いじめに関する学校の責任は追及できる? 法的対策は弁護士に相談を

いじめに関する学校の責任は追及できる? 法的対策は弁護士に相談を

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもがいじめに遭っているのに学校が誠意ある対応をしてくれず、悩んでいるご家族もいるのではないでしょうか。学校がいじめの存在を認めようとしない、再発防止策が講じられず子どもが不登校になってしまう、精神障害を患ってしまうなど、いじめが深刻化するケースはさまざまです。

こうした場合、学校の法的責任はどこまで追及できるのでしょうか。

1. 学校に、いじめの責任追及はできるか?

(1)学校・教師には安全配慮義務がある

学校は、生徒たちが心身ともに安全な状態で安心して学べる環境を整える法的義務(安全配慮義務)を負っています。したがって以下のような場合は、義務違反となる可能性があります。

  • いじめの報告・相談を受けても無視した
  • いじめ被害者の落ち度を責めたり、我慢するよう説得したりした
  • 加害者に対する十分な懲戒や再発防止策を講じず、いじめを悪化させた
  • 加害者に口頭で中途半端な注意をするにとどまり、報復感情を刺激して状況を悪化させた

いじめについて学校に法的責任を追及するためには、①債務不履行 ②不法行為に基づき損害賠償請求できる可能性があります。

①債務不履行

民法第415条には、約束している法的義務を怠った相手に対し損害賠償請求ができる「債務不履行」という規定があります。前述のように、学校は児童・生徒に対して“安心して学習できる安全な環境”を提供する義務を負っています。学校がいじめにきちんと対処しなければ、この義務を怠ったとして損害賠償請求の根拠となり得るのです。

②不法行為

民法第709条では、不法行為(故意または過失により他人の権利・利益を違法に侵害すること)に対して損害賠償責任があるとしています。よって、学校がいじめを放置することにより児童・生徒の心に傷を負わせた場合は、不法行為に該当するとして損害賠償責任を追及できる可能性があります。

なお公立学校の教員は公務員であるため、民法ではなく国家賠償法を根拠に法的責任を追及することになります。公務員の不法行為に対する損害賠償責任は、国家賠償法第1条1項で規定されています。

(2)いじめについての有名な裁判例

実際の裁判でも、いじめに対する学校側の法的責任が追及され、義務違反が認められたケースがあります。

私立中学校1年在学中にいじめを受けた結果、転校後に解離性同一性障害に罹患(りかん)してその後自殺した事件(名古屋地裁平成23年5月20日判決)では、学校法人に不法行為および債務不履行による損害賠償責任が認められました。

いじめによる学校側の責任を追及する際には、

  • いじめによる精神疾患や自殺などについて予見可能性があること
  • 予見される結果を回避するための適切な対策を講じる義務を学校が怠ったこと

が主な判断基準とされ、判決にも「事実の有無を調査し、防止措置を講ずる等の義務があった」として、学校側の安全配慮義務が明記されています。

(3)いじめ防止対策推進法について

平成23年に発生した「大津市中2いじめ自殺事件」など、学校によるいじめの隠ぺいや責任逃れは、近年の大きな社会問題となっています。それを受け、平成25年には学校がいじめの防止・早期発見のために講じるべき基本施策を定めた「いじめ防止対策推進法」が施行されました。

この法律は、いじめを防止する仕組みづくりについて定めたものであり、いじめそのものに対する法的罰則を定めたものではありません。しかし学校側の法的義務が明文化されたことで、いじめ被害に遭った際の責任追及がしやすくなったと言えるでしょう。

2. いじめ問題は弁護士に相談を

(1)弁護士からの受任通知でいじめが沈静化する可能性がある

子ども自身や保護者が直接学校・教育委員会に相談しても「気のせいだ」「そんな事実は把握していない」など、まともに取り合ってもらえず、いじめを報告された加害者からの報復を受けてさらに事態が悪化するケースも少なくありません。

弁護士を通して交渉することにより、場合によっては法的措置を取る可能性も示すことができるため、学校・教育委員会は、より慎重で真摯(しんし)な態度で応じてくれることが期待できます。加えて弁護士は、学校・教育委員会とのやり取りを記録に残すなど、訴訟に備えた証拠収集も怠りません。

(2)証拠集めなどのアドバイスを受けられる

いじめの証拠収集としては、たとえば日時・被害状況をつづった日記をつけることや、音声の録音、ネットいじめの場合はスクリーンショットの撮影などが挙げられます。

しかし、いじめは閉ざされた空間で秘密裏に行われる陰湿な行為であり、証拠集めと立証に苦心することもあるかもしれません。いじめトラブルの実績が豊富な弁護士に依頼すれば、有効な証拠収集のアドバイスも行ってくれるでしょう。

また学校に相談する際にも、握りつぶし・もみ消しを防止するために書面によるやり取りを徹底するなどの対策を講じてくれることが期待できます。

(3)損害賠償請求などの手続きを一任できる

「1.学校に、いじめの責任追及はできるか?」で述べた通り、いじめの被害者は加害生徒と学校側に対して債務不履行・不法行為の民事責任を追及できる可能性があります。

また、いじめの態様によっては、加害者の刑事責任も問うことができるかもしれません。しかし民事・刑事ともに、責任追及のための手続きは弁護士でなければ対応が難しいため、必ず弁護士に依頼されることをおすすめします。

弁護士に依頼したからと言って、必ずしも裁判をしなければならないということはありません。最初に相談する際に「なるべく大ごとにはしたくない」「裁判はしたくない」などと要望を伝えれば、依頼者の気持ちを最優先に考えて適切に対応してくれるでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年02月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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