死亡保険金は相続財産になる? みなし相続財産の扱いについて

死亡保険金は相続財産になる? みなし相続財産の扱いについて

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

親族などの死亡保険金(死亡生命保険金)を受け取った際には、相続手続きや各種税金との関係で、取り扱いをきちんと確認しておく必要があります。

今回は、死亡保険金が相続の対象になるかどうか、および死亡保険金に課される可能性のある税金について解説します。

1. 相続における死亡保険金の取り扱い

相続手続きにおいては、死亡保険金は原則として相続財産に含まれませんが、特別受益の持ち戻しに注意が必要です。

(1)死亡保険金は原則として相続財産に含まれない

最高裁平成14年11月5日判決によれば、死亡保険金請求権は、相続財産に含まれないことが示されています。

死亡保険金請求権は、保険金の受取人が自己の権利として取得するものであり、被相続人が取得するものではありません。相続財産には、被相続人が死亡時に有する権利義務の一切が属するところ(民法第896条)、上記の理由から、死亡保険金請求権はこれに含まれず、相続の対象にならないのです。

(2)例外的に特別受益の持ち戻しが行われる場合がある

ただし、最高裁平成16年10月29日決定によると、例外的に、特別受益に準じて死亡保険金請求権を相続財産に持ち戻すべき場合があるとされているので注意が必要です。

特別受益の「持ち戻し」とは、本来であれば相続財産に属さない財産を、相続財産とみなして相続分や遺留分を計算することをいいます(民法第903条第1項、第1044条第3項)。

最高裁は、以下の事情を総合的に考慮したうえで、保険金受取人とそれ以外の相続人の間に生じる不公平が到底是認できないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、死亡保険金請求権について特別受益の持ち戻しに準じた取り扱いをするとの規範を示しました。

  • 保険金の額
  • 保険金の額の遺産総額に対する比率
  • 保険金受取人である相続人および他の共同相続人と被相続人との関係(同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなど)
  • 各相続人の生活実態

など

上記の特別受益の持ち戻しが行われると、保険金の受取人が相続において不利益を被るため、事前に法的な検討を行うことが大切です。

2. 死亡保険金にかかる税金について

死亡保険金には、保険料の支払者・受取人・金額などに応じて、相続税・贈与税・所得税が課税される場合があります。

課税関係について不明な点がある場合には、税理士に直接相談するか、弁護士を通じて税理士の紹介を受けるとよいでしょう。

(1)相続税が課税される場合

死亡保険金に相続税が課されるのは、被相続人が保険料を負担していた場合です。

この場合、相続をきっかけに経済的価値が被相続人から受取人へ移転しているので、死亡保険金が「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります(相続税法第3条第1項第1号)。

ただし、死亡保険金には以下のとおり、相続税の非課税限度額が設定されています。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数
※相続放棄をした人も、法定相続人の数に含めます。

被相続人の死亡をきっかけとして給付される死亡保険金の合計額が、上記の非課税限度額の範囲内であれば、相続税は課税されません。

なお、一度支払われた死亡保険金を、相続人間で分け直す場合には、相続人間の分け直しに贈与税が課税されます。この場合、相続税と贈与税の二重課税が生じてしまうので要注意です。

(2)贈与税が課税される場合

死亡保険金に贈与税が課税されるのは、被相続人・受取人以外の第三者が保険料を負担していた場合です。この場合、実質的に第三者から受取人に贈与が行われたものとみなされ、贈与税が課税されることになります。

贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、相続税とは異なり、法定相続人の数に応じた非課税措置は設けられていないので注意しましょう。

(3)所得税が課税される場合

死亡保険金に所得税が課税されるのは、受取人が自分で保険料を負担していた場合です。

なお、死亡保険金を一時金・年金のどちらで受け取るかによって、以下のとおり所得の種類および課税対象となる金額が異なります。

①死亡保険金を一時金で受け取る場合

「一時所得」として取り扱われます(所得税法第34条)。課税対象となる所得は、以下の式によって算出します。

課税の対象になる一時所得
=(死亡保険金の額-支払い済み保険料の総額-50万円)×2分の1

②死亡保険金を年金で受け取る場合

「雑所得」として取り扱われます(所得税法第35条)。課税対象となる所得は、以下の式によって算出します。

雑所得
=その年中に受け取った死亡保険金の額-その金額に対応する支払い済み保険料の額

上記で計算された所得が、死亡保険金を受け取った年度における他の所得と合算されたうえで、所得税が課税されます。

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