教師の暴言は耐えないといけないの? なにか対処法はあるのか

教師の暴言は耐えないといけないの? なにか対処法はあるのか

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

令和元年9月、神奈川県内の私立高校において、野球部の責任教師が部員に対して暴言・暴力を繰り返していることが発覚しました。現役部員の訴えによると「死ね」「殺すぞ」といった、教師が生徒に放つとは思えない内容の暴言があったとのことです。問題の教師は高校側の調査において事実をおおむね認め、野球部の責任教師を解任されました。

厳しい指導が認められる場面が多い学校生活においても「暴言」は許されるものではありません。教師による暴言はどのような問題があるのかを、法的な視点から確認していきましょう。

1. 教師からの暴言が常習的な場合

教師は非常に高い倫理観が求められる職業のひとつです。児童・生徒・学生に対して学問を教えるだけでなく、社会に出るまでの人間形成やマナーを醸成する立場なので、暴力や暴言があってはなりません。

たとえ教育や指導の最中であっても、常習的に暴言を投げかける行為は「教育・指導の一環」とはいえないのです。

(1)学校教育法の基本的な考え方

わが国の学校制度の根幹となっているのが「学校教育法」です。

学校教育法第11条は、校長および教員について、教育上必要があると認めるときは文部大臣の定めるところによって児童・生徒・学生に懲戒を加えることができると規定したうえで「体罰を加えることはできない」と明記しています。

授業や部活動などでの指導においては厳しい姿勢を見せることが必要な場面も多々ありますが、体罰は法律によって禁止されているのです。

(2)暴言は「体罰」にあたるのか?

学校教育法が定める「体罰」とは、児童・生徒・学生に対して直接的または間接的に肉体的苦痛を与える行為として定義されています。

①直接的苦痛

強く叩く、殴る、蹴る、投げるなど

②間接的苦痛

長時間にわたって正座させる、起立させ続けるなど

体罰は肉体的苦痛を与える行為なので、冒頭で挙げた事例のように「死ね」「殺すぞ」といった暴言は体罰に含まれないことになります。

(3)暴言は「不適切な行為」にあたる可能性がある

暴言は体罰に含まれないのであれば、学校教育法第11条によっても禁止されるものではないと解釈できます。ただし、各都道府県の教育委員会は「体罰関連行為のガイドライン」を策定しており、ここでは暴言を「不適切な行為」としています。

たとえば東京都教育委員会のガイドラインによると、暴言とは、児童・生徒に対して恐怖感・侮辱感・人権侵害などの精神的苦痛を与える不適切な言動と定義しています。

  • ののしる
  • 脅かす
  • 威嚇する
  • 身体・能力・性格・風ぼうなどの人格を否定する
  • 馬鹿にする
  • 集中的に批判する
  • トラブルについて犯人扱いする

これらの行為はすべて暴言となり、体罰とは異なるものの、教育上不適切な行為であり許されるものではありません。

2. まずは学校、教育委員会へ相談を

教師から暴言を受けた子どもは、学業や部活動に集中できず成績不振に陥る、恐怖心から不登校となる、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するなど、多大なダメージを負うおそれがあります。たとえ教師自身が教育上必要だと判断しておこなったものであっても、ただちに対策を講じて暴言による教育・指導をやめさせなければなりません。

(1)暴言を受けた場合はまず学校に相談

教師による暴言が発覚した場合は、まず学校に相談しましょう。

担任教師や部活動の顧問などが相手の場合、暴言を投げかけた本人に直接相談しても「クレームを受けた」という程度で軽く済まされてしまうおそれがあります。相談の際には必ず学校長や教頭、学年主任、生活指導の担当教師なども交えた機会を設けて、学校として事実確認や事情・経緯の調査を尽くすよう求めましょう。

(2)解決が期待できなければ教育委員会への相談も検討

学校側に相談したものの教師自身が暴言を投げかけた事実を認めない、学校側が「不適切な行為はなかった」という結論を下したといった場合は、教育委員会への相談も検討しましょう。

教育委員会は、公立学校の教員の任命などの人事権をもつ機関です。また、私立学校に対しても、法令違反の事実があれば行政指導などによって是正を求めることができる立場にあります。

相談を受けた教育委員会が学校側に事実を確認して報告を求める事態になれば、学校側も真摯に対応せざるを得ないでしょう。

(3)問題が解決しない場合は弁護士に相談

学校・教育委員会に相談しても暴言の存在を認めない、子どもが精神的苦痛を訴えて不登校になったなどの損害が生じた場合は、弁護士への相談を検討しましょう。学校との話し合いの場に弁護士が同席すれば、法律上の問題点や事実確認の不足などを追及することで根本的な解決が期待できます。暴言を原因とした損害が発生している場合は、教師自身や学校を相手に損害賠償を請求することになりますが、弁護士に一任すれば証拠収集や手続きの手間もかかりません。

「弁護士が同席している」という事実があるだけでも学校側の対応が一変するケースも少なくないので、学校側の対応に不満を感じたならまずは弁護士に相談してみましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年04月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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