遺産分割協議は再びやり直せる? 協議のやり直しと注意点について解説
  • 2021年04月22日 (更新:2021年07月15日)
  • 遺産相続

遺産分割協議は再びやり直せる? 協議のやり直しと注意点について解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

相続において、遺産分割協議は重要なものであり、非常に大変なものです。
遺産分割協議の際にしっかりと検討し、納得したうえで署名押印するべきものですが、遺産分割協議の際に他の相続人に強制されて署名押印したなど、いったん遺産分割協議が成立したとしても、何らかの事情で遺産分割協議をやり直したいという方もいるかもしれません。
そこで、遺産分割協議のやり直しにあたっての注意点についてご説明します。

1. 遺産分割協議のやり直しは原則としてできない。しかし例外がある。

一度成立した遺産分割協議をやり直すことは、原則としてはできません。しかし、当事者全員が同意している場合や、遺産分割協議に無効・取消原因がある場合には、例外的にやり直しが可能です。

ただし、遺産分割協議が成立したあとに遺言書が見つかり、当該遺言書に遺言執行者(遺言書の内容の実現を被相続人から託された人)が指定されていた場合は要注意です。

遺言執行者が選任されている場合、法定相続人全員の同意があっても、原則として遺言書の内容が優先されます。例外的に、法定相続人全員による遺産分割協議を行い、それに沿って遺産分割協議をすることおよびその内容について、遺言執行者が同意した場合には、遺言書の内容とは異なる遺産分割を行うことが可能となります。加えて、遺言書に遺贈が含まれている場合は、受贈者の同意も必要です。

したがって、当初の遺産分割協議成立後に遺言書が見つかり、その後に遺産分割協議をやり直す際は、遺言執行者と受贈者の同意を得なければならず、同意が得られなければやり直しはできません。

2. やり直しをすることのデメリット

なお、遺産分割協議のやり直しをすることによって、相続財産の再分割の結果次第では、相続人に追加で税務上の負担が生じる可能性があります。

たとえば、すでに相続人が相続税を申告・納付しており、遺産分割協議のやり直しによって相続財産が増える場合は、税務署に「修正申告」をすることで追加の相続税を納付しなければなりません。

また、遺産分割協議のやり直しの結果、相続人Aから相続人Bに財産の移転があったとします。この場合、相続人Aから相続人Bに対する税務上の譲渡または贈与とみなされ、所得税や贈与税が課される可能性があります。

各事案に応じた具体的な見通しについては、税理士にご相談ください。

さらに、遺産分割協議のやり直しにより一度相続登記した不動産の登記名義人を変更する場合は所有権抹消登記と所有権移転登記、共有名義とする場合は所有権更正登記が必要になります。これに伴い、不動産取得税や登録免許税が発生します。

遺産分割協議のやり直しを検討する際は、以上のような負担が生じる可能性があることを考慮したうえで、慎重にご判断ください。

3. 遺産分割協議が無効になるケース

相続人たちにはその意向はなくても、遺産分割協議のやり直しを余儀なくされることになります。たとえば、以下のような遺産分割協議は無効となります。

(1)法定相続人を1人でも欠いた状態で成立した遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立させなくてはなりません。したがって、1人でも欠いた状態で成立した遺産分割協議は無効です。

なお、いくら手を尽くして探しても行方不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選定を申し立て、選任された不在者財産管理人を加えることで、遺産分割協議を進めることができます。

(2)特別代理人を選定せずに成立した遺産分割協議

このケースは、以下のような場合に発生するものです。

  • 相続人に未成年者とその親権者がいる場合
  • 成年後見人と成年被後見人が同時に相続人となった場合
  • 相続人に親権者を同じくする未成年者が複数いる場合

親権者は未成年の法律行為を代理できますが、親権者と未成年者が同時に相続人となった場合は、親権者と未成年者の利害が対立します。そのため、親権者が未成年者の法定代理人として参加すると、未成年者にとって不利な遺産分割協議を進める懸念があります。これは成年後見人と成年被後見人の関係においても同様です。

また、複数の未成年者の子どもがいる親権者は、同時に複数の未成年者の法定代理人として行動すると、未成年者同士の利害が対立しますので、どちらかの子どもに有利になるように行動する懸念があります。

このような背景から、上記のような利益相反関係が発生する遺産分割協議では、家庭裁判所に請求して未成年者と成年被後見人に特別代理人を選任することが必要とされています。特別代理人を選任せずに行われた遺産分割協議は無効です。

(3)相続人が意思能力を欠いた状態で行われた遺産分割協議

遺産分割は財産移転の効果が生じる重要な法律行為であるため、意思表示などの法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力(意思能力)が必要です。相続人の中に認知症の方がいる場合などは、当該相続人の意思能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人を選任してから遺産分割協議を行う必要があります。
相続人に意思能力がない状態で遺産分割が進められると、遺産分割協議は無効となります。

なお、遺産分割協議が成立したあとに、被相続人の新たな遺産が見つかることがありますが、すべての遺産を前提としていなくても遺産分割協議は無効にはなりません。そのため、この場合は、見つかった遺産についてのみ、追加で遺産分割協議を行えばよく、すべての遺産分割協議のやり直しは必要ではありません。

遺産分割協議に無効原因がある場合には、やり直しせざるを得ませんが、そうでない場合には、遺産分割協議のやり直しについては慎重に検討したうえで進めましょう。その際は、相続全般について知見があり、トラブル解決の経験がある弁護士にぜひご相談ください。

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