相続税と譲渡所得税はどんな税金? 減らす方法はある?
遺産を相続することになった場合に気になるのが、どのような税金が発生し、どのくらいの金額を納めなければならないかということです。
相続時や相続財産の売却時においては、さまざまな控除や特例が用意されていますので、そのような控除や特例をうまく組み合わせて利用することによって支払う税金を減らすことが可能です。
今回は、遺産を相続したときにかかる税金と、税金を減らすための各種制度について解説します。
1. 遺産の相続で発生する2つの税金
遺産を相続する場合には、相続時と相続した財産を売却した時点で以下の税金が発生します。
(1)相続税
相続や遺贈によって財産を取得することになった場合には、その財産の合計額が後述する基礎控除額を超える場合には、相続税の課税対象となります。
相続税額の計算にあたっては、遺産分割手続きとは異なる配慮が必要になるものがあります。たとえば、相続手続きにおいては、死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続財産としては扱われず遺産分割の対象外です。
しかし、税務上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になりますので注意が必要です。
相続税申告は、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。相続の開始があったことは、被相続人の死亡によって知りますので、通常は、被相続人が死亡した日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。
(2)譲渡所得税
被相続人の遺産に不動産が含まれる場合には、遺産分割の方法として換価分割が選択されることがあります。換価分割とは、不動産のように物理的に分割することが困難な相続財産を売却し、現金に換えて分割する方法をいいます。
このような換価分割をした場合には、譲渡所得税が課税されることがあります。譲渡所得税とは、土地や建物を売却したときに利益を得た場合に課税される税金のことをいいます。譲渡所得税は、以下のような計算式で算出します。
譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率
課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
譲渡所得税率は、不動産を所有する期間によって異なります。不動産の所有期間が5年を超える場合には、長期譲渡所得として所得税15%、住民税5%が、所有期間が5年以下の場合には、短期譲渡所得として所得税30%、住民税9%が税率として適用されます。
譲渡所得税は、売却価額が取得価額を下回る場合には課税されませんので、不動産を取得した際の契約書や領収書などの書類はなくさないように保管しておきましょう。
2. 税金を減らす方法
遺産を相続することになった場合には、以下のような税額控除や特例を利用することによって納める税金を減らすことができます。
(1)基礎控除
相続税の計算にあたっては、遺産が一定金額以下であれば課税されないという「基礎控除」があります。基礎控除の金額は、相続人の人数によって異なり、以下のように計算します。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数
たとえば、父が亡くなり、子ども3人が相続人であった場合には、4800万円が基礎控除の金額になりますので、課税対象の遺産の合計額が4800万円以下であれば相続税を支払う必要はありません。
(2)配偶者控除
相続税の計算にあたっては、配偶者に対して配偶者控除という税額軽減措置があります。配偶者控除とは、配偶者が相続した遺産の額が1億6000万円まで、または配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者に相続税は課税されないという制度です。
配偶者控除は、配偶者の老後の生活を保障するためや、次の相続までの期間が短いなどの理由から認められているもので、これによって配偶者が相続税を課税されるケースはほとんどありません。
(3)小規模宅地等の特例
遺産に不動産が含まれている場合には、その評価額が高額になり、相続税の金額も大きくなることがあります。そのような場合には、小規模宅地等の特例を利用することによって相続税の金額を減らすことが可能です。
小規模宅地等の特例とは、330平方メートルまでの小規模な宅地については、その宅地の評価額を80%減額するという制度です。
減額割合が非常に大きい特例ですが、適用を受けるための要件も複雑ですので、小規模宅地等の特例を受けようと考える方は、税理士などの専門家に相談しながら進めていくとよいでしょう。
(4)居住用財産の特別控除
譲渡所得税の計算にあたっては、居住用財産の特別控除の適用を受けることができる場合があります。
居住用財産の特別控除とは、居住用財産(マイホーム)を売却したときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最大で3000万円を控除することができる特例のことをいいます。
換価分割で自宅を売却することになった場合には、この特例を利用することによって、譲渡所得税の課税を回避できるケースが多いといえるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年09月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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