言葉の暴力も体罰になる? 違法性についての解説と相談先

言葉の暴力も体罰になる? 違法性についての解説と相談先

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

授業中や部活で、子どもが教師からひどい言葉を浴びて精神的に傷ついている、ついには不登校になってしまった。そんなとき、言葉の暴力も“体罰”に当たるとして法的措置を取ることはできるのでしょうか?

指導のためにあえて厳しい言葉を選んだとしても、人格否定や尊厳を傷つけるような内容は許されるべきものではありません。教師による“言葉の暴力”の法的位置付けと相談先について解説します。

1. 言葉の暴力は体罰に該当するか?

(1)教師による懲戒と体罰

教師による体罰を禁止する学校教育法第11条では、「教育上必要があると認められるときには懲戒を加えることができるが、体罰は許されない」ことが明記されています。

懲戒とは、生徒の問題行動を反省させたり立ち直らせたりするための行為であり、一般には口頭での注意もこれに該当します。

ただし、たとえ教師が懲戒のつもりであっても、身体的暴力については「生徒による他の生徒への暴行を止める」などやむを得ない事情がある場合を除き、原則として許されていません。

また、

  • 何らかの行為を命じて大勢の前で屈辱的な気持ちを味わわせる
  • 特定の場所に閉じ込める

などの行為も「被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの」として体罰に含まれると規定されています。

たとえば、2021年2月には、忘れ物をした生徒を長時間立たせた行為が体罰に認定されました。さらに同年3月には、宿題を忘れた小学3年生の児童が1年生の教室で学習させられ、体罰に認定されたという報道もありました。

このように、殴る蹴るなどの肉体的暴力を伴わない行為であっても、何らかの行為を命じて肉体的苦痛を与えたり、大勢の前で強い屈辱感を味わわせる行為を強制したりすることは、体罰に含まれる可能性があります。

(2)暴言は“不適切な指導”として対応してもらえる可能性

学校教育法第11条の「教育上必要があると認められるときに加える懲戒」には、口頭による厳重注意や叱責も含まれています。

実際のところ言葉の暴力が学校教育法第11条の体罰として認定されるかどうかは難しいところがありますが、状況や暴言の内容によっては「不適切な指導」として、教育委員会が対応してくれる可能性はあります。

たとえば東京都の『体罰の定義・体罰関連行為のガイドライン』によると、「暴言や行き過ぎた指導は、体罰概念に含まれないが、体罰と同様に、教育上不適切な行為であり許されないものである」とされています。さらに文部科学省の『運動部活動での指導のガイドライン』にも、「指導に当たっては、生徒の人間性や人格の尊厳を損ねたり否定するような発言や行為は許されません」と明記されています。

2021年3月には、小学3年生の児童に対し「ロボット以下」「ぼけ」などの暴言を浴びせた教諭が6か月の減給処分を受けたことが報じられました。

しかし“必要性・相当性のある厳しい叱責”と、“言葉の暴力”の厳密な区別が難しいケースも少なくありません。また言葉の暴力は、受け手によっても感じ方が異なります。ある生徒は「バカ!」と言われてもまったく気にしないかもしれませんが、別の生徒は同じことを言われて深く傷ついてしまうこともあります。

また、身体的暴力などに比べて証拠が残りづらいということも、被害の立証を困難なものとしています。そのため、言葉の暴力に関しては、他の児童の目撃証言や教諭自身の過去の処分歴なども併せて調査しながら、慎重に判断されることになるでしょう。

2. 学校で受けた体罰・ハラスメントの相談先

(1)教育委員会の相談窓口

教師による体罰・ハラスメントなどの相談先としては、各自治体の教育委員会があります。ただし、教育委員会への相談は敷居が高いと思われる方もいるかもしれません。

その場合は、弁護士を通して教育委員会に相談することもおすすめです。弁護士に一任すれば、教育委員会への調査要求や、裁判に発展した場合に備えた交渉が可能です。また、弁護士が介入することで、学校による事実隠ぺいなどに対するリスク回避につながるでしょう。

(2)キッズひまわりホットライン

全国の弁護士会では、いじめや体罰・スクールハラスメントなどに悩む子どもを対象に、無料の法律相談を提供しています。

第二東京弁護士会の『キッズひまわりホットライン』は、電話相談・面接相談を無料で利用できます。他にも大阪弁護士会の『子ども何でも相談』、名古屋弁護士会の『子どもの人権相談』などがありますので、お住まいの地域の弁護士会のホームページを確認してみましょう。

(3)24時間子どもSOSダイヤル・子どもの人権110

『24時間子どもSOSダイヤル』は、都道府県・指定都市教育委員会が、夜間・休日を含めて24時間対応をしている無料電話相談です。全国のどこからでも同一の電話番号で相談でき、原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談窓口に接続されます。

また、法務省が設けている『子どもの人権110』も、無料で学校トラブルを相談できます。法務局・地方法務局の職員、人権擁護委員などが対応しており、法律的なアドバイスも行っています。

(4)その他学校トラブルに対応している弁護士

学校トラブルを中心に扱っている弁護士に相談するのもひとつの手段です。ただし、離婚問題や刑事問題、相続トラブルなど、弁護士によって得意な分野は異なります。そのため、いじめや教師による体罰・ハラスメントの実務経験が豊富な弁護士に依頼するよう、注意しましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年02月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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