国際離婚する場合の親権の考え方|国によっては誘拐犯になる?
国際結婚した日本人と外国人が離婚をする場合、子どもの親権を決定する方法は、どの国の法律が適用されるかによって異なります。
親権の決定方法に関して戸惑わないように、事前に親権に関する準拠法を分析・検討し、適用されるルールの内容を理解しておきましょう。
今回は、国際離婚のケースにおいて、親権がどの国の法律によって決定されるかの点を中心に解説します。
1. 親権の決定方法は、各国の法律ごとに異なる
日本法では、夫婦が離婚をする場合、どちらか一方が単独で子どもの親権者となります(民法第819条第1項、第2項等。協議離婚でも裁判離婚でも同様)。
しかし、日本法で採用されている「単独親権」は万国共通ではありません。たとえばアメリカやフランスなどの欧米諸国では、共同親権を採用する国が多くなっています。
また、親権を夫婦のどちらに与えるかの基準についても、国際離婚で他国の法律が適用される場合、日本の離婚実務の考え方がそのまま適用できるとは限りません。
このように、親権の決定方法は各国の法律によって違いがあるので、「どの国(地域)の法律が適用されるか」という点を最初に検討する必要があります。
2. 外国人配偶者と離婚する場合、どの国の法律が適用される?
国際離婚における親権の決定に関して、どの国の法律が適用されるかは「準拠法」決定の問題として理解されます。
日本の法律上、法律関係に関する準拠法は「法の適用に関する通則法」によって決まりますので、親権に関する準拠法決定のルールを詳しく見てみましょう。
(1)準拠法とは?
「準拠法」とは、特定の法律関係に対して適用される法令を意味します。
(例)日本法、ニューヨーク州法、英国法、中国法……
契約関係であれば、契約書に規定することにより、当事者の合意で準拠法を決定できます。
これに対して、国際離婚のような契約外での法律問題については、「国際私法」と呼ばれる法律によって準拠法を決定しなければなりません。
「国際私法」とは、準拠法決定に関する各国の法律を意味し、日本法では「法の適用に関する通則法」が国際私法に該当します。
法の適用に関する通則法では、法律関係の内容ごとに、準拠法決定に関するルールが詳細に定められています。
(2)国際離婚時の親権に関する準拠法決定のルール
国際離婚の場合、法の適用に関する通則法第32条に基づき、以下の優先順位に従って親権決定に関する準拠法が決定されます。
①子どもの本国法が父または母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合
子どもの本国法
②その他の場合
子どもの常居所地法
上記のルールに従い、2つの設例について準拠法を検討してみましょう。
設例①
- フランス人の父と、日本人の母が離婚
- 子どもはフランス在住だが、日本国籍
子どもが母と同じ日本国籍なので、日本法を準拠法として親権が決定されます。
設例②
- フランス人の父と、日本人の母が離婚
- 子どもはフランス在住だが、カナダ国籍
子どもの国籍が父・母のどちらとも異なるため、常居所地法であるフランス法を準拠法として親権が決定されます。
なお、上記のルールによって外国法が準拠法とされたケースで、当該外国法によって日本法が準拠法と指定された場合には、循環を避けるために日本法が準拠法となります(反致。法の適用に関する通則法第41条)。
3. 国際離婚では連れ去り防止の「ハーグ条約」に注意
国際離婚が問題となるケースで、一方の親が子どもを自分の母国へ連れ去ってしまうと、もう一方の親は子どもを連れ戻すのが困難になってしまいます。
海外では、適正な法的手続きによって親権が確定していないうちに、相手に無断で子どもを連れ去ってしまう行為は許されません。しかし、近年では、日本人の親が自らの子を配偶者に無断で日本に連れ帰る事例が欧米から報告されるようになりました。その一方、外国人の親により日本から子が国外に連れ去られる事例も発生しています。国によっては、一方の親が、子を国外に連れ出すことは刑罰の対象となります。
そこで、日本を含む各国は「ハーグ条約」を締結し、国際離婚に伴う「子どもの連れ去り」を防止する仕組みを整えています。
具体的には、国際離婚に際して子どもの連れ去りの被害に遭った親は、以下の対応を政府に申請することができます。
- 連れ去られた子どもを自国に返還するよう、連れ去り先の国の政府へ要請すること
- 連れ去られた子どもとの面会交流の機会を確保するよう、連れ去り先の政府に要請すること
ハーグ条約の締結国同士であれば、ハーグ条約およびその国内実施法に基づき、要請を受けて適切な対応をとる義務を負います。最近の報道によれば、フランスで、子供2人をフランス人の父親から引き離したとされる日本人の妻に対し、親による誘拐などの容疑で逮捕状が発行されたということです。
国際離婚の当事者としては、子どもの連れ去りは国際法・国内法に違反する行為であることを理解して、親権の決定・判断は法的手続きに委ねましょう。DVや子への虐待があった事案においては、子を元の居住国に戻したくないと考える人もいるのではないでしょうか。ハーグ条約では、こうした事情が子に与える影響を考慮した上で、例外的に子を元の居住国へ返還することを拒否できる場合を定めています。
国際離婚手続きの中で親権を争う必要性が生じた場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2022年02月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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