遺留分侵害額請求権とは? 請求方法と手続きの基礎知識
  • 2022年05月14日
  • 遺産相続

遺留分侵害額請求権とは? 請求方法と手続きの基礎知識

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

遺言書によって不公平な遺産配分が指定された場合などには、他の相続人に対して「遺留分侵害額請求」を行うことで、一定の金銭を獲得できる可能性があります。

今回は、遺留分および遺留分侵害額請求権の概要と、実際に遺留分侵害額請求を行う際の方法について解説します。

1. 遺留分とは?

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障された相続分のことをいいます(民法第1042条第1項)。

遺産を誰にどのくらい分け与えるかについては、被相続人となる方が遺言等によって自由に決められるのが原則です。しかしながら、相続権を有する法定相続人には、相続に対する合理的な期待があり、これを一定程度保護する必要はあるものと考えられています。

そこで、被相続人の意思と法定相続人の合理的期待を調整するため、「遺留分」の限度で法定相続権が保障されているのです。

各法定相続人(兄弟姉妹以外)の遺留分割合は、相続人の構成に応じて、以下のとおり決定されます。

①直系尊属のみが相続人である場合

法定相続分の3分の1

②それ以外の場合

法定相続分の2分の1

2. 遺留分侵害額請求権とは?

遺留分に満たない財産しか受け取れなかった相続人は、他の相続人に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます(民法第1046条第1項)。

(1)遺留分に対する不足分の金銭を他の相続人に請求できる

遺留分侵害額請求を行うと、遺留分未満の不利な相続分を指定された法定相続人は、遺産を多く受け取った者から、不足分に対応する金銭の支払いを受けられます。

相続法改正(2019年7月1日施行)以前は「遺留分減殺請求権」と呼ばれ、現物返還が原則とされていましたが、現行法上は金銭での精算を行うこととされています。

(2)遺留分侵害額請求権の対象となる遺贈・贈与の範囲

遺留分侵害額請求の相手方となり得るのは、以下の遺贈または贈与を受けた者です(民法第1044条第1項、第3項)。

  1. すべての遺贈
  2. 法定相続人に対する贈与であって、相続開始前10年以内に行われたもの(婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与に限る)
  3. 法定相続人以外の者に対する贈与であって、相続開始前1年以内に行われたもの

上記のとおり、生前贈与についても、一定期間に行われたものについては遺留分侵害額請求の対象となる点に注意しましょう。

(3)遺留分侵害額請求権には消滅時効があるので注意

遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効により消滅します。また、相続開始の時から10年が経過した時は除斥期間の経過により消滅します。

消滅時効が完成して債務者によって時効が援用された場合や、除斥期間が経過した場合には、遺留分侵害額請求を行使できなくなってしまいます。

そのため、遺言書の内容に不満を持った場合には、早めに弁護士に相談して対応を検討しましょう。

3. 遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求を行うには、大きく分けて「協議」「調停」「訴訟」の3つの方法が考えられます。

いずれの方法をとる場合でも、相手方とのやり取りや裁判所での手続きが大きな負担になるので、弁護士に相談して対応することをお勧めいたします。

(1)協議による請求

協議によって遺留分の精算を合意できれば、当事者双方にとってコストがかからずに紛争を解決できるメリットがあります。

協議の方法は問いませんが、時効の完成を猶予し、交渉の内容を明確化するために、交渉の開始など重要なやり取りについては内容証明郵便等を用いて行いましょう。

遺留分侵害額請求の協議をまとめるためには、きちんと財産調査等を行い、遺留分の計算根拠を明確に示すことが重要になる場合が多いため、早めに弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

(2)遺留分侵害額の請求調停による請求

当事者間での協議がまとまらない場合には、「遺留分侵害額の請求調停」を利用します。

(参考:「遺留分侵害額の請求調停」(裁判所))

遺留分侵害額の請求調停では、調停委員が当事者双方の言い分を個別に聞き取って調整を行い、双方が受け入れ可能な合意(調停)の成立を模索します。第三者の視点が入ることで、当事者同士で協議を行う場合よりも、冷静な話し合いができる可能性が高くなります。

(3)訴訟による請求

当事者同士の言い分がかけ離れており、協議や調停がまとまる見込みがない場合には、訴訟を提起して争うほかありません。

遺留分侵害額請求訴訟は、被告(債務者)の住所地等を管轄する裁判所に提起します(訴額140万円以下の場合は簡易裁判所または地方裁判所、訴額140万円超の場合は地方裁判所)。

訴訟では、相続財産や生前贈与などに関する証拠を提出し、遺留分権利者の側で遺留分額を立証しなければなりません。

訴訟における主張・立証活動を効果的に行うためには、弁護士のサポートを受けることが有効です。遺留分侵害についてお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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