誹謗中傷で逮捕されるのはどこから? 警察への相談前に必要な準備
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誹謗中傷で逮捕されるのはどこから? 警察への相談前に必要な準備

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

ネット上での誹謗中傷が大きな社会問題となっているなかで、他者を誹謗中傷した容疑で逮捕される事例も大きく注目されています。大々的に報道されれば「誹謗中傷=逮捕」といった流れに期待する被害者の方が増えるのも当然ですが、必ず加害者が逮捕されるとは限りません。

誹謗中傷が罪となり逮捕される基準や、警察に届け出をするときに必要な準備を解説します。

1. 誹謗中傷が罪となり逮捕される基準

誹謗中傷とは、悪口を言いふらすことで他人を傷つける行為をいいます。

根も葉もない内容のデマをネット上で公開する行為は誹謗中傷にあたるものと考えられますが、すべての誹謗中傷が犯罪となって逮捕されるわけではありません。

まずは誹謗中傷がどのような犯罪にあたり、どのようなケースで逮捕されるのかを確認しましょう。

(1)誹謗中傷は名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪にあたる

誹謗中傷を罰するのは、刑法第230条1項の「名誉毀損罪」と同法第231条の「侮辱罪」が中心となります。

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して他人の社会的評価をおとしめる行為を罰する犯罪です。「◯◯は刑務所に収監されたことがある犯罪者だ」「彼は同僚と不倫をしている」などの事実はその人の社会的なイメージを下げる内容ですので、このような事実を不特定多数に発信する行為は名誉毀損にあたるでしょう。

不特定多数に発信する内容が真実でなくても事実を適示している以上、名誉毀損罪に問われます。たとえば、殺人の事実がない場合であっても「子どもを殺した」などの事実を適示すれば、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

侮辱罪は、事実の摘示なしで公然と人を侮辱する行為を罰する犯罪です。

「あいつはバカだ」「あの店の食事はまずい」といった、客観的な評価方法がなく、他人の人格を蔑視するような表現は侮辱罪にあたります。

(2)逮捕には「逃亡・証拠隠滅のおそれ」が必要

誹謗中傷が名誉毀損罪や侮辱罪にあたる場合は、警察の捜査を経たうえで逮捕されることがあります。逮捕された被疑者は身柄を拘束され、捜査機関の管理下において取り調べを受けることになります。

ただし、罪を犯せば必ず逮捕されるわけではありません。警察捜査の基本を定める犯罪捜査規範第99条は、捜査について「なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない」と明記しています。

つまり、逮捕は捜査の基本原則に反した例外的な強制処分なのです。

逮捕が認められるのは、逮捕の理由と必要性を満たす場合に限られます。容疑となる事件の存在が明らかであり、さらに被疑者が「逃亡・証拠隠滅」を図るおそれがある場合は、捜査のために身柄を拘束する必要があると判断されるでしょう。

反対に、任意での取り調べに応じる姿勢がある、すでに重要な証拠がそろっており証拠隠滅のおそれがないという状況では、逮捕されるおそれは低くなります。

とはいえ、誹謗中傷した被疑者本人が「私は逃げない」「証拠は開示できる」と主張しても、捜査機関がこれをすべて鵜呑みにするわけではありません。厳しい処罰が予想されるケースでは、重罪をおそれて逃亡・証拠隠滅を図るおそれがあると判断され、捜査機関が逮捕に踏み切る可能性も高まります。

2. 警察に相談するときに必要な準備

誹謗中傷の被害を警察に相談する際には、どのような被害を受けているのかを明らかにする証拠をそろえたうえで、厳格な刑事手続きとして「告訴」を進める必要があります。

(1)誹謗中傷の証拠を確保する

警察に被害を相談するには、実際にどのような誹謗中傷が存在するのかを客観的に証明する必要があります。

誹謗中傷が投稿されたウェブサイトのURLを確認したうえで、当該URLおよび実際に誹謗中傷が投稿されている状況をスクリーンショットやプリントアウトして紙ベースに保管するなどの方法で確保します。

証拠を確保していないと、被疑者が自ら投稿を削除したときや、ウェブサイトの管理者やSNS運営者の判断で投稿が削除されたときに、誹謗中傷が実在したことを証明できません。また、被疑者を特定するためには投稿時のIPアドレスやアクセスログを解析する必要があるため、投稿のURLも必須です。

(2)告訴状を作成する

名誉毀損罪・侮辱罪は、検察官が起訴する際に被害者による告訴を要する「親告罪」にあたります。つまり、加害者を逮捕して刑罰に処するには、被害者が捜査機関に告訴の手続きを取らなくてはなりません。

告訴は、犯罪の被害者が捜査機関に対して犯人の処罰を求める手続きです。

刑事訴訟法第241条1項において「書面または口頭」によって行われると定められていますが、実際には書面として「告訴状」の提出が求められます。

告訴状には、被害の状況や告訴に至った経緯、厳しく処罰されるべき理由などを明記する必要があるため、法律の知識や実務の経験がない個人での作成は容易ではありません。告訴状に記載の事実を明らかにする証拠の収集も必要です。

誹謗中傷について名誉毀損などの罪で相手の逮捕・処罰を望む場合は、弁護士に相談しながら進めることもひとつの手となるでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年09月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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