでしょう。

名誉の毀損とは、単に名誉心が傷つけられたという意味ではなく、社会的評価が毀損されることを意味します。実際に社会的評価が下がったという結果は不要で、社会的評価が下がる危険があれば、名誉を毀損したと評価されます。

(2)「真実性」や「公益目的」の存在も重要

ただし、「事実の摘示」と「名誉の毀損」が確認できた場合でも、必ず名誉毀損となるとはいえません。

口コミの内容が「真実」であり、さらに「公益目的」がある場合は名誉毀損が成立しないのです。そもそも口コミに限らず情報の流通が保護されるのは、より多くの人に、より多くの判断材料が渡ることが、良いことだと評価されているからです。

そして、その情報が真実であることは、当たり前の大前提です。公益な目的とは、不正や不祥事など、広く一般にも知らせた方が良いという正当な目的を言い、これも真実であることは大前提です。

基本的には、真実は保護され、虚偽や根拠がないものは保護に値しないという方向で評価を受けるものですが、客観的に真実であることが確認できる場合でも、たとえばライバル企業の評判をおとしめるためといった目的があれば公益目的とはいえず、名誉毀損としての責任を追及できる可能性はあります。

低評価・悪評にあたる口コミに公益目的があるのかどうかは、投稿された口コミの内容のみで判断できるものではありません。口コミの投稿者を特定し、投稿された内容や目的を法律の解釈に沿って正確に判断する必要があるといえるでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年02月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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